インバウンド2000万人に向けた課題、体制整備と人材育成、意識改革を

▽インバウンド関連産業の空洞化の恐れ

ただし、水嶋氏は、「2000万人時代が到来しても、国内のインバウンド関連産業が空洞化する恐れがある」と指摘。現在はインバウンドの効果が見直され、急速に拡大しているが、手配業務が中心であることから、インバウンドに携わる業者が存続、さらに発展するためには「今後は自社の企画商品で付加価値を提供していかなければならない」とした。また、百貨店協会や金融など旅行業以外の産業界の取組みを紹介し、受け入れ体制の整備に向けた産業横断的な取組みの必要性を訴えた。
▽通訳案内士の就業実態−質を向上し、地位の確立を

就業実態については、国交省が実施した調査によると、登録者で実際に通訳案内業をしているのは26.4%で、そのうち専業としているのは全体の10.2%にとどまる。年間稼働日数は専業者の場合、101日以上が33.1%で30日以下が28.3%、兼業者の場合は101日以上が5.1%で30日以下が69.5%。また、年収は専業の場合300万円以上が23.2%で100万円未満が38.8%、兼業の場合3.5%で100万円未満が76.7%であった。季節や地域によって差はあるが、実体を数値で捉えることで職業として生計を立てるには課題が山積みであることを明らかにした。十分な報酬が得られない背景の一つとして、特にアジアからの団体ツアーが、価格を優先して通訳案内士を手配せず、スルーガイドで旅行を実施するケースが多いことが挙げられる。スルーガイドでもある程度の知識を持ち合わせ、時には日本人よりも詳しいという評判もあることから、今後は料金に見合ったサービスの提供に向けて質を向上し、外国人旅行者にとっての通訳案内士としての地位を確立する必要がある。
こうした課題に対し、石森氏は「観光創造士」を提唱。地域では人材不足のため、多様な観光資源を活用できておらず、活用しようと試みる人がいても実現できる地位がないことから、そうした人々の活動を後押しする資格制度の確立を求めた。今後は地域主導で観光産業を盛り上げていかなければならないが、それには政府の支援も必要だとの意見を示した。
▽地域の意識改革も課題の一つ

一方、大江氏は小規模の地方旅館などは多くの外国人旅行者が宿泊することで日本人宿泊者の足が遠のくと考える施設があり、外国人旅行者の積極的な受け入れ体制は整っていないことを指摘。これに対し九州観光促進機構では、外国人を受け入れることのメリットを伝えるセミナーや、外国人旅行者に受け入れられるプログラム造成などに取組んでおり、2000年以降、韓国からのゴルフ目的の旅行など訪問者数は毎年増加している。ただし、地域の観光産業に携わる人だけでなく、日本人は全体的に外国人の受け入れに対する抵抗感が高く、観光立国を実現するには意識の改革、インバウンド産業の重要性への理解を普及することが不可欠であると訴えた。