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現地レポート:ヨーロッパ・アルペンルート スイス編

  • 2008年7月11日
スイス・アルプスを体感する鉄道の旅
世界遺産の登録で、さらなる注目もアップ


国土の約6割がアルプスであるスイスのなかで、「ヨーロッパ・アルペンルート」として選ばれたのが、オーストリアに国境を隣にするスイス東部。高級リゾートのサンモリッツを中心に、国際会議で名高いダヴォスや4000メートル級のベルニナアルプス、ティチーノ州のルガーノまで、さまざまな表情を見せる。アルペンルートを巡る場合、スイスでは鉄道を利用したい。鉄道網が充実したスイスは、九州ほどの面積の中に総延長5000キロを越える線路が張り巡らされている。車窓からは移動の手段とは思えないほどの変化に富んだ絶景に出会うことができ、ルート内でのスイスの特徴を充分に感じられるはずだ。

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アルペンルートだから際立つ、幾多の表情〜人気のヨーロッパ・アルプスで新商品の可能性〜(2008/07/10)


サンモリッツを起点に「世界一遅い特急・氷河特急」でめぐる

 スイスのアルペンルートの起点であるサンモリッツに入るためには、必ず陸路で峠を越える。車での移動もできるが、列車で移動すれば、世界中の鉄道ファンが憧れる「氷河特急」に乗車することになる。

 氷河特急はサンモリッツからツェルマットを結ぶ全長296キロメートルのルートで、マッターホルン・ゴッタルト鉄道とレーティッシュ鉄道が運行。アルペンルートには見どころの多い氷河特急の路線の中でも、ハイライトといわれる一部が含まれている。カーブが多く、トンネル、橋を通りながらゆっくりとすすむ「世界で一番遅い」といわれる特急で、平均速度は30キロ。一等車では窓を開けることができ、変化に富む景色をカメラにおさめるには絶好の条件だ。人気の路線は予約が必要だが、さらにレーティッシュ鉄道のアルブラ線とベルニナ線は今年、「レーティッシュ鉄道アルブラ線/ベルニナ線と周辺の景観」として、ユネスコの世界文化遺産に登録された。アルペンルートで鉄道を利用する付加価値となり、さらに注目度があがるに違いない。



アルブラ峠を越えて(クール/サンモリッツ間)

 チューリッヒから、またはオーストリアから国境を越えてサンモリッツに入るときに乗車する氷河特急のクール/サンモリッツ間の路線。この区間を運行するのはレーティッシュ鉄道のアルブラ線だ。数々の石造りのループ橋やトンネルを越え、変化に富んだ景色を眺めながらの移動は、移動そのものが観光であり体験である。

 このルートは、大きな標高差をゆっくり時間をかけて進んでいくのが特徴。クールは標高585メートル、サンモリッツは標高1775メートルで、約1200メートルの高低差を約2時間かけ、美しい山並みや渓谷をイン川やファルダーライン川に沿っていく。車窓には自然とかわいらしい村、丘陵に建つ古城や要塞などが流れ、飽きることがない。

 ハイライトはアルブラ峠の周辺。16世紀頃のイタリア・ティラーノとクールを結ぶ郵便ルートとして整えられた峠で、スイスの交通の要所ともいえる場所だ。サンモリッツから出発すれば約30分で、急カーブやループトンネルが多い“アルブラ・サーカス”といわれるエリアを通る。方向感覚をなくすほどのカーブを経て列車がさらに速度をゆるめると、有名なランドヴァッサー橋が見えてくる。高さ65メートルのスイスを代表する景観だ。その雄大さと、それを作り上げた人々の力に驚かされることだろう。








ベルニナ峠を越えて(サンモリッツ/ティラーノ間)

 この区間は、サンモリッツと北イタリアのティラーノを結び、ベルニナ急行といわれている。こちらも世界遺産に登録された、レーティッシュ鉄道の運行だ。東アルプスの最高峰であるピッツ・ベルニナ(4048メートル)やピッツ・パリュ(3901メートル)、ピッツ・ロゼック(3937メートル)などの山並みと雄大な氷河が連なるベルニナ山群を眺め、オーバーエンガディンの湖、そして北イタリアの素朴な田舎町と変化に富んだ車窓が広がり、アルペンルートのハイライトのひとつといえる。サンモリッツからの日帰りで往復することも、そのままイタリアの都市やミラノへ抜けることができる。

 日帰りで乗車体験するのなら、サンモリッツから約30分のディアヴォレッツアで下車してケーブルカーで山に登りたい。約10分で標高2984メートルの展望台に到着し、その展望台の目の前には氷河が広がる。周囲には、4000メートル級のアルプスの山並みが広がり、山登りすることなく気軽に大自然の目の前に立つことができる。

 そのままイタリアへ向かえば、国境から10分ほどでベルニナ急行のハイライトに遭遇する。それは、牧歌的な緑の中に現れるブルージオのループ橋。速度をさらに落として、360度の円を描くように、列車はぐるりとまわりこむ。こうした形のループ橋は、通常半分はトンネルに隠れているのが普通で、すべてがオープンになっているのは珍しいという。なお、国境を越える際はパスポートが必要なので、注意したい。









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列車の旅に便利なチューリッヒ空港

 チューリッヒ国際空港は、機能的で合理的な視点が反映さ
れたつくりが特徴。無駄を省いた機能性はスイスらしさとも
いえるだろう。空港と直結しているショッピングセンターは、
82のショップやレンタカー、クリーニングや食料品までそろ
う国内2番目の規模をほこるもの。そして、空港がひとつの街
のようにつくられており、また、列車駅のターミナルにもな
っている。

 空港地下にある鉄道駅からの発着数は1日300本。スイス各
地から空港へ向けた電車が走り、サンモリッツを朝電車で出
発して氷河特急を楽しみ、午後のフライトに乗るということ
も可能だ。また、2008年末をめどにさらなる利便性の向上を
はかる目的で、バスターミナルの増強工事が着工している。
こうした空港の利便性向上は、旅のルーティングに役立ちそ
うだ。



インタビュー:スイス・インターナショナル(LX)
セールス&マーケティング・アジア太平洋地区担当ジェネラルマネージャー
ユルグ・クリステン氏


 燃油サーチャージの高騰などを受け、特に長距離デスティ
ネーションが弱含みで推移している。しかし、各旅行会社の
夏商戦ではハイシーズンであるスイスを筆頭に、ヨーロッパ
の高品質の商品は底堅い需要があるという。チューリッヒ空
港で、スイスインターナショナルエアラインズ(LX)のアジ
ア太平洋地区担当のユルグ・クリステン氏に現在の動向を聞
いた。

=日本を含むアジア路線の状況は

 燃油高など、航空会社にとって逆境の材料が多い中、アジア路線は伸びている。5月
から、スイス・インターナショナル(LX)は上海線のデイリー運航を開始したが、アジ
ア/ヨーロッパ間は中東(カタール、エミレーツなど)の路線が成長しており、こうした
航空会社との競争に加え、LLCも増えてきている。

 LXはそのような環境下で、スイスを売ることを最重要項目と認識している。強みは、
品質の高さ。ビジネスクラスなどに利用する新しいシートや日本人スタッフ、ミクニの
日本食提供など、品質向上への努力を続けており、利用頻度は高まっている。

 同時にフィレンツェ行きなど、イタリア路線も好調だ。ビヨンド需要はLXにとって大
切なもので、MCTが40分のチューリッヒ空港の利便性も売りだ。乗り継ぎでは3つのポイ
ントがある。それは、スイスがヨーロッパの中心的な場所にある地理的な優位性と、乗
り継ぎに適したコンパクトな空港であること。さらに2008年にはスイスがシェンゲン協
定に加盟し、イミグレーションの通過がさらに便利になる。

=日本路線は東京をデイリー運航しているが、他の都市への就航予定は

 日本路線は東京のビジネス需要の強さが支えている。また、観光需要も高いと考えて
いる。先ごろ、LXはエーデルワイス航空(8R)を買収し、日本の地方発は8Rがチャータ
ー便の運航をおこなう。この夏のチャーター便は(前年から)倍増し、それを今後に向
けた試金石として、アジア全体のなかでの日本の地方需要の可能性を探る考えだ。

 また、スターアライアンスのメンバーであることも活用していきたい。LHはもちろん
のこと、全日空(NH)を含め、運航している成田線をさらに強固な(需要)にしていき
たい。日本はアジアのなかでもっとも重要なマーケットで、世界的にもアメリカ市場に
次いで重視している。

=燃油の高騰に対して戦略、施策はあるか

 航空会社にとって、燃料はコストの3分の1を占める影響の大きな課題になっている。
経営を考える上で、燃油サーチャージの徴収は仕方のない方法と捉えているが、今後も慎
重な姿勢で検討していく課題とも認識している。燃費の良い機材を早期に入れ替えるこ
とも一案だが、その分の投資が必要だ。また、燃油のヘッジは石油市場が安定していな
い中、逆にリスク要因にもなる。今がピークではないかと考えているが、今後も慎重な
対応が必要だろう。