現地レポート:ベトナム 中部ニャチャンのリゾート滞在を核に
中部ニャチャンのリゾート滞在を核に
新デスティネーションとしてのベトナム
ベトナム航空(VN)は先ごろ、東京、名古屋、大阪、福岡から約80名の旅行会社が参加したオールジャパン規模の合同研修旅行を実施した。ベトナム中部のビーチリゾートのニャチャンでは、デスティネーション発展に向けたセミナーを開催し、参加者と現地関係者との意見交換も実施。日本での情報や現地での日本語ガイドの不足といった現状をふまえ、最重要市場である日本からの旅行者増加に向けた今後の方針が話された。(取材協力:ベトナム航空)
成長期の今に、課題を直視した積極的な意見交換を展開
ベトナム航空(VN)が日本に就航した1994年以来、ベトナムへの日本人出国者数はSARSのあった2003年をのぞき、一様に右肩上がりで増加。2007年の訪問者数は40万人超で、就航以前の10倍といわれる。世界的な不況、燃油サーチャージの高騰の影響で旅行業界全体が打撃を受けるなか、多少の影響はあるものの今年もベトナムは伸びを期待できるといわれている。しかし、今回のセミナーでは今後のさらなる成長に向け、あえてベトナム観光の問題点にも言及があった。
まず、話が出されたのが、長年にわたり要望されている在日のベトナム政府観光局の設立だ。これに対し、ベトナム観光省のグエン・クイ・フン氏は「準備委員会を設置し、旅行だけでなく文化交流などのプログラムを兼ねた観光局の設立をめざしたい」と説明する。VN旅客営業部課長の加藤欣也氏も、在日の観光局がないため消費者が気軽に旅行の計画をたてられず、リピーター確保にもつながらないとし、「情報はただ提供するだけでは意味がない。相手にはっきりと認知させることが重要」と述べ、積極的なプロモーション活動の必要性を語った。
このほかセミナーでは、現地ホテルやオペレーターなどで組織されるインドシナ観光促進協議会(ITPF)会長の大畑貴彦氏(サイトラベルサービス代表取締役社長)が、地域全体の認知向上の必要性を強調。大畑氏は国土交通省の調査によるベトナムおよび周辺諸国の認知状況との比較を引用し、ベトナムという国を「知っている」と答えた日本人は約3割に過ぎず、残りの7割は「まったく知らない」あるいは「ほとんど知らない」という状況を説明。ラオスやミャンマーなどの周辺諸国は9割が「まったく」あるいは「ほとんど知らない」と答えたという。モノデスティネーションとしてはもちろん、周遊旅行での旅行者数の増加も必要であることから、航空会社やホテルなどインドシナ旅行の関係者全体の強い団結を訴えた。
ベトナム観光省では日本を最重要市場に位置づけており、インフラや観光施設に投資していく方針で、約100万ドルの予算を予定。日本旅行業協会(JATA)のビジット・ワールド・キャンペーン「もっと! 海外へ」で重要市場に指定されたほか、国交省のODA予算を活用した観光関連事業としてベトナムへの海外旅行促進策も実施されており、観光拡大に向けた各種施策の拡大が期待される。また、VNも引き続き日本マーケットに投資していく方向だ。日本への直行便は64%のシェアを誇るが、この先、福岡/ハノイ線などの需要が高まればネットワークをさらに拡充することも考えられるという。なお、10月1日には以前、日本地区総支配人を務めていたチン・ホン・クァン氏が副社長に就任している。
引き続き中部エリアをプロモーション
ベトナム観光省ではメジャーとなる南部のホーチミン、北部のハノイの両都市を拠点とする旅行にかぎらず、ベトナム中部地域の観光を積極的に宣伝していく方針。中部は国内にある5つの世界遺産のうち、3つの文化遺産と1つの自然遺産の計4つが位置するため、遺跡を訪れる歴史・文化的な旅行のイメージが強いが、ベトナム観光省では南北に長い海岸線を活かしたビーチリゾートもプロモートする考えで、2010年までにはベトナムのリゾートが世界の美しいビーチリゾート地として10位以内に位置づけられることをめざすという。
旅行会社の中には、現段階ではベトナムのビーチリゾートに明確な売りがなく、リゾートを打ち出して販売するのは難しいという声もあった。ただし今回、セミナーを開催した中部のニャチャンは、ベトナムを代表するビーチリゾート。小さな町だが、今年7月にはミスユニバースの世界大会が開催されており、シックスセンシズ・ハイダウェイ、エバソン・アナマンダラ、メリア・サンライズといった5ツ星リゾートを擁する。さらに目抜き通りにはノボテルやシェラトンが建設中で、規模拡大の一途にあり、リゾートとして世界的に注目を集めるデスティネーションといえるだろう。ハノイから空路で2時間弱、ホーチミンへは1時間弱の距離にあり、ホーチミン経由は同日乗継が可能。待機時間は約3時間超であるものの、日本人の少ない穴場的なリゾート地としては比較的、アクセスしやすい距離にあるといえる。
参加者からはハノイやホーチミンに駐在する日本企業の社員などのインセンティブ旅行や、ロングステイ目的のシニアなど、リゾート滞在そのものを目的とする客層にターゲットをしぼるというアイデアもあり、可能性のある新デスティネーションをどう売っていくか模索する意欲が見られた。ニャチャンは最近、ダイビング人気が高まっているほか、2004年にオープンしたニャチャンのカムラン空港は、現在は国内線の空港であるものの、関係者の間では2010年までに国際空港にしたいという機運が高まっており、渡航者が増加する可能性もある。新しいアジアンリゾートとして注目していきたい。
ゲートウェイでの滞在でベトナムらしさをプラス
今回の行程は、東京からハノイに入り、その足でハロン湾へ。ハノイに戻ってニャチャンを抜けてホーチミンから帰国という縦断ルートで、日本からの両方のゲートウェイを利用。ニャチャンをメインとする場合でも、ゲートウェイでのプラス1日または、2日の滞在はベトナムらしさの演出という意味で有意義だ。
今回、ハノイからは定番のハロン湾クルーズへ。車で約3時間の距離にあり、1日観光という形で午前中にハノイを出て午後からクルーズをするというプランもあるが、今回のように到着日のうちにハロン入りして1泊し、翌日の午前中にクルーズを済ませば、午後はハノイに向けて出発し、暗くなる前にハノイに戻れる。1日で往復するより体力や日程にゆとりができ、帰途に焼き物で知られるバッチャン村に寄り道できる余裕もある。ただし、ハノイでは到着日の同日乗継が難しいため、ニャチャンの前にハノイ滞在が必須で、ハロン湾へ行く場合は2泊が必要になる。
また、ホーチミンは市内の道路が整備され、空港から町までの時間が短縮されたという。今回はホーチミンに午後7時に到着。その深夜午前0時発VN950便で帰国というスケジュールであったため、ホーチミンでは夕食のみの観光であったが、もう少し早い便であれば市内での買い物なども楽しむことができそうだ。日程が可能なら、もう1泊してホーチミンでの観光を満喫し、翌日のフライトで帰国というプランも望ましいだろう。
新デスティネーションとしてのベトナム
ベトナム航空(VN)は先ごろ、東京、名古屋、大阪、福岡から約80名の旅行会社が参加したオールジャパン規模の合同研修旅行を実施した。ベトナム中部のビーチリゾートのニャチャンでは、デスティネーション発展に向けたセミナーを開催し、参加者と現地関係者との意見交換も実施。日本での情報や現地での日本語ガイドの不足といった現状をふまえ、最重要市場である日本からの旅行者増加に向けた今後の方針が話された。(取材協力:ベトナム航空)
成長期の今に、課題を直視した積極的な意見交換を展開
ベトナム航空(VN)が日本に就航した1994年以来、ベトナムへの日本人出国者数はSARSのあった2003年をのぞき、一様に右肩上がりで増加。2007年の訪問者数は40万人超で、就航以前の10倍といわれる。世界的な不況、燃油サーチャージの高騰の影響で旅行業界全体が打撃を受けるなか、多少の影響はあるものの今年もベトナムは伸びを期待できるといわれている。しかし、今回のセミナーでは今後のさらなる成長に向け、あえてベトナム観光の問題点にも言及があった。
まず、話が出されたのが、長年にわたり要望されている在日のベトナム政府観光局の設立だ。これに対し、ベトナム観光省のグエン・クイ・フン氏は「準備委員会を設置し、旅行だけでなく文化交流などのプログラムを兼ねた観光局の設立をめざしたい」と説明する。VN旅客営業部課長の加藤欣也氏も、在日の観光局がないため消費者が気軽に旅行の計画をたてられず、リピーター確保にもつながらないとし、「情報はただ提供するだけでは意味がない。相手にはっきりと認知させることが重要」と述べ、積極的なプロモーション活動の必要性を語った。
このほかセミナーでは、現地ホテルやオペレーターなどで組織されるインドシナ観光促進協議会(ITPF)会長の大畑貴彦氏(サイトラベルサービス代表取締役社長)が、地域全体の認知向上の必要性を強調。大畑氏は国土交通省の調査によるベトナムおよび周辺諸国の認知状況との比較を引用し、ベトナムという国を「知っている」と答えた日本人は約3割に過ぎず、残りの7割は「まったく知らない」あるいは「ほとんど知らない」という状況を説明。ラオスやミャンマーなどの周辺諸国は9割が「まったく」あるいは「ほとんど知らない」と答えたという。モノデスティネーションとしてはもちろん、周遊旅行での旅行者数の増加も必要であることから、航空会社やホテルなどインドシナ旅行の関係者全体の強い団結を訴えた。
ベトナム観光省では日本を最重要市場に位置づけており、インフラや観光施設に投資していく方針で、約100万ドルの予算を予定。日本旅行業協会(JATA)のビジット・ワールド・キャンペーン「もっと! 海外へ」で重要市場に指定されたほか、国交省のODA予算を活用した観光関連事業としてベトナムへの海外旅行促進策も実施されており、観光拡大に向けた各種施策の拡大が期待される。また、VNも引き続き日本マーケットに投資していく方向だ。日本への直行便は64%のシェアを誇るが、この先、福岡/ハノイ線などの需要が高まればネットワークをさらに拡充することも考えられるという。なお、10月1日には以前、日本地区総支配人を務めていたチン・ホン・クァン氏が副社長に就任している。
引き続き中部エリアをプロモーション
ベトナム観光省ではメジャーとなる南部のホーチミン、北部のハノイの両都市を拠点とする旅行にかぎらず、ベトナム中部地域の観光を積極的に宣伝していく方針。中部は国内にある5つの世界遺産のうち、3つの文化遺産と1つの自然遺産の計4つが位置するため、遺跡を訪れる歴史・文化的な旅行のイメージが強いが、ベトナム観光省では南北に長い海岸線を活かしたビーチリゾートもプロモートする考えで、2010年までにはベトナムのリゾートが世界の美しいビーチリゾート地として10位以内に位置づけられることをめざすという。
旅行会社の中には、現段階ではベトナムのビーチリゾートに明確な売りがなく、リゾートを打ち出して販売するのは難しいという声もあった。ただし今回、セミナーを開催した中部のニャチャンは、ベトナムを代表するビーチリゾート。小さな町だが、今年7月にはミスユニバースの世界大会が開催されており、シックスセンシズ・ハイダウェイ、エバソン・アナマンダラ、メリア・サンライズといった5ツ星リゾートを擁する。さらに目抜き通りにはノボテルやシェラトンが建設中で、規模拡大の一途にあり、リゾートとして世界的に注目を集めるデスティネーションといえるだろう。ハノイから空路で2時間弱、ホーチミンへは1時間弱の距離にあり、ホーチミン経由は同日乗継が可能。待機時間は約3時間超であるものの、日本人の少ない穴場的なリゾート地としては比較的、アクセスしやすい距離にあるといえる。
参加者からはハノイやホーチミンに駐在する日本企業の社員などのインセンティブ旅行や、ロングステイ目的のシニアなど、リゾート滞在そのものを目的とする客層にターゲットをしぼるというアイデアもあり、可能性のある新デスティネーションをどう売っていくか模索する意欲が見られた。ニャチャンは最近、ダイビング人気が高まっているほか、2004年にオープンしたニャチャンのカムラン空港は、現在は国内線の空港であるものの、関係者の間では2010年までに国際空港にしたいという機運が高まっており、渡航者が増加する可能性もある。新しいアジアンリゾートとして注目していきたい。
ゲートウェイでの滞在でベトナムらしさをプラス
今回の行程は、東京からハノイに入り、その足でハロン湾へ。ハノイに戻ってニャチャンを抜けてホーチミンから帰国という縦断ルートで、日本からの両方のゲートウェイを利用。ニャチャンをメインとする場合でも、ゲートウェイでのプラス1日または、2日の滞在はベトナムらしさの演出という意味で有意義だ。
今回、ハノイからは定番のハロン湾クルーズへ。車で約3時間の距離にあり、1日観光という形で午前中にハノイを出て午後からクルーズをするというプランもあるが、今回のように到着日のうちにハロン入りして1泊し、翌日の午前中にクルーズを済ませば、午後はハノイに向けて出発し、暗くなる前にハノイに戻れる。1日で往復するより体力や日程にゆとりができ、帰途に焼き物で知られるバッチャン村に寄り道できる余裕もある。ただし、ハノイでは到着日の同日乗継が難しいため、ニャチャンの前にハノイ滞在が必須で、ハロン湾へ行く場合は2泊が必要になる。
また、ホーチミンは市内の道路が整備され、空港から町までの時間が短縮されたという。今回はホーチミンに午後7時に到着。その深夜午前0時発VN950便で帰国というスケジュールであったため、ホーチミンでは夕食のみの観光であったが、もう少し早い便であれば市内での買い物なども楽しむことができそうだ。日程が可能なら、もう1泊してホーチミンでの観光を満喫し、翌日のフライトで帰国というプランも望ましいだろう。
ベトナムでクラシックコンサート、
普段入れないオペラ座見学も
ベトナム航空(VN)では今年、クラシックコンサート
のスポンサーとなり、ハノイとホーチミンで「ベトナム
航空 クラシックス」を主催。ウィーン少年合唱団が招
待され、10月1日(ハノイ)と4日(ホーチミン)の2回に
わたってコンサートが開催された。わざわざクラシック
コンサートを聴きにベトナムへ出かけることはないかも
しれないが、ハノイでの会場はオペラ座で、普段は一般
公開されていない施設の内部に入れるという特典がある。
毎年恒例となるこのイベント。ハノイ滞在時に開催され
るようなら、ユニークな体験としてオプショナルとして
組み込んでみるのもよいだろう。