現地レポート:ベルギー 冬だからこそ味わえるフランダースの奥深い魅力
冬だからこそ味わえる
フランダース各都市の奥深い魅力
ベルギーをじっくり楽しむなら、冬の季節も勧めたい。ベルギーは花の美しい春から夏の時期に、大都市に滞在して各地の観光スポットを日帰りで訪れる周遊型ツアーが最も人気の旅行形態だ。しかし、これはベルギー観光のハイライトの表面にとどまっており、まだまだ見どころの多いベルギーを奥深く楽しむには、各都市自体のユニークな観光素材にも目を向けたい。例えばフランダース地方なら、アントワープ、ブルージュ、ゲントなど、歴史的建造物や芸術をはじめ、その土地ならではの文化が感じられる観光に適した街が点在する。特に冬季は、これらの魅力を高める楽しみがあるほか、ハイシーズンに比べて観光客数が少なく、どの観光地もゆったりと自分のペースで楽しめるメリットもある。
(取材協力:ベルギー・フランダース政府観光局)
ぶらぶら歩きが楽しい
スタイリッシュな街、アントワープ
『フランダースの犬』やダイアモンドの取引の街として有名なアントワープは最近、ファッションの街としても、世界中から注目を浴びている。スヘルデ川岸の波止場からアントワープ王立美術館あたりまでの地区「ザウト」には、カフェやブティックが建ち並ぶ。散歩がてらのウィンドーショッピングが楽しく、道ゆく人々もファッショナブル。特に冬は、帽子やマフラーなどのファッションアイテムも多く、お洒落のセンスが光る季節だ。カフェでお茶をいただきながら街を彩るファッションを観察したり、おしゃれで現代的な街の雰囲気にひたるのがお勧め。時間を気にせず、まるでそこに暮らす人のようにゆったり過ごすのがアントワープの楽しみ方だろう。
新しい見どころも登場している。ぜひ一度足を運んでほしいのが、2005年7月に世界遺産に登録されたプランタン・モレトゥス博物館だ。バロック時代を代表する画家ルーベンスの絵画やタペストリーに加え、16世紀、17世紀当時の印刷の作業現場がそのまま残されている。日本語のガイドブックが販売されているので、それを読みながら見学すれば各展示品の背景などを理解でき、より有意義に過ごすことができる。
博物館の周辺も散策に最適。花で飾られたレストランや、ベルギーのカラフルな蒸留酒「ジュネバ」を揃えている店、中世の街並みがそのまま残された場所など、入り組んだ小道の奥に入れば入るほど楽しい発見がある。カリヨンの鐘の音を聞きながら、アントワープのランドマーク的な存在である聖母大聖堂に向かって歩けば、移動時間もひとつの心地よいアクティビティになるだろう。
冬だからこその楽しみ
ブルージュでチョコレート三昧
ブルージュは13世紀、ヨーロッパ最大の貿易港だったが、北海の砂が上がり港としての機能を果たさなくなったため、経済の中心がアントワープへ移行したという歴史を持つ。しかしそれが幸いし、現在でも中世の面影が残る、おとぎ話に出てくるようなかわいらしいレンガ色の町並みが人気の観光都市となった。ヨーロッパ屈指の美しい広場として知られるマルクト広場や鐘楼など、見どころは多く、夏場に運河クルーズで巡るのがブルージュ観光の定番。年間300万人の観光客のうち、250万人が花々の咲き乱れる4月から9月にかけて訪れるという。
しかしブルージュでは、冬ならではのお楽しみも見逃してはならない。それは本場のチョコレートショップ巡り。ブルージュには約50のチョコレートショップがあり、有名なチョコレートショップから、ブルージュだけにオープンする地元のショップまでさまざまそろう。首都のブリュッセルにも多数のショップがあるが、歩いても巡れる距離に集合しているのがブリュージュの特徴。「職に困ったら、ブルージュでチョコレート職人になれ」といわれるほど、本場ベルギーでもブルージュはチョコレートの街として一目置かれる存在なのだ。
そんなチョコレート人気を盛り上げるように、ブルージュでは2006年から、冬期限定でチョコレートにまつわるイベントやアクティビティを提供している。2月の初旬にはマルクト広場で「ブルージュ・チョコレートマーケット」が開催されるほか、チョコレートを使ったトリートメントが体験できるエステも登場。なかでも手軽に楽しめるのが、チョコレート・ウォーキングツアーだ。ガイドと一緒にチョコレートショップを4、5軒巡り、街を散策するツアーで、各店舗の特徴やベルギーチョコレートの美味しさを解説してもらう。チョコレート作りの見学も可能だ。例えば、今回立ち寄ったショップは、ミシュランの星付きレストランに納品する「ザ・チョコレート・ライン」。赤ワインとビネガー、バジルとトマト、コーラといった、ユニークな素材を使ったチョコレートが特徴で、意外な食材とカカオがマッチした新しい美味しさが印象的だった。
チョコレート巡りの締めくくりは、チョコレートを使ったメニューのディナー。チョコレートフェスティバルの期間中、市内の10ヶ所のレストランでは、前菜、デザートで、チョコレートを使ったメニューを提供している。「ホタテのカカオソテー」や、「鳩のパン粉焼き・チョコレートソース添え」など、メニュー名からは味が想像できないが、食べてみるとカカオのコクが素材と合っているのに驚かされる。ブルージュならではの味覚として勧めたい。
なお、4月末にはドイツ系高級ホテル「ケンピンスキー・ホテル・デュークズ・パレス」がオープン予定で、ブルージュに初の5ツ星ホテルが登場することになる。同ホテルは15世紀時代の建物を改装したホテルで、総客室数はスイートを含め93室。同ホテルのような高級ホテルがオープンすることで、ブルージュに宿泊する楽しみやテーマが広がるだろう。
夜の美しさは必見
3ツ星の「訪れる価値のある街」ゲント
聖バーフ大聖堂の中にある「神秘の子羊」で有名なゲントも、ぜひ滞在して楽しみたい街だ。ゲント大学の学生たちの生活の場でもあるゲントは、中世の街並みを残しながらも活気と生活感にあふれている。レイエ川沿いを散策すれば学生たちがベンチに座り、友人とおしゃべりをする普段着のままの様子がうかがえる。また、街なかに出れば昔から愛される駄菓子や、おいしいマスタードのお店など、生活に根付いた品々が見つかる。ひとあじ違った家庭的な雰囲気のお土産を手に入れたい。
冬のハイライトは夜。街がライトアップされ、とても美しい。照明デザイナーによって設計されたライトは、街のハイライトをきれいに浮き上がらせ、幻想的な雰囲気を演出している。2004年にはそれが評価され「訪れる価値のある町」としてミシュランのガイドブックで3ツ星を獲得したほど。ライトアップを効果的に楽しむのなら、運河クルーズがおすすめ。約40人乗りの船に乗り、レイエ川を30分間ほど巡る。冬季は夜間クルーズの定期運行はないが、グループで事前に予約をすれば可能とのこと。冬場の澄んだ空気の中、周囲も静まった時間のライトアップクルーズは本当に美しい。1泊でも滞在して、ぜひ体験してほしいアクティビティである。
アントワープ、ブルージュ、そしてゲント。規模は違えど同じ地方の都市でありながら、それぞれがまったく違った雰囲気と魅力を持っている。駆け足で足跡を残すだけでなく、じっくり腰をすえて見学すれば、一度のベルギー旅行でさまざまな思い出を作ることができる。一粒で何度もおいしいデスティネーションといえそうだ。
フランダース各都市の奥深い魅力
ベルギーをじっくり楽しむなら、冬の季節も勧めたい。ベルギーは花の美しい春から夏の時期に、大都市に滞在して各地の観光スポットを日帰りで訪れる周遊型ツアーが最も人気の旅行形態だ。しかし、これはベルギー観光のハイライトの表面にとどまっており、まだまだ見どころの多いベルギーを奥深く楽しむには、各都市自体のユニークな観光素材にも目を向けたい。例えばフランダース地方なら、アントワープ、ブルージュ、ゲントなど、歴史的建造物や芸術をはじめ、その土地ならではの文化が感じられる観光に適した街が点在する。特に冬季は、これらの魅力を高める楽しみがあるほか、ハイシーズンに比べて観光客数が少なく、どの観光地もゆったりと自分のペースで楽しめるメリットもある。
(取材協力:ベルギー・フランダース政府観光局)
ぶらぶら歩きが楽しい
スタイリッシュな街、アントワープ
『フランダースの犬』やダイアモンドの取引の街として有名なアントワープは最近、ファッションの街としても、世界中から注目を浴びている。スヘルデ川岸の波止場からアントワープ王立美術館あたりまでの地区「ザウト」には、カフェやブティックが建ち並ぶ。散歩がてらのウィンドーショッピングが楽しく、道ゆく人々もファッショナブル。特に冬は、帽子やマフラーなどのファッションアイテムも多く、お洒落のセンスが光る季節だ。カフェでお茶をいただきながら街を彩るファッションを観察したり、おしゃれで現代的な街の雰囲気にひたるのがお勧め。時間を気にせず、まるでそこに暮らす人のようにゆったり過ごすのがアントワープの楽しみ方だろう。
新しい見どころも登場している。ぜひ一度足を運んでほしいのが、2005年7月に世界遺産に登録されたプランタン・モレトゥス博物館だ。バロック時代を代表する画家ルーベンスの絵画やタペストリーに加え、16世紀、17世紀当時の印刷の作業現場がそのまま残されている。日本語のガイドブックが販売されているので、それを読みながら見学すれば各展示品の背景などを理解でき、より有意義に過ごすことができる。
博物館の周辺も散策に最適。花で飾られたレストランや、ベルギーのカラフルな蒸留酒「ジュネバ」を揃えている店、中世の街並みがそのまま残された場所など、入り組んだ小道の奥に入れば入るほど楽しい発見がある。カリヨンの鐘の音を聞きながら、アントワープのランドマーク的な存在である聖母大聖堂に向かって歩けば、移動時間もひとつの心地よいアクティビティになるだろう。
冬だからこその楽しみ
ブルージュでチョコレート三昧
ブルージュは13世紀、ヨーロッパ最大の貿易港だったが、北海の砂が上がり港としての機能を果たさなくなったため、経済の中心がアントワープへ移行したという歴史を持つ。しかしそれが幸いし、現在でも中世の面影が残る、おとぎ話に出てくるようなかわいらしいレンガ色の町並みが人気の観光都市となった。ヨーロッパ屈指の美しい広場として知られるマルクト広場や鐘楼など、見どころは多く、夏場に運河クルーズで巡るのがブルージュ観光の定番。年間300万人の観光客のうち、250万人が花々の咲き乱れる4月から9月にかけて訪れるという。
しかしブルージュでは、冬ならではのお楽しみも見逃してはならない。それは本場のチョコレートショップ巡り。ブルージュには約50のチョコレートショップがあり、有名なチョコレートショップから、ブルージュだけにオープンする地元のショップまでさまざまそろう。首都のブリュッセルにも多数のショップがあるが、歩いても巡れる距離に集合しているのがブリュージュの特徴。「職に困ったら、ブルージュでチョコレート職人になれ」といわれるほど、本場ベルギーでもブルージュはチョコレートの街として一目置かれる存在なのだ。
そんなチョコレート人気を盛り上げるように、ブルージュでは2006年から、冬期限定でチョコレートにまつわるイベントやアクティビティを提供している。2月の初旬にはマルクト広場で「ブルージュ・チョコレートマーケット」が開催されるほか、チョコレートを使ったトリートメントが体験できるエステも登場。なかでも手軽に楽しめるのが、チョコレート・ウォーキングツアーだ。ガイドと一緒にチョコレートショップを4、5軒巡り、街を散策するツアーで、各店舗の特徴やベルギーチョコレートの美味しさを解説してもらう。チョコレート作りの見学も可能だ。例えば、今回立ち寄ったショップは、ミシュランの星付きレストランに納品する「ザ・チョコレート・ライン」。赤ワインとビネガー、バジルとトマト、コーラといった、ユニークな素材を使ったチョコレートが特徴で、意外な食材とカカオがマッチした新しい美味しさが印象的だった。
チョコレート巡りの締めくくりは、チョコレートを使ったメニューのディナー。チョコレートフェスティバルの期間中、市内の10ヶ所のレストランでは、前菜、デザートで、チョコレートを使ったメニューを提供している。「ホタテのカカオソテー」や、「鳩のパン粉焼き・チョコレートソース添え」など、メニュー名からは味が想像できないが、食べてみるとカカオのコクが素材と合っているのに驚かされる。ブルージュならではの味覚として勧めたい。
なお、4月末にはドイツ系高級ホテル「ケンピンスキー・ホテル・デュークズ・パレス」がオープン予定で、ブルージュに初の5ツ星ホテルが登場することになる。同ホテルは15世紀時代の建物を改装したホテルで、総客室数はスイートを含め93室。同ホテルのような高級ホテルがオープンすることで、ブルージュに宿泊する楽しみやテーマが広がるだろう。
夜の美しさは必見
3ツ星の「訪れる価値のある街」ゲント
聖バーフ大聖堂の中にある「神秘の子羊」で有名なゲントも、ぜひ滞在して楽しみたい街だ。ゲント大学の学生たちの生活の場でもあるゲントは、中世の街並みを残しながらも活気と生活感にあふれている。レイエ川沿いを散策すれば学生たちがベンチに座り、友人とおしゃべりをする普段着のままの様子がうかがえる。また、街なかに出れば昔から愛される駄菓子や、おいしいマスタードのお店など、生活に根付いた品々が見つかる。ひとあじ違った家庭的な雰囲気のお土産を手に入れたい。
冬のハイライトは夜。街がライトアップされ、とても美しい。照明デザイナーによって設計されたライトは、街のハイライトをきれいに浮き上がらせ、幻想的な雰囲気を演出している。2004年にはそれが評価され「訪れる価値のある町」としてミシュランのガイドブックで3ツ星を獲得したほど。ライトアップを効果的に楽しむのなら、運河クルーズがおすすめ。約40人乗りの船に乗り、レイエ川を30分間ほど巡る。冬季は夜間クルーズの定期運行はないが、グループで事前に予約をすれば可能とのこと。冬場の澄んだ空気の中、周囲も静まった時間のライトアップクルーズは本当に美しい。1泊でも滞在して、ぜひ体験してほしいアクティビティである。
アントワープ、ブルージュ、そしてゲント。規模は違えど同じ地方の都市でありながら、それぞれがまったく違った雰囲気と魅力を持っている。駆け足で足跡を残すだけでなく、じっくり腰をすえて見学すれば、一度のベルギー旅行でさまざまな思い出を作ることができる。一粒で何度もおいしいデスティネーションといえそうだ。
ゆっくり滞在すれば、食事も旅のハイライトに
ベルギーの食事は質が高い。特産素材を活かし、フランス料
理の手法を活かしながら、独自の味を育んでいる。北海を望む
フランダース地方は、シーフード料理が特に有名で、味付けも
日本人好みのものが多い。こんな料理はぜひ、時間をかけて
ゆったりと楽しみたいもの。従来の拠点からの日帰りツアーで
は難しいが、街に滞在してディナーの時間を確保すれば、旅行
の印象が変わるだけでなく、ベルギーの観光素材としても利用
できるはずだ。
冬のお薦めはなんといってもムール貝のワイン蒸し。鍋一杯
に盛られたムール貝のワイン蒸しは、日本でおなじみの牡蠣と
同じく、Rの付く月が美味しいと言われる。夏場に比べ、ふっくら
した身のムール貝を堪能することができる。そのほか、肉や魚
類と野菜のクリームシチュー「ワーテル・ゾーイ」や、牛肉のビ
ール煮など、手間隙かけてじっくり作られたあつあつの煮込み
料理も、冬場ならではの贅沢なディナーといえるだろう。