取材ノート:プレスの視点で見る、ノルウェー・フィヨルドツアーの新たな可能性

  • 2008年5月8日
プレスの視点で見る、ノルウェー・フィヨルドツアーの新たな可能性
〜スカンジナビア政観が大型プレスツアーを実施
ベルゲン直行便に向けてプロモーションを強化〜


スカンジナビア政府観光局(STB)は今夏、日本/ベルゲン間に直行便が運航されるのを前に、ノルウェーのフィヨルドエリアの魅力を一般消費者にアピールする活動を強化する。ベルゲンは、ノルウェー四大フィヨルドの起点となる街であり、日本からの渡航はレジャーが主力。スカンジナビア航空(SK)の成田便と日本航空(JL)の地方チャーター便が同時に運航されるのは、今夏が初めてだ。STBは、日本からのアクセスが容易になるタイミングでプロモーションを強化し、新たな需要の掘り起こしをめざす。その一環として開催された大型プレスツアーに同行し、日本に対する現地の期待と、各メディアが注目した視点を取材した。(取材協力:スカンジナビア政府観光局)


プレスの着眼点:定番商品にプラスアルファの可能性

 ノルウェーのフィヨルドエリアでは、世界に類がないほどの有数の絶景が見られる。なかでもガイランゲルフィヨルド、ソグネフィヨルド、ハダンゲルフィヨルド、リーセフィヨルドの四大フィヨルドめぐりは、シニア層を中心に人気が高い定番商品となっている。2005年7月にガイランゲルフィヨルド、ネーロイフィヨルドとその周辺が世界自然遺産に登録されてからは、各種メディアからの注目が高まり、世代を越えた日本人観光客を送客できる可能性が高くなった。今回のプレスツアーに参加したのは新聞、テレビ、雑誌、ウェブなど15媒体30名。フィヨルドの雄大な自然を取材する中で、各種媒体の特性によって異なる、様々な着目点がみられた。

 男性読者の多い媒体に人気だったのがフロム鉄道。ソグネフィヨルドエリアのフロム村からミュールダールまでの約20キロを走る山岳鉄道は、ノルウェー国鉄の最高傑作とも言われる。左右に素晴らしい自然の景観が続く鉄道は、世代を問わず旅情を感じさせる素材であり、この鉄道を取材のメインとして訪れたメディアも多かった。ある取材者は、「山と鉄道に、男が感じる旅へのロマンがつまっている」と表現。すでに定番として組み込まれている素材だが、あえて男性をターゲットに絞り、フィヨルドとその他の自然を組み合わせれば、打ち出し方次第で新しい可能性をみつけることができそうだ。また、ミュールダールからベルゲン急行に接続し、ベルゲンやオスロにつなぐことができる利便性も、商品展開のうえで欠かせないポイントとなることだろう。

 富裕層向けの雑誌や女性誌は、首都オスロの関心が高かった。ある取材者は、「旅行の経験値が高く、パリ、ロンドン、ローマなどヨーロッパの街を一通り見てきた女性には、北欧の町は魅力的」と語る。北欧の洗練されたスタイルと伝統が融合した景観や素材を探し歩いたようだ。特に、老舗ホテル「グランド・ホテル」の女性専用フロアは多くのメディアが注目。「成功したノルウェー人女性」をテーマに、フロア内の客室をそれぞれ異なるデザインに仕上げたもので、好みの部屋を指定できる。「女性」「心地良い空間」「自由な選択」の3つを尊重したホテルの滞在は、北欧のライフスタイルを象徴するものとして紹介されることだろう。
フィヨルドの大自然にこうした視点を組み込むことで、これまでにない年代を取り込める可能性が感じられた。今回の取材内容は、直行便運航の直前の5月から7月にかけて各媒体で露出される予定だ。


現地の期待感は高く、相互理解が消費者のメリットとなる

 今回訪れた各地では、日本人観光客に対し、今後のさらなる訪問者数の拡大に繋がるとの期待が高い。スカンジナビアを訪れる観光客のうち、日本市場はわずかであるが、日本人は欧米人と違い、夏のピークのみでなく秋の紅葉や、冬の雪景色の季節などのオフシーズンにも訪れる点にある。取材中も、好景気に沸くロシア人観光客が目にとまる中、日本からのメディア商品で、オフシーズンの料金の安さをうまく使った観光客にも出会った。20名程度の日本人グループが「思ったより寒くない」、「綺麗な時期に安く観光できる穴場シーズン」と語りながら、楽しんでいた姿が象徴的だ。

 STBは、現地と日本の双方が重要性を認識することが大切だと語る。例えば、現地にとって日本市場の販売を増やすことは、四季を通じた観光客誘致に向けたテストマーケティングになるという。日本人観光客のように紅葉や初春、冬などの特徴ある景観を求めて旅をする成熟したマーケットへ力を入れることは、観光市場全体の活性化をもたらす、という考え方だ。

 STBマーケティング部長の宮本拓氏は、日本には現地の魅力を伝え、ノルウェー現地には日本マーケットの重要性を伝えたい、と語る。日本人が「行きやすい」環境を整えるには、受け入れ先の日本市場に対するプライオリティをあげることが重要だろう。現地に重要性が伝われば、日本の旅行会社にとっては仕入れやすくなり、旅行者にとっては受け入れ側の歓迎ムードを感じることになる。業界内の日本、現地の双方が互いを理解し、利益を享受することは、最終的に消費者のメリットとなるはずだ。







増加しつつある日本人マーケット

 日本市場に対する現地の期待は、こんな数字から反映されたものもある。例えば、ソグ
ネフィヨルドのゲートウェイとなるフロム村は、2007年に10万泊であった外国人宿泊数の
うち、日本人が1万2000泊で第1位を占める。フロム村周辺のアウルラン・フロム・ラール
ダール観光協会ノラーフ・ディスタッド氏は、「日本人は四季を通して訪問してくれる大
切なマーケット。今後も期待したい」と語る。また、ベルゲン起点のフィヨルド沿岸クル
ーズ船「フッティルーテン」は、2008年の予約数がすでに07年比の倍となる3000件を超え
たという。こうした状況を受けて今後も日本向けのプロモーションを強化していく構えだ。