取材ノート:業界活性化に向け、現地の“今”を知る−TTMレポート
業界の活性化にはグローバルな視点で現地の“今”を知ることが不可欠−TTMレポート
旅行会社社員が語る、海外トレードショーの意義と効果
タイ最大の旅行トレードショーの「タイランド・トラベル・マート2008」(TTM)が6月5日から8日まで、バンコクで開催された。今回は初の試みとして、タイ、インドネシア、マレーシアの3ヶ国に加えて、カンボジア、ベトナム、ラオスなどメコン河周辺諸国からセラーが参加し、活発な商談がおこなわれた。日本からの参加者も、東南アジアの主要デスティネーションの「旬」を体感し、意義深いイベントとなったようだ。TTMの参加者に聞いた話をまとめた。(取材協力:タイ国政府観光庁)
日本マーケットの注目は依然として高い
今年のタイランド・トラベル・マート(TTM)には、東京発の11名をはじめ、大阪、福岡を含め約30名が参加した。「今回強く感じたのは、日本のマーケットは依然として注目されており、日本のバイヤーが来ることが強く望まれている」と話すのは、エー・アンド・ピー・マーケティング取締役の野村敏夫氏。日本人出国者数が伸び悩むなか、海外サプライヤーのなかには中国や韓国などの勢いのある他のアジア市場へ注力していくシフトが見られる。ただし、2007年のタイへの日本人旅行者数は約130万人にのぼり、隣国のマレーシアからの旅行者に続いて2番目に多い実績を残している。現状の規模や国別の送客順位を総量として維持しながらビジネス展開ができれば、送客側と受け側の双方の販売意欲が強まることだろう。
また、エス・ティー・ワールドのアジア・ファクトリー・マネージャー柴田真人氏は「当社は旅のトレンドをになう20代から30代の女性客が多く、彼女たちが持つ情報はとても早い。弊社はさらにその半歩先を提案しなければならず、常に最新情報の入手が必要。その点でTTMは格好の場であると再認識した」と、現地に訪れるからこそ得られる情報の貴重さを強調する。ツアーネットワーク代表取締役の柴田憙信氏は「商品企画や販売の第一線でがんばっている若手にこそ、積極的に参加してもらうべきだろう。自分の目で見て、自分の耳で聞いて企画をしなければ良い商品は造れないし、自信を持って薦められない。お客様は自分の理想の旅を実現できる旅行会社を求めている」と、海外のトレードショーに参加する意義を語る。「百聞は一見にしかず」というが、現地できちんとした情報を入手し、かつ現地の商習慣や旅行をするためのインフラに関する肌感覚を得ること、そして情報を最新に保つための人脈の形成など、若手から管理職まで得られるメリットは幅広い。
交通インフラの拡充で、周辺諸国を組み込む新構想が可能に
今年のTTMは、「TTM2008+アメージング・ゲートウェイ・トウ・グレーター・メコン・サブリージョン&インドネシア・マレーシア・タイランド・グロウス・トライアングル」と銘打って展開。TTMはこれまで、タイ国政府観光庁(TAT)が提唱していた香港/バンコク/シンガポールの三都の周遊コースから出展があるなど国際色豊かなトレードショーであった。今年はタイ湾とアンダマン海に面するインドネシア/マレーシア/タイの3ヶ国を巡る「IMTグロウス・トライアングル(IMT−GT)」構想を打ち出し、インドネシアとマレーシアも参加。これは、昨年11月のシンガポールでのサミットで採択されたもので、さらにカンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナムなどメコン河周辺諸国(GMS)の支援も目的となっている。
会場となったバンコク郊外の「インパクト・ムアン・ソン・タニ・エキジビジョン・センター」には、前年比17%増の392企業・団体による429ブースが出展。その内訳はホテルが253と多くを占めるが、旅行会社とツアーオペレーター、エコツーリズム・オペレーター、ウェルネス&スパ、航空会社、エンターテイメント・テーマパーク、ゴルフ、業界団体、GMSの業界企業、インドネシア、マレーシアの業界企業なども並び、デスティネーションを包括的に紹介する機会となった。バイヤーも世界63ヶ国から前年比31.2%増の473名と増加。従来の主力マーケットであるアジア、アメリカ、ヨーロッパがその8割を占めているが、新たに東ヨーロッパやCIS諸国(ロシア、ウクライナなど旧ソ連の独立国家共同体)のほか、中東や南米といった新興国からの参加もあった。
TTMに約3000万バーツ(約1億円)の予算を投じたタイ国政府観光庁(TAT)総裁のポーンスリ・マノーハン氏は「今回、最も注目することのひとつは、予算的に宣伝力のない中小の企業・団体が直接、各国のバイヤーや消費者にアピールする好機となったこと」と強調。周辺諸国と協調することで、新たな周遊ルートの造成をはかることが主なねらいだが、その背景にはタイと周辺国とを結ぶアジアの格安航空会社の隆盛、中国南部、カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナムなど隣国への道路インフラの拡充などがあげられる。こうした周遊構想は日本市場に対しても、新たな商品開発を促すことを期待しているという。
前出の野村氏も「最近は旅行会社よりも消費者の方が、現地の最新情報に精通している場合もある。だが、本来はわれわれ業界側がマーケットをクリエイトしていくべき」と、旅行会社の使命を強調する。その上で、「そのためにも海外のトレードショーに足を運ぶことは非常に有用」と、語気を強める。「日本のマーケットはある意味で過度期であり、新しいビジネスモデルが求められている。業界の構造的な問題もあると思うが、より活性化させるためにはグローバルな視点で現地の“今”を知ることが不可欠」という。日本から参加した人々は口々に海外のトレードショー、とりわけタイに限らず、近隣諸国の動きもうかがえるTTMで得られる情報の大きさを評価。さらに、日本市場が厳しい環境に置かれている今だからこそ、参加する意義を実感したようだ。
旅行会社社員が語る、海外トレードショーの意義と効果
タイ最大の旅行トレードショーの「タイランド・トラベル・マート2008」(TTM)が6月5日から8日まで、バンコクで開催された。今回は初の試みとして、タイ、インドネシア、マレーシアの3ヶ国に加えて、カンボジア、ベトナム、ラオスなどメコン河周辺諸国からセラーが参加し、活発な商談がおこなわれた。日本からの参加者も、東南アジアの主要デスティネーションの「旬」を体感し、意義深いイベントとなったようだ。TTMの参加者に聞いた話をまとめた。(取材協力:タイ国政府観光庁)
日本マーケットの注目は依然として高い
今年のタイランド・トラベル・マート(TTM)には、東京発の11名をはじめ、大阪、福岡を含め約30名が参加した。「今回強く感じたのは、日本のマーケットは依然として注目されており、日本のバイヤーが来ることが強く望まれている」と話すのは、エー・アンド・ピー・マーケティング取締役の野村敏夫氏。日本人出国者数が伸び悩むなか、海外サプライヤーのなかには中国や韓国などの勢いのある他のアジア市場へ注力していくシフトが見られる。ただし、2007年のタイへの日本人旅行者数は約130万人にのぼり、隣国のマレーシアからの旅行者に続いて2番目に多い実績を残している。現状の規模や国別の送客順位を総量として維持しながらビジネス展開ができれば、送客側と受け側の双方の販売意欲が強まることだろう。
また、エス・ティー・ワールドのアジア・ファクトリー・マネージャー柴田真人氏は「当社は旅のトレンドをになう20代から30代の女性客が多く、彼女たちが持つ情報はとても早い。弊社はさらにその半歩先を提案しなければならず、常に最新情報の入手が必要。その点でTTMは格好の場であると再認識した」と、現地に訪れるからこそ得られる情報の貴重さを強調する。ツアーネットワーク代表取締役の柴田憙信氏は「商品企画や販売の第一線でがんばっている若手にこそ、積極的に参加してもらうべきだろう。自分の目で見て、自分の耳で聞いて企画をしなければ良い商品は造れないし、自信を持って薦められない。お客様は自分の理想の旅を実現できる旅行会社を求めている」と、海外のトレードショーに参加する意義を語る。「百聞は一見にしかず」というが、現地できちんとした情報を入手し、かつ現地の商習慣や旅行をするためのインフラに関する肌感覚を得ること、そして情報を最新に保つための人脈の形成など、若手から管理職まで得られるメリットは幅広い。
交通インフラの拡充で、周辺諸国を組み込む新構想が可能に
今年のTTMは、「TTM2008+アメージング・ゲートウェイ・トウ・グレーター・メコン・サブリージョン&インドネシア・マレーシア・タイランド・グロウス・トライアングル」と銘打って展開。TTMはこれまで、タイ国政府観光庁(TAT)が提唱していた香港/バンコク/シンガポールの三都の周遊コースから出展があるなど国際色豊かなトレードショーであった。今年はタイ湾とアンダマン海に面するインドネシア/マレーシア/タイの3ヶ国を巡る「IMTグロウス・トライアングル(IMT−GT)」構想を打ち出し、インドネシアとマレーシアも参加。これは、昨年11月のシンガポールでのサミットで採択されたもので、さらにカンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナムなどメコン河周辺諸国(GMS)の支援も目的となっている。
会場となったバンコク郊外の「インパクト・ムアン・ソン・タニ・エキジビジョン・センター」には、前年比17%増の392企業・団体による429ブースが出展。その内訳はホテルが253と多くを占めるが、旅行会社とツアーオペレーター、エコツーリズム・オペレーター、ウェルネス&スパ、航空会社、エンターテイメント・テーマパーク、ゴルフ、業界団体、GMSの業界企業、インドネシア、マレーシアの業界企業なども並び、デスティネーションを包括的に紹介する機会となった。バイヤーも世界63ヶ国から前年比31.2%増の473名と増加。従来の主力マーケットであるアジア、アメリカ、ヨーロッパがその8割を占めているが、新たに東ヨーロッパやCIS諸国(ロシア、ウクライナなど旧ソ連の独立国家共同体)のほか、中東や南米といった新興国からの参加もあった。
TTMに約3000万バーツ(約1億円)の予算を投じたタイ国政府観光庁(TAT)総裁のポーンスリ・マノーハン氏は「今回、最も注目することのひとつは、予算的に宣伝力のない中小の企業・団体が直接、各国のバイヤーや消費者にアピールする好機となったこと」と強調。周辺諸国と協調することで、新たな周遊ルートの造成をはかることが主なねらいだが、その背景にはタイと周辺国とを結ぶアジアの格安航空会社の隆盛、中国南部、カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナムなど隣国への道路インフラの拡充などがあげられる。こうした周遊構想は日本市場に対しても、新たな商品開発を促すことを期待しているという。
前出の野村氏も「最近は旅行会社よりも消費者の方が、現地の最新情報に精通している場合もある。だが、本来はわれわれ業界側がマーケットをクリエイトしていくべき」と、旅行会社の使命を強調する。その上で、「そのためにも海外のトレードショーに足を運ぶことは非常に有用」と、語気を強める。「日本のマーケットはある意味で過度期であり、新しいビジネスモデルが求められている。業界の構造的な問題もあると思うが、より活性化させるためにはグローバルな視点で現地の“今”を知ることが不可欠」という。日本から参加した人々は口々に海外のトレードショー、とりわけタイに限らず、近隣諸国の動きもうかがえるTTMで得られる情報の大きさを評価。さらに、日本市場が厳しい環境に置かれている今だからこそ、参加する意義を実感したようだ。
タイの新観光キャンペーン
「セブン・ワンダーズ・オブ・アメージング・タイランド」
TTMではタイ国政府観光庁(TAT)による新キャンペー
ン「セブン・ワンダーズ・オブ・アメージング・タイラ
ンド」(タイの7つの感動)の詳細が発表された。これ
はタイの魅力を7つのカテゴリーを訴求するもの。例えば
、タイネス(タイらしさ)ではラマ5世の美術展やスリン
象祭り、ビーチではパタヤの国際マラソン、自然ではホ
アヒン・チャアム・ゴルフ・フェスティバルなど、具体
的なイベントを紹介しつつ、アピールをしていく。これ
により、タイの観光資源の豊富さと魅力を改めて伝えて
いく。