トップインタビュー:エイチ・アイ・エス代表取締役社長 平林朗氏
旅行会社はお客様目線での商品展開・販売が不可欠
今までの実績を基盤に、新しい成長戦略を描く
社長交代について、エイチ・アイ・エス(HIS)取締役会長の澤田秀雄氏は「若返り人事」を強調し、「グローバルに戦える企業に向けた備えをするため、思い切った若返り」と説明した。これまでの成長路線にもかげりがあると明言し、「もう一度2桁成長を」と、新体制での巻き返しに期待を示した。こうした期待を受け4月1日に代表取締役社長に就任した平林朗氏は、2月にスタートしていた合計額表示「明朗会計シリーズ」を拡充し、7月にはHISの海外ツアー「チャオ」の全商品で実施。夏期はグアム4日間2.98万円という合計表示での価格訴求型商品を打ち出し、旅行業界からはその展開の一挙手一投足に注目が集まっている。平林朗氏に聞いた。(聞き手:弊紙編集長 鈴木次郎)
−4月に着任されてから今までの感想をお聞かせください
平林朗氏(以下敬称略) 関東と関西で営業本部長、情報システム本部を経て現職に就いた。本部長と社長の大きな違いは、中長期のビジョンと戦略を描くという目標設定の違いだ。これまでも中長期を見てきたが、社長としてはこれまでより長期、遠くを見ないといけない。しかし、先読みが難しい。4月1日の就任から、旅行業界には多くのことがあり、コミッション・ゼロや燃油サーチャージの高騰という動きや問題も出てきた。
しかし、本来はお客様にとって利便性があるか、ということを追求するべきだ。お客様は旅行に行くにあたり、「比較」をするわけだが、旅行会社はお客様目線で比較できることをしなければならない。特に、メリットとデメリットの両方を伝えていくことは大事なことだ。4月の組織改編で「いい旅研究室」を立ち上げたが、ここではお客様は何を求め、何がよくて購入するかといったプライオリティを理解し、悪い点であればこれまでの旅行業界の慣行であっても変えることがあって良いと考えている。さらにお客様目線を追求するなら、例えば、ツアーでの夕食時のミラノのカツレツ一つをといっても、レストランによってカツレツの厚さが異なる。こうした情報をお客様に分かりやすく伝え、選んでもらうことが重要になってくる。
経済的にも減速感から、先行き不透明感が漂い、メディアでは値上げ、インフレ、日経平均の下落、さらに旅行者数がマイナスという点が報じられ、暗い感じがある。10月以降の燃油の値上げも、どのように消費に影響を与えるか、利用客に影響があるのかは不透明で、こうした点からすると先読みがしにくい状況にある。
−業界の環境が厳しいなかでも、HISとしては成長戦略を描いています
平林 店舗の強みを生かした競合は、世界各地を見渡してもあまりない。欧米は旅に慣れており、購入手段としてネット化が進んでいる。その点で、東南アジアは商習慣や流通面で日本は似ている。その意味で、世界各地で対面販売は大きな可能性、チャンスがある。中国、インドをはじめ、インドネシア、マレーシア、フィリピンなどそれぞれの地域でHISを築いていくだろうし、その際には各市場でローカルの役割が大きくなるだろう。
すでに各国とも7割から8割のスタッフをそれぞれの国で採用しており、合計で2000名の近くのローカルスタッフが活躍している。それぞれの拠点が本格的にアウトバウンドを担当しているわけではないが、取り組み始める体制は整っている。ただし、日本で成功した仕組みをそのまま投入していくより、個々の地域にあわせたローカリゼーションをすすめ、マネジメントも現地採用して、各国のマーケットを理解した企業となっていく必要がある。そのため、人材の確保が重要で、今後の採用活動でのもっとも大きなポイントの一つとなる。
海外では、航空機座席の仕入れが難しいだろう。ただし、日本でのHISの信用力は高く、それを海外でも使えないかと思う。HISは30年で現在の形になっており、海外ではノウハウ、システムを含めて15年以内をめどに日本での規模に匹敵するように立ち上げていきたい。HISの立ち上げ時に、日本の海外旅行者数は約400万人で、20年で4倍から5倍になったイメージを各国でサポートしていきたい。
−日本のアウトバウンドを伸ばす方策は
平林 海外旅行者数、出国者数を伸ばすには、地方市場が大きな役割を果たすだろう。パスポート取得率、潜在需要などを勘案すると、首都圏とそれ以外を比較すると極端に違いがでる。10月には観光庁が設立されることもあり、新規需要の獲得とパスポート取得率を上げる諸策にも期待したい。海外旅行者数2000万人は国策であり、今、この課題に取り組むには地方の需要喚起が必要不可欠だろう。
ただ、実際に需要喚起をはかるとき、店舗が必要になると考えている。例えば、パスポートの取得についての対応は、ネットで説明するよりも、対面で接するほうが効果的ではないだろうか。店舗は小型店舗で、例えば東京の本社のスタッフが、遠隔地の店舗に来店したお客様に商品を説明するといった対応も考えられるだろう。銀行のATMのようにタッチパネルで操作し、動画でスキルの高いスタッフが対面で対応するといったシステム面のサポートも必要になるだろう。こうした効率的な運営とのバランスが重要なポイントになると考えている。
首都圏は、海外旅行者数を伸ばす余地が無いわけではないが、スピードある店舗運営は土地価格の高騰、買い控えの発生、若年層の旅行離れ、中国方面の訪問者数の減少、といった全体的な景況感の度合いも関係する。旅行商品の値段が上がり、さらに売れなくなっているのが現状で、需給のバランスで価格が動くとはいえ、我慢比べの状態だ。その一方で、チャンスでもあると考えている。方法として、他社と比べてお得感を打ち出すことが重要ではないだろうか。自分のために使う余暇の費用、潜在需要はあると思うし、お金を使うことも定着している。価格が少し下がれば、出かける人がいるはずだ。
その一方で、2010年以降に成田・羽田両空港の発着枠が増加することから、供給量の増加も期待される。その他、格安航空会社(LCC)の参入など、先行きの明るい話題もある。これまでの海外旅行の伸びを考えると、供給の増加に需要が付いていく側面があり、この点ではマーケットを活性化する可能性は秘めている。ただし、LCCはこれまでインターネットを活用し、自国を拠点としてある程度は集客が出来ていたが、日本に乗り入れ、日本で本格的に販売する際には、インターネットの直販だけでは難しいと思う。
−ゼロコミッションの影響はIT航空券、あるいは旅行業全体に及ぶと思うが、どのように考えていますか
平林 ゼロコミッションは流れかも知れないが、航空会社がネットに傾倒して、すべてを直販することも考えられない。その一方で、顧客に課金をするフィービジネスも店舗を維持できるコストを生み出すことは厳しく、限界はある。少なくとも、航空会社に旅行会社の存在意義を再度、認識してもらうことに期待したい。ただし、航空座席の販売は今後、販売委託を受ける形になることも想定したい。いわゆるGSA契約のような形といえば想定しやすいだろうか。特に、外国航空会社は座席販売を委託し、旅行会社はそれを受託して販売するような、航空会社との新しい形もあるだろう。
また、フィービジネスは生計を立てるレベルには至っていないが、不測の事態に対応するといった、ある種の保険と同じようなことが付加価値のサービスとして考えられる。こうしたサービスを購入してもらうことで、万一の場合でも手厚く対応出来るなど、サービスをお金に変えられると良い。
−御社は合計額表示の取り組みが早かった。顧客からの反応をどのように捉えていますか
平林 合計額表示のパンフレットを展開しているが、課題は多い。例えば、航空会社を決定していないパッケージ商品は、利用する航空会社によって燃油サーチャージ額が異なり、売値を決定するときに額を加算した販売額を考えるものの、これがリスクになる。さらに、燃油サーチャージ額分はキャンセルチャージをいただけないため、細かい計算も手間がかかる。また、10月以降に燃油額が上がるというが、追加徴収は航空会社が確定しないと決められず、値上げした時にどのように説明するかという課題がある。別表示でも合計額表示でも課題はあるが、どちらかといえばお客様の分かりやすさを考えれば、弊社の対応として手間や煩雑さがあるとは言え、合計額表示の方が良い。さらに、燃油サーチャージの値上げや仕組みなど航空会社が早く伝えれば、売る側も伝えやすくなる。
この燃油サーチャージ額でも明らかになった問題点が、今までの募集型企画旅行において、A、B、Cの航空会社いずれかを使うという不明瞭な販売方法が主流であったことだ。このような手法は、旅行会社と航空会社の販売上の思惑が働いており、両者にとって重要な仕組みである。しかし、このような募集型企画旅行が「プロダクト」の意味を成さなくなっていくとも感じている。航空会社からは価格を主体的に決め、イールドコントロールをしていく潮流に合わないのではないだろうか。こうした販売形態は、プロダクトアウトであり、本来のお客様のニーズに合わないものを販売している懸念がある。
いずれにしろ、短期的な視座ではなく、健全なかたちで航空会社も利益を得るかたちが望ましい。リスクを誰かだけが採ることは出来ないし、料金や価格の値上がりは需要に計り知れない影響を与える。この点で、解決方法は難しいが、取り組まなければならない。
−「若返り」が社長交代の記者会見で話題に上りましたが、スタッフの陣頭指揮をどのようにとっていきますか
平林 ビジネスを展開していく上で、HISのDNAやポリシーを移植し、教育をしていくことが課題だ。“HIS DNA”や“HISポリシー”とは何か。過去のHISとしての成功体験や実績をもとにすることは、ポジティブで重要なことだが、ネガティブにもなりえる。つまり、成功体験が考え方の基盤や標準になると、新しいものを生み出すことが難しくなる。このため、過去の「HIS高度成長時代」を体験していない若い人にも新たな成功をイメージしてもらいながら、そのための組織づくりや権限委譲を進めていきたい。サポート体制は準備している。
また、これまで成長に貢献してきた人たちは、これから事業領域の拡大をはかるなかで、さらに活躍をしてもらいたい。拡大といっても、本業の海外旅行、システム・オンライン、日本でのインバウンド、国内旅行の大きく4つの分野で取り組んでいくことには変わらない。海外拠点は日本発の需要を受けているが、今後はアウトを担当すること、そして日本では全国津々浦々で対応できるようにしていくことで、成長につなげたい。
ありがとうございました。
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今までの実績を基盤に、新しい成長戦略を描く
社長交代について、エイチ・アイ・エス(HIS)取締役会長の澤田秀雄氏は「若返り人事」を強調し、「グローバルに戦える企業に向けた備えをするため、思い切った若返り」と説明した。これまでの成長路線にもかげりがあると明言し、「もう一度2桁成長を」と、新体制での巻き返しに期待を示した。こうした期待を受け4月1日に代表取締役社長に就任した平林朗氏は、2月にスタートしていた合計額表示「明朗会計シリーズ」を拡充し、7月にはHISの海外ツアー「チャオ」の全商品で実施。夏期はグアム4日間2.98万円という合計表示での価格訴求型商品を打ち出し、旅行業界からはその展開の一挙手一投足に注目が集まっている。平林朗氏に聞いた。(聞き手:弊紙編集長 鈴木次郎)
−4月に着任されてから今までの感想をお聞かせください
平林朗氏(以下敬称略) 関東と関西で営業本部長、情報システム本部を経て現職に就いた。本部長と社長の大きな違いは、中長期のビジョンと戦略を描くという目標設定の違いだ。これまでも中長期を見てきたが、社長としてはこれまでより長期、遠くを見ないといけない。しかし、先読みが難しい。4月1日の就任から、旅行業界には多くのことがあり、コミッション・ゼロや燃油サーチャージの高騰という動きや問題も出てきた。
しかし、本来はお客様にとって利便性があるか、ということを追求するべきだ。お客様は旅行に行くにあたり、「比較」をするわけだが、旅行会社はお客様目線で比較できることをしなければならない。特に、メリットとデメリットの両方を伝えていくことは大事なことだ。4月の組織改編で「いい旅研究室」を立ち上げたが、ここではお客様は何を求め、何がよくて購入するかといったプライオリティを理解し、悪い点であればこれまでの旅行業界の慣行であっても変えることがあって良いと考えている。さらにお客様目線を追求するなら、例えば、ツアーでの夕食時のミラノのカツレツ一つをといっても、レストランによってカツレツの厚さが異なる。こうした情報をお客様に分かりやすく伝え、選んでもらうことが重要になってくる。
経済的にも減速感から、先行き不透明感が漂い、メディアでは値上げ、インフレ、日経平均の下落、さらに旅行者数がマイナスという点が報じられ、暗い感じがある。10月以降の燃油の値上げも、どのように消費に影響を与えるか、利用客に影響があるのかは不透明で、こうした点からすると先読みがしにくい状況にある。
−業界の環境が厳しいなかでも、HISとしては成長戦略を描いています
平林 店舗の強みを生かした競合は、世界各地を見渡してもあまりない。欧米は旅に慣れており、購入手段としてネット化が進んでいる。その点で、東南アジアは商習慣や流通面で日本は似ている。その意味で、世界各地で対面販売は大きな可能性、チャンスがある。中国、インドをはじめ、インドネシア、マレーシア、フィリピンなどそれぞれの地域でHISを築いていくだろうし、その際には各市場でローカルの役割が大きくなるだろう。
すでに各国とも7割から8割のスタッフをそれぞれの国で採用しており、合計で2000名の近くのローカルスタッフが活躍している。それぞれの拠点が本格的にアウトバウンドを担当しているわけではないが、取り組み始める体制は整っている。ただし、日本で成功した仕組みをそのまま投入していくより、個々の地域にあわせたローカリゼーションをすすめ、マネジメントも現地採用して、各国のマーケットを理解した企業となっていく必要がある。そのため、人材の確保が重要で、今後の採用活動でのもっとも大きなポイントの一つとなる。
海外では、航空機座席の仕入れが難しいだろう。ただし、日本でのHISの信用力は高く、それを海外でも使えないかと思う。HISは30年で現在の形になっており、海外ではノウハウ、システムを含めて15年以内をめどに日本での規模に匹敵するように立ち上げていきたい。HISの立ち上げ時に、日本の海外旅行者数は約400万人で、20年で4倍から5倍になったイメージを各国でサポートしていきたい。
−日本のアウトバウンドを伸ばす方策は
平林 海外旅行者数、出国者数を伸ばすには、地方市場が大きな役割を果たすだろう。パスポート取得率、潜在需要などを勘案すると、首都圏とそれ以外を比較すると極端に違いがでる。10月には観光庁が設立されることもあり、新規需要の獲得とパスポート取得率を上げる諸策にも期待したい。海外旅行者数2000万人は国策であり、今、この課題に取り組むには地方の需要喚起が必要不可欠だろう。
ただ、実際に需要喚起をはかるとき、店舗が必要になると考えている。例えば、パスポートの取得についての対応は、ネットで説明するよりも、対面で接するほうが効果的ではないだろうか。店舗は小型店舗で、例えば東京の本社のスタッフが、遠隔地の店舗に来店したお客様に商品を説明するといった対応も考えられるだろう。銀行のATMのようにタッチパネルで操作し、動画でスキルの高いスタッフが対面で対応するといったシステム面のサポートも必要になるだろう。こうした効率的な運営とのバランスが重要なポイントになると考えている。
首都圏は、海外旅行者数を伸ばす余地が無いわけではないが、スピードある店舗運営は土地価格の高騰、買い控えの発生、若年層の旅行離れ、中国方面の訪問者数の減少、といった全体的な景況感の度合いも関係する。旅行商品の値段が上がり、さらに売れなくなっているのが現状で、需給のバランスで価格が動くとはいえ、我慢比べの状態だ。その一方で、チャンスでもあると考えている。方法として、他社と比べてお得感を打ち出すことが重要ではないだろうか。自分のために使う余暇の費用、潜在需要はあると思うし、お金を使うことも定着している。価格が少し下がれば、出かける人がいるはずだ。
その一方で、2010年以降に成田・羽田両空港の発着枠が増加することから、供給量の増加も期待される。その他、格安航空会社(LCC)の参入など、先行きの明るい話題もある。これまでの海外旅行の伸びを考えると、供給の増加に需要が付いていく側面があり、この点ではマーケットを活性化する可能性は秘めている。ただし、LCCはこれまでインターネットを活用し、自国を拠点としてある程度は集客が出来ていたが、日本に乗り入れ、日本で本格的に販売する際には、インターネットの直販だけでは難しいと思う。
−ゼロコミッションの影響はIT航空券、あるいは旅行業全体に及ぶと思うが、どのように考えていますか
平林 ゼロコミッションは流れかも知れないが、航空会社がネットに傾倒して、すべてを直販することも考えられない。その一方で、顧客に課金をするフィービジネスも店舗を維持できるコストを生み出すことは厳しく、限界はある。少なくとも、航空会社に旅行会社の存在意義を再度、認識してもらうことに期待したい。ただし、航空座席の販売は今後、販売委託を受ける形になることも想定したい。いわゆるGSA契約のような形といえば想定しやすいだろうか。特に、外国航空会社は座席販売を委託し、旅行会社はそれを受託して販売するような、航空会社との新しい形もあるだろう。
また、フィービジネスは生計を立てるレベルには至っていないが、不測の事態に対応するといった、ある種の保険と同じようなことが付加価値のサービスとして考えられる。こうしたサービスを購入してもらうことで、万一の場合でも手厚く対応出来るなど、サービスをお金に変えられると良い。
−御社は合計額表示の取り組みが早かった。顧客からの反応をどのように捉えていますか
平林 合計額表示のパンフレットを展開しているが、課題は多い。例えば、航空会社を決定していないパッケージ商品は、利用する航空会社によって燃油サーチャージ額が異なり、売値を決定するときに額を加算した販売額を考えるものの、これがリスクになる。さらに、燃油サーチャージ額分はキャンセルチャージをいただけないため、細かい計算も手間がかかる。また、10月以降に燃油額が上がるというが、追加徴収は航空会社が確定しないと決められず、値上げした時にどのように説明するかという課題がある。別表示でも合計額表示でも課題はあるが、どちらかといえばお客様の分かりやすさを考えれば、弊社の対応として手間や煩雑さがあるとは言え、合計額表示の方が良い。さらに、燃油サーチャージの値上げや仕組みなど航空会社が早く伝えれば、売る側も伝えやすくなる。
この燃油サーチャージ額でも明らかになった問題点が、今までの募集型企画旅行において、A、B、Cの航空会社いずれかを使うという不明瞭な販売方法が主流であったことだ。このような手法は、旅行会社と航空会社の販売上の思惑が働いており、両者にとって重要な仕組みである。しかし、このような募集型企画旅行が「プロダクト」の意味を成さなくなっていくとも感じている。航空会社からは価格を主体的に決め、イールドコントロールをしていく潮流に合わないのではないだろうか。こうした販売形態は、プロダクトアウトであり、本来のお客様のニーズに合わないものを販売している懸念がある。
いずれにしろ、短期的な視座ではなく、健全なかたちで航空会社も利益を得るかたちが望ましい。リスクを誰かだけが採ることは出来ないし、料金や価格の値上がりは需要に計り知れない影響を与える。この点で、解決方法は難しいが、取り組まなければならない。
−「若返り」が社長交代の記者会見で話題に上りましたが、スタッフの陣頭指揮をどのようにとっていきますか
平林 ビジネスを展開していく上で、HISのDNAやポリシーを移植し、教育をしていくことが課題だ。“HIS DNA”や“HISポリシー”とは何か。過去のHISとしての成功体験や実績をもとにすることは、ポジティブで重要なことだが、ネガティブにもなりえる。つまり、成功体験が考え方の基盤や標準になると、新しいものを生み出すことが難しくなる。このため、過去の「HIS高度成長時代」を体験していない若い人にも新たな成功をイメージしてもらいながら、そのための組織づくりや権限委譲を進めていきたい。サポート体制は準備している。
また、これまで成長に貢献してきた人たちは、これから事業領域の拡大をはかるなかで、さらに活躍をしてもらいたい。拡大といっても、本業の海外旅行、システム・オンライン、日本でのインバウンド、国内旅行の大きく4つの分野で取り組んでいくことには変わらない。海外拠点は日本発の需要を受けているが、今後はアウトを担当すること、そして日本では全国津々浦々で対応できるようにしていくことで、成長につなげたい。
ありがとうございました。
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