邦船各社が運送約款改正、「本当に行きたい人に早くキャビンを」

  • 2008年5月20日
 日本外航客船協会(JOPA)が先ごろにクルーズ客船旅客運送約款を一部改正したことにともない、邦船各社が自社約款の改定を実施した。今回のJOPAの改正は、海外クルーズの取消料規定を細分化し、乗船拒否の条件や旅客の禁止行為を明確化したほか、新型インフルエンザの流行を前にした感染症法の改正にも対応できる内容。郵船クルーズ、商船三井客船、日本クルーズ客船の邦船3社が既に約款を改定しており、今後、発売するクルーズから適用する。

 取消料規定の改正は、世界一周など海外長期クルーズの参加者が増えつつあり、90日前としていた取消料の発生日ではキャンセル後の販売が困難となっていることも改定の理由のひとつ。「世界一周クルーズなど長期クルーズは2年前に発売すると、『とりあえず予約を』と考える消費者が少なくない。いざ90日前に空室になっても、予定が調整できずに需要を逃してしまう」(郵船クルーズ)ケースがあった。新約款では、31日以上のクルーズについて、クルーズ期間が91日以上の場合151日前、90日以下のクルーズの場合121日前を取消料発生日とし、「本当に行きたい人に早くキャビンを回せる」(同)という。その一方、クルーズ期間が30日以下の場合は標準旅行業約款に準拠し、ピーク時は41日前まで、ピーク時以外は31日前までを無料に設定。旅行業約款との不整合から、旅行会社が取消料を負担せざるを得ないケースを排除した。

 チャータークルーズの取消料の規定は、郵船クルーズと商船三井客船は消費者向けの取消料を明記した一方で、日本クルーズ客船はチャーターをする旅行会社が消費者向けの取消料を定めることを念頭に置いて取消料を明文化せず、3社の対応が分かれた。ただし、いずれもチャーターを実施する旅行会社との間で契約時に一定額以上の保証金を求め、消費者に対して3社とも同水準の取消料が提示される可能性が高く、「旅客運送約款の違いによる消費者への影響は少ない」(日本クルーズ客船)という。