現地レポート:ノルウェー フィヨルド体験のゲートウェイ、ベルゲンを深く楽しむ
フィヨルド体験のゲートウェイ、ベルゲンを深く楽しむ
パッケージツアーでは、ベルゲンはフィヨルド観光の起点の位置づけで滞在時間が短い旅程が多い。しかし、ベルゲンはノルウェーの文化を知る上で魅力的な素材がたくさんある。街のつくりもコンパクトで、街歩きをするのにも最適。海岸線の魚市場、美術館めぐり、ケーブルカーなどなど、連泊して楽めるほど、たくさんの見どころがある街だ。大自然フィヨルドに入る前に、文化や歴史、芸術の側面からノルウェーを知る体験を提案したい。(取材協力:スカンジナビア政府観光局)
作曲家グリーグゆかりの街、グリーグの家でのコンサートも可能
ベルゲンは、北欧を代表する代表する作曲家グリーグの生誕地。組曲「ペール・ギュント」の澄んだフルートの音色で始まる「朝」は、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。ベルゲンは幼い頃から音楽の才能を発揮し、15歳でドイツへ留学。その後コペンハーゲンやオスロで活躍し、晩年はベルゲンに戻り、1907年に没するまでの22年間、郊外にあるトロルハウゲンで過ごしたのだ。
トロルハウゲンは市内から車で20分、木々がこんもりと茂る丘にある。白いビクトリア朝のグリーグの家は当時のままに残されており、内部の見学が可能。ピアノの上に妻ニーナの写真が飾られているのがほほえましい。壁にはロマン派の作曲家たちの写真がずらりと並び、いかにも音楽家の家らしい雰囲気だ。グリーグは故郷の自然から受けるインスピレーションを生涯求め続け、そこから数々のメロディを紡ぎ出したという。彼の仕事部屋は、ピアノとソファのほか簡素な家具があるだけだが、窓からは鏡のように滑らかで深い色をたたえたフィヨルドの眺めが広がっている。美しいフィヨルドと静かに向かい合っていると、彼の自然への思いがひしひしと伝わってくるようだ。
このトロルハウゲンは、特別な手配や体験を求めるグループに対して、事前予約があればピアノコンサートを開くこともできる。日本人はまだ少ないが、ヨーロッパ人には良く利用されている。グリークの家で彼のピアノを使った演奏を聴く――。こうした演出が旅をより深いものにしてくれるだろう。グリーグの60歳の誕生日にファンがプレゼントしたというピアノは、154センチメートルという彼の身長に合わせてオーダーされた小ぶりのもので、当時と変わらぬ響きを聞かせてくれた。問い合わせはベルゲン観光協会へ。
もちろん、トロルハウゲンには200人を収容できるコンサートホール「トロルサーレン」があり、夏にはグリーグにちなんだ曲を中心にコンサートが開催される。ガラス張りの舞台からはフィヨルドが望めるので、まさにグリーグが愛した風景とともにコンサートを堪能できる。貸出にも応じてくれるので、プライベートコンサートの開催も可能だ。
▽ベルゲン観光協会
http://www.visitbergen.com
▽トロルハウゲン
http://www.troldhaugen.com
※2008年夏のコンサートは6月7日〜8月31日
歴史と文化の旅、ベルゲンの美術館・博物館巡り
ベルゲンはかつて400年間、ハンザ同盟の都市として栄えていた。ハンザ商人を通じて干ダラを中心とする海産物を輸出し、小麦粉やワイン、ビール、塩などを輸入していたのだ。当時のハンザ商人の暮らしを再現するのが、1704年に建てられた商館を保存した「ハンザ博物館」。中には干ダラの束をはじめ、丁稚たちを戒めるムチや縄の残る番頭部屋、商売敵を確認するための小窓がついたドアなどがあり、16世紀にタイムスリップした気分。昔も今も変わらぬ人間の欲や喜怒哀楽が想像できて興味深い。当時の様子を深く味わうために、ぜひ説明つきの見学がおすすめだ。
また、1500年代から現代までの家具、服飾、ガラス、ジュエリー、楽器などノルウェーを中心としたあらゆるデザインが展示されている「西ノルウェー工芸博物館」もある。中でも家具は、装飾が見事な中世のものから現代のモダンなデザインのものまで、多様な品がそろう。8月末までの特別展では、世界的に有名なノルウェー人の服飾デザイナーであるペール・スポックによるオートクチュールの数々を展示している。皇室の女性や女優達に愛されている服はどれも豪奢で個性的。伝統衣装を取り入れたりモノトーンにこだわったり、彼の多彩な感性とその変化が感じられて面白い。
このほか、15世紀から現代までのアートを、絵画を中心に幅広く展示している「ベルゲン美術館」もある。3つの建物には、ムンクの初期の作品をはじめとする20世紀のノルウェーを代表する画家の250点に及ぶ作品を所蔵。特別展として、2008年1月2日から8月6日は、ピカソの「FIGURE AND IMAGE」が開かれている。
▽ハンザ博物館
http://www.bergen.kommune.no/hanseatisk_
/ekstem/museum/
▽西ノルウェー工芸博物館
http://www.vk.museum.no
▽ベルゲン美術館
http://www.bergenartmuseum.no
最先端のノルウェーに出会う、最新スポットUSF界隈
北欧デザインとえいば、スウェーデンやデンマークが先行するようなイメージがあるが、もちろんノルウェーも負けてはいない。このほど、ベルゲンに世界から注目をあつめる先端のデザインを生み出すスポットが登場した。個人旅行の立ち寄り場所として、ツアーへのスパイスとして、最新のノルウェーに出会う素材としてすすめたい。
場所はベルゲン湾を挟む西の半島の付け根あたり。サーディンの加工会社「USF」の工場が移転して空になったスペースを、昨年、ベルゲン芸術学院の大学院生が卒業制作の際に使ったのがきっかけで話題となった、まさに最新の注目スポットだ。
建物はモダンな感覚でリニューアルされ、芸術学院の生徒を中心にグラフィック、テキスタイル、コマーシャルアートなどのワークショップが並んでいる。また、卒業生や現役アーティストたちのオフィスとしても使われ、新人とキャリアの交流が生まれている。フィヨルドに面した建物の1階はオープン・レストランとなり、昼夜を問わず老若男女が集う場に。さらにシネマ、シアター、コンサートホールとしても活用され、文化・音楽・芸術の発信地として勢いを増しつつある。地元の人々との触れ合いの場としてもお勧めの場となるだろう。
パッケージツアーでは、ベルゲンはフィヨルド観光の起点の位置づけで滞在時間が短い旅程が多い。しかし、ベルゲンはノルウェーの文化を知る上で魅力的な素材がたくさんある。街のつくりもコンパクトで、街歩きをするのにも最適。海岸線の魚市場、美術館めぐり、ケーブルカーなどなど、連泊して楽めるほど、たくさんの見どころがある街だ。大自然フィヨルドに入る前に、文化や歴史、芸術の側面からノルウェーを知る体験を提案したい。(取材協力:スカンジナビア政府観光局)
作曲家グリーグゆかりの街、グリーグの家でのコンサートも可能
ベルゲンは、北欧を代表する代表する作曲家グリーグの生誕地。組曲「ペール・ギュント」の澄んだフルートの音色で始まる「朝」は、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。ベルゲンは幼い頃から音楽の才能を発揮し、15歳でドイツへ留学。その後コペンハーゲンやオスロで活躍し、晩年はベルゲンに戻り、1907年に没するまでの22年間、郊外にあるトロルハウゲンで過ごしたのだ。
トロルハウゲンは市内から車で20分、木々がこんもりと茂る丘にある。白いビクトリア朝のグリーグの家は当時のままに残されており、内部の見学が可能。ピアノの上に妻ニーナの写真が飾られているのがほほえましい。壁にはロマン派の作曲家たちの写真がずらりと並び、いかにも音楽家の家らしい雰囲気だ。グリーグは故郷の自然から受けるインスピレーションを生涯求め続け、そこから数々のメロディを紡ぎ出したという。彼の仕事部屋は、ピアノとソファのほか簡素な家具があるだけだが、窓からは鏡のように滑らかで深い色をたたえたフィヨルドの眺めが広がっている。美しいフィヨルドと静かに向かい合っていると、彼の自然への思いがひしひしと伝わってくるようだ。
このトロルハウゲンは、特別な手配や体験を求めるグループに対して、事前予約があればピアノコンサートを開くこともできる。日本人はまだ少ないが、ヨーロッパ人には良く利用されている。グリークの家で彼のピアノを使った演奏を聴く――。こうした演出が旅をより深いものにしてくれるだろう。グリーグの60歳の誕生日にファンがプレゼントしたというピアノは、154センチメートルという彼の身長に合わせてオーダーされた小ぶりのもので、当時と変わらぬ響きを聞かせてくれた。問い合わせはベルゲン観光協会へ。
もちろん、トロルハウゲンには200人を収容できるコンサートホール「トロルサーレン」があり、夏にはグリーグにちなんだ曲を中心にコンサートが開催される。ガラス張りの舞台からはフィヨルドが望めるので、まさにグリーグが愛した風景とともにコンサートを堪能できる。貸出にも応じてくれるので、プライベートコンサートの開催も可能だ。
▽ベルゲン観光協会
http://www.visitbergen.com
▽トロルハウゲン
http://www.troldhaugen.com
※2008年夏のコンサートは6月7日〜8月31日
歴史と文化の旅、ベルゲンの美術館・博物館巡り
ベルゲンはかつて400年間、ハンザ同盟の都市として栄えていた。ハンザ商人を通じて干ダラを中心とする海産物を輸出し、小麦粉やワイン、ビール、塩などを輸入していたのだ。当時のハンザ商人の暮らしを再現するのが、1704年に建てられた商館を保存した「ハンザ博物館」。中には干ダラの束をはじめ、丁稚たちを戒めるムチや縄の残る番頭部屋、商売敵を確認するための小窓がついたドアなどがあり、16世紀にタイムスリップした気分。昔も今も変わらぬ人間の欲や喜怒哀楽が想像できて興味深い。当時の様子を深く味わうために、ぜひ説明つきの見学がおすすめだ。
また、1500年代から現代までの家具、服飾、ガラス、ジュエリー、楽器などノルウェーを中心としたあらゆるデザインが展示されている「西ノルウェー工芸博物館」もある。中でも家具は、装飾が見事な中世のものから現代のモダンなデザインのものまで、多様な品がそろう。8月末までの特別展では、世界的に有名なノルウェー人の服飾デザイナーであるペール・スポックによるオートクチュールの数々を展示している。皇室の女性や女優達に愛されている服はどれも豪奢で個性的。伝統衣装を取り入れたりモノトーンにこだわったり、彼の多彩な感性とその変化が感じられて面白い。
このほか、15世紀から現代までのアートを、絵画を中心に幅広く展示している「ベルゲン美術館」もある。3つの建物には、ムンクの初期の作品をはじめとする20世紀のノルウェーを代表する画家の250点に及ぶ作品を所蔵。特別展として、2008年1月2日から8月6日は、ピカソの「FIGURE AND IMAGE」が開かれている。
▽ハンザ博物館
http://www.bergen.kommune.no/hanseatisk_
/ekstem/museum/
▽西ノルウェー工芸博物館
http://www.vk.museum.no
▽ベルゲン美術館
http://www.bergenartmuseum.no
最先端のノルウェーに出会う、最新スポットUSF界隈
北欧デザインとえいば、スウェーデンやデンマークが先行するようなイメージがあるが、もちろんノルウェーも負けてはいない。このほど、ベルゲンに世界から注目をあつめる先端のデザインを生み出すスポットが登場した。個人旅行の立ち寄り場所として、ツアーへのスパイスとして、最新のノルウェーに出会う素材としてすすめたい。
場所はベルゲン湾を挟む西の半島の付け根あたり。サーディンの加工会社「USF」の工場が移転して空になったスペースを、昨年、ベルゲン芸術学院の大学院生が卒業制作の際に使ったのがきっかけで話題となった、まさに最新の注目スポットだ。
建物はモダンな感覚でリニューアルされ、芸術学院の生徒を中心にグラフィック、テキスタイル、コマーシャルアートなどのワークショップが並んでいる。また、卒業生や現役アーティストたちのオフィスとしても使われ、新人とキャリアの交流が生まれている。フィヨルドに面した建物の1階はオープン・レストランとなり、昼夜を問わず老若男女が集う場に。さらにシネマ、シアター、コンサートホールとしても活用され、文化・音楽・芸術の発信地として勢いを増しつつある。地元の人々との触れ合いの場としてもお勧めの場となるだろう。