急成長を遂げたエア・アジア、企業理念、戦略は−JATA国際会議の講演採録
エア・アジア・グループCEOのトニー・フェルナンデス氏が9月18日、JATA国際観光会議2008で特別講演し、エア・アジア(AK)の企業文化や格安航空会社(LCC)としての戦略などを語った。グループ会社であるエア・アジアX(D7)の日本就航が大きな関心事であったと思われるが、ユーモアを交えながら語られる独自の経営理念や戦略に、多くの聴衆が熱心に聞き入っていた。
▽市場拡大で「最終的には値段」
AKは、フェルナンデス氏が2001年に25米セント(約26円)で航空会社を買い取り、2機の航空機から運航を開始。現在は7ヶ所のハブ空港から175機の航空機を運航し、2007年には年間971万7480人(AKの2008年2月28日付決算短信)の旅客を運んだ。就航するすべての市場で「ローコスト」であることを最重要視しており、組織体制やITテクノロジーの活用により、コストを削減。また、機体塗装や機内での広告枠、機内食、免税品の販売、クレジットカード事業など収入源を多様化することで、燃油が高騰する状況下でも運賃額は低価格を維持し、燃油サーチャージ額は「少し値上げした程度」に抑えている。
低コスト、低価格へのこだわりは、「市場拡大や需要喚起に向けた施策はさまざまあるが、最終的には値段。この経済の原則は世界中で有効」との考えに基づく。AKの平均運賃は30米ドル(約3200円)で、1時間あたりでは15米ドル(約1600円)。D7が運航するオーストラリア線は、既存の大手航空会社と比べて平均的に50%から60%引きの運賃を提供しており、日本就航後は東京/クアラルンプール線の就航記念運賃を25米ドル(約2600円)程度で売り出す考え。フェルナンデス氏は日本の若者の海外旅行離れにも「旅行費用が高いから」と指摘する。
コスト削減に欠かせないITテクノロジーには、「レガシーキャリアに追いつくため」多額の投資をしているが、自社の所有はしない。これは、テクノロジーの進歩が早いため、自社で所有すると投資がかさみ、常に新技術を導入し続けることが困難になるためだ。開発はシステム会社に外注、もしくは共同で進めている。現在、オンライン予約が売上の70%を占めており、近く航空券の予約と購入、チェックインが携帯電話でできるようになるほか、搭乗券も携帯電話で代替できるようにする予定だ。
▽ブランド構築で安心感を醸成、人材重視で全社員と定期的に面会
低コストを追求する一方「品質には妥協しない」考えで、安全性の確保に注力。また、ブランドの構築、認知向上にも積極的に取り組んできている。SARSの時期は広告宣伝費をどの航空会社も削減したが、それまでの3倍の広告費を投じてブランドの認知を図った。他社が広告を打たない時期だからこそ、高い認知度を確保でき、安い運賃で旅行をしたいという需要を獲得することが出来た。同様に、バリの爆破事件では、翌日にキャンセルがでたものの、1万席を無料で提供し、1時間で全席の予約が完売となった。このときに、バリを訪れた人が「1万人がバリ旅行から戻り、100万人に『バリは大丈夫だった』言ってくれた」とクチコミによるバリへの旅客需要の復活で、路線を維持できたほか、バリ州政府から表彰を受けた。現在はイギリスのサッカーチーム「マンチェスター・ユナイテッド」や、F1の「ウィリアムズ」とタイアップし、品質の高さをアピールする。
フェルナンデス氏は、「AKの財産は人材」と言い切る。AKの社員数は、創業時の200名から6500名に急増しているが、「One people, One Culture, One AirAsia, One Family」として、ひとつであることを意識し、一緒の文化を創っていく。オフィスには個室はなく、オープンな社内環境を作っている。また、フェルナンデス氏は1ヶ月から2ヶ月に1度、必ず全社員に会う機会を設けている。これは「原石を見つけて磨く」ため。社員に等しくチャンスを与えることで、「6500名が夢を持ち、何でもできると考えてさらに努力すれば、我々は巨大なエネルギーを得られる」との考えだ。
例えば、タイ人の客室乗務員が東南アジアで初めての女性操縦士になったうえ、フェルナンデス氏の公認のもとミス・タイランドのコンテストに応募し、優勝したという。「ミス・タイランドが航空機を操縦する唯一の航空会社」と笑いを誘うフェルナンデス氏の顔は得意げだ。客室乗務員がエンジニアに転進したり、コールセンターのオペレーターが副操縦士になることも。社員には「信じられないことを信じなさい」、「NOと答えないこと」、「不可能を夢見ること」といい続けているという。最後にフェルナンデス氏は目標として、5年後の2013年までに旅客数を5400万人に、D7を含めて6000万人とし、日本航空(JL)を抜いてアジアナンバー1の航空会社をめざすことを語った。
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▽市場拡大で「最終的には値段」
AKは、フェルナンデス氏が2001年に25米セント(約26円)で航空会社を買い取り、2機の航空機から運航を開始。現在は7ヶ所のハブ空港から175機の航空機を運航し、2007年には年間971万7480人(AKの2008年2月28日付決算短信)の旅客を運んだ。就航するすべての市場で「ローコスト」であることを最重要視しており、組織体制やITテクノロジーの活用により、コストを削減。また、機体塗装や機内での広告枠、機内食、免税品の販売、クレジットカード事業など収入源を多様化することで、燃油が高騰する状況下でも運賃額は低価格を維持し、燃油サーチャージ額は「少し値上げした程度」に抑えている。
低コスト、低価格へのこだわりは、「市場拡大や需要喚起に向けた施策はさまざまあるが、最終的には値段。この経済の原則は世界中で有効」との考えに基づく。AKの平均運賃は30米ドル(約3200円)で、1時間あたりでは15米ドル(約1600円)。D7が運航するオーストラリア線は、既存の大手航空会社と比べて平均的に50%から60%引きの運賃を提供しており、日本就航後は東京/クアラルンプール線の就航記念運賃を25米ドル(約2600円)程度で売り出す考え。フェルナンデス氏は日本の若者の海外旅行離れにも「旅行費用が高いから」と指摘する。
コスト削減に欠かせないITテクノロジーには、「レガシーキャリアに追いつくため」多額の投資をしているが、自社の所有はしない。これは、テクノロジーの進歩が早いため、自社で所有すると投資がかさみ、常に新技術を導入し続けることが困難になるためだ。開発はシステム会社に外注、もしくは共同で進めている。現在、オンライン予約が売上の70%を占めており、近く航空券の予約と購入、チェックインが携帯電話でできるようになるほか、搭乗券も携帯電話で代替できるようにする予定だ。
▽ブランド構築で安心感を醸成、人材重視で全社員と定期的に面会
低コストを追求する一方「品質には妥協しない」考えで、安全性の確保に注力。また、ブランドの構築、認知向上にも積極的に取り組んできている。SARSの時期は広告宣伝費をどの航空会社も削減したが、それまでの3倍の広告費を投じてブランドの認知を図った。他社が広告を打たない時期だからこそ、高い認知度を確保でき、安い運賃で旅行をしたいという需要を獲得することが出来た。同様に、バリの爆破事件では、翌日にキャンセルがでたものの、1万席を無料で提供し、1時間で全席の予約が完売となった。このときに、バリを訪れた人が「1万人がバリ旅行から戻り、100万人に『バリは大丈夫だった』言ってくれた」とクチコミによるバリへの旅客需要の復活で、路線を維持できたほか、バリ州政府から表彰を受けた。現在はイギリスのサッカーチーム「マンチェスター・ユナイテッド」や、F1の「ウィリアムズ」とタイアップし、品質の高さをアピールする。
フェルナンデス氏は、「AKの財産は人材」と言い切る。AKの社員数は、創業時の200名から6500名に急増しているが、「One people, One Culture, One AirAsia, One Family」として、ひとつであることを意識し、一緒の文化を創っていく。オフィスには個室はなく、オープンな社内環境を作っている。また、フェルナンデス氏は1ヶ月から2ヶ月に1度、必ず全社員に会う機会を設けている。これは「原石を見つけて磨く」ため。社員に等しくチャンスを与えることで、「6500名が夢を持ち、何でもできると考えてさらに努力すれば、我々は巨大なエネルギーを得られる」との考えだ。
例えば、タイ人の客室乗務員が東南アジアで初めての女性操縦士になったうえ、フェルナンデス氏の公認のもとミス・タイランドのコンテストに応募し、優勝したという。「ミス・タイランドが航空機を操縦する唯一の航空会社」と笑いを誘うフェルナンデス氏の顔は得意げだ。客室乗務員がエンジニアに転進したり、コールセンターのオペレーターが副操縦士になることも。社員には「信じられないことを信じなさい」、「NOと答えないこと」、「不可能を夢見ること」といい続けているという。最後にフェルナンデス氏は目標として、5年後の2013年までに旅客数を5400万人に、D7を含めて6000万人とし、日本航空(JL)を抜いてアジアナンバー1の航空会社をめざすことを語った。
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