国際大会の開催契機とする観光促進、南アフリカの取組みと大分県の成果
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▽前大分県知事・平松守彦氏
W杯による地域活性化で観光も促進
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こうした経験をふまえ、「南アフリカのW杯では、開催される地方都市で子供たちを親善大使に任命すればどうか」と提案。教育的意味も大きく、将来にわたる息の長い観光促進にもつながるのではないかとした。「W杯が来たおかげで、県民の意識が変わった。Think globally, after locallyという考えが浸透してきたのではないか」と平松氏。現在では、別府市など大分の観光地には海外から多くの観光客が訪れている。
▽南アフリカ観光局最高マーケティング責任者・ロシェーン・シン氏
W杯開催に自信、南アは費用対効果の高いデスティネーション
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また、世界には南アフリカでのサッカーW杯開催能力に疑問を呈する意見があるなか、シン氏は、「これまでにもクリケットW杯、ラグビーW杯、W杯女子ゴルフなど、数々の世界大会を成功させている」と強調。今年9月にFIFAのプラッター会長が南アを訪問した際の、「順調な準備状況に満足。W杯の成功を確信した」との声明を紹介した。
このほか、懸案の安全対策についても言及。国レベルで治安維持・安全対策に取り組み、警察力の強化に向けて2009/10年度予算として、2006/07年度予算の34%増となる440億ランドを提示している。「W杯期間中には、警察官やボランティアが大幅に増員」(シン氏)される計画だ。「過去10年で、99%の旅行者は犯罪に巻き込まれていない」と述べ、安全対策が進んでいることをアピールした。
さらに、MICE市場の拡大も期待を示す。MICEでの渡航ではポストツアーを実施する傾向が強く、その消費額も通常の旅行よりも大きい。同局では、2010年にはMICEの全渡航者数に占める割合が、5.6%であった2006年の2倍になると予測。各州でコンベンション・センターの整備に力を入れている。
▽ムプランガ州観光公園局最高マーケティング責任者・エゾロム・セコベラ氏
W杯に向けて、新しい観光素材の開発に注力
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W杯に向けた取り組みでは、まず同州ネルスプロイトに建設中のスタジアム(4万6000人収容)について言及。建設は順調に進んでおり、来年6月には完成し、10月にはこけら落としのゲームが実施される予定だ。同時にスタジアムへのアクセスとして公共交通機関も整備中。また、スタジアムに隣接してファン・パークも整備するなど、W杯を盛り上げる準備も進めていることを強調した。
一方、W杯成功に向けて課題が多いのも事実とし、宿泊、輸送、安全策、観光支援策、観光素材などで今後、改善を進めていく必要性があるとの認識を示した。特に、観光支援ではサービススキルの向上、ムプランガ州の知名度向上、より積極的な情報発信を進めていく必要性を強調。また、観光素材として幅広い体験型素材を開発し、ナイトライフなどエンターテイメント素材を増やすことが必要との考えを示した。
▽ジェイティービー国際部長・古澤徹氏
南アフリカには高い潜在性、まずはイメージ改善
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古澤氏は「潜在性」として、野生動物、美しい景観、独自の伝統文化、質の高いグランドオペレーション、日本からの豊富なフライト・アクセス、そして2010年のW杯をあげる。一方で、問題点も指摘。まず、アフリカの1国として危険なイメージが根強く、旅行情報が少ない。ステレオタイプなツアーばかりで、新しい商品開発が進んでおらず、ジャカランダの季節である10月に集中し、他の月との差が非常に大きいことも問題であるとした。一方、懸案であった空港のロストラゲージについては、運営会社が変わったことで飛躍的に改善したと評価する。
こうした現状を踏まえ、JATAではW杯に向けて日本人観光客拡大に向けたワーキンググループ(WG)を立ち上げ、南アフリカの認知度の向上、観光デスティネーションとしての印象づけ、南アフリカを含む周辺国のプロモーション、日本との交流促進などに取り組んでいる。古澤氏は「2010年に向けてWGの活動を活発化していく。まず安全安心に対する誤解を解いていく。開催が近づくにつれ、業界も南アフリカに目が向き、メディアでの露出も多くなるはず」と述べ、W杯を契機とする市場拡大に大きな期待を示した。
▽エミレーツ航空西日本支店長・田中和久氏
FIFAスポンサーでブランド力アップ、路線拡充も
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また、田中氏は南アへのネットワークについて、「W杯期間中だけでなく、その後もビジネスなどの需要は拡大するのではないか」と期待する。EKは現在、ヨハネスブルグとケープタウンに路線を展開。さらにダーバンへの乗り入れを検討している。
日本市場については「当社としてはすでに成田への乗り入れ希望を表明している。航空交渉次第だが、いい結果になることを願っている」と述べ、関西、中部に続く路線拡大に期待感を示す。その上で南アフリカの観光促進について「新しい観点から新しい商品を開発していく必要があるのではないか。日本人渡航者数を増やしていくうえで、EKとして協力できることがあれば、協力していきたい」と意欲を示した。