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現地レポート:モルディブ

  • 2008年2月15日
シニア誘致に向け伝統・文化を掘り起こし
日本人観光客倍増に向け本腰


日本とモルディブは2007年、外交関係樹立40周年を迎えた。これを機に、モルディブは日本とのより深い関係を築くねらいから、5月に駐日モルディブ大使館を開設。通常の外交業務以外に、日本人訪問者の誘致促進も行い、今後5年間で現在の倍増以上となる約8万5000人の誘致をめざす。昨年実施された、外交関係樹立40周年記念のFAMツアーで取材した、現地の誘致に対する考え方などをレポートする。
(取材:加藤明子/取材協力:モルディブ政府観光局)


空と陸のインフラ進む、新たな旅行の仕方に期待も

 モルディブでは観光事業がスタートして、07年でちょうど35年の節目を迎えた。さらなる観光事業の促進を目的に中長期の施策を策定しており、国内線空港は10ヶ所、マリーナも10ヶ所増設する予定だ。07年11月には従来のマーレ国際空港に加え、アッドゥ環礁にあるガン空港が国際線の乗り入れを開始し、ルフトハンザドイツ航空(LH)の直行便が就航した。これを機に、アッドウ環礁第1号となるリゾートアイランドも誕生。モルディブ共和国政府観光大臣のマハモード・ショージー氏は「国内線も年内に毎時間1便の頻度で増便する予定で、国内のアクセスを各段と向上させていく」と意欲的だ。

 モルディブの領土は環礁が南北に細長く連なって形成されている。環礁は全部で20個、最北から最南まで距離にしておよそ1200キロメートルで、飛行機で移動しても1時間はかかる。国内の移動が楽ではないことから、観光客は必然的にひとつの島をベースに滞在する。そのため、ガン空港の国際線乗り入れや国内線空港の増設は、北から南、または南から北へ移動を促し、モルディブ滞在の長期化と従来の滞在スタイルに変化をもたらすとして期待されている。こうしたインフラ拡充の動きは、04年末の津波を境に、とくに積極的に行われている。

 現在、成田からモルディブへの直行便は、スリランカ航空(UL)のみ。政府観光局では現在、日本の航空会社と交渉を重ね、成田/モルディブ間の直行便就航へ向けて働きかけているそうだ。東南アジアのリゾート開発に押され気味のモルディブが、今後あらたな観光客を獲得するカギは、航空座席と客室数のインフラ拡充にあるだろう。


進む新規リゾート開発、人口のリゾート島も

 モルディブのリゾートホテルの稼働率は高く、どこも年間平均80%。フルシーズンにはおおむね満室状態だ。ショージー観光大臣は「これ以上観光客を増やしたくても、なかなか増やせないのが現状。今後は無人島の開発を推し進めることで、より多くの観光客の方々にアピールしていきたい」と明かすように、政府では新規リゾート開発計画にも力をいれている。

 モルディブ内の島の数はおよそ1200島。そのうち110島は現地の人々の住居島、90島は観光客向けのリゾートアイランドで、残る1000近い島々はいまだ人の手が加えられていない。こうした無人島はおもに南に位置し、今後あらたな開発が期待されるエリアでもある。現時点だけでもシェラトン、ヒルトン、マンダリンといった大手ホテルチェーンなど、今後3年間で50以上の新規リゾートホテルの開業が予定されている。また、個人によるプライベート所有を認める案も持ち上がっており、富裕層による個人所有の別荘や、ハワイなどで見られる「タイムシェア」型の別荘が登場してくる可能性もある。ロングステイを希望する日本人シニア層にも、多いにアピールできそうだ。

 さらに、人工島の開発も進められている。首都マーレ島のとなりに浮かぶフルフマレ島は、干拓と埋め立てによって作られた人工の島で、年々深刻化する人口増加への対策として政府事業として進めている。現在はほぼ3分の1が完成し、国際展示場や集合住宅エリアが建設され、およそ36万人が生活している。今後はさらに住居棟を増やし、商業施設や産業工場を充実させる。

フルフマレ島の人工島開発は、あくまでも現地モルディブ人を対象としている。津波の被災者への救済措置としても、早急な完成がのぞまれているからだ。ただ、開発が成功すれば、リゾートアイランド用の人工島が作られる可能性もでてくる。ここ数年の、温暖化による侵食問題に対しても、人工島にかかる期待はますます高まっている。


新たなターゲット、シニア層誘致に着手

 日本人観光客数は06年実績で3万5000人ほど。欧米からの旅行者数と比べるとはるかに少ない。そこで新たなターゲットとするのが、シニア層。これまで「ハネムーン候補地」をウリにしてきたモルディブが、新たな観光客層をどう取り込んでゆけるか。日本向けの観光施策は転換期を迎えようとしている。

 そこで、「他の文化や歴史について学びたい」「現地の人々と交流したい」というシニア層の欲求に訴える施策を検討中だ。モルディブは従来、これまで欧米型リゾートに重きを置き、そうした文化学習の機会も、他の観光地と比べると少なかったが、今後は住居島の近くにリゾートを建設し、地元の人々との交流を積極的に推奨していく。また、仏教時代に建設された歴史的建造物の再建など、日本人観光客にアピールするような知的アクティビティの開拓に、力を注ぐ方針だ。

 モルディブ独自の文化というとなかなか容易に想像できないかもしれないが、探してみると意外と見つかる。廃れつつあるものの、伝統舞踊は若い世代に継承され、時折行われるカルチャーイベントで披露されるし、マーレ島のような大きな島では、現地の若い女性を対象にしたファッション・ブティックがあちこちに点在する。ここでは日本の着物のような晴れの日用の民族衣装「エド・ディル」をオーダーメイドすることが可能だ。インドやスリランカのサリーとはまったく違う独自の民族衣装は、旅のお土産としても人気が出そうだ。

 住んでいる現地の人には、あまりにも当たり前すぎて気付かないような些細な文化や週間に、日本人旅行者は敏感だ。そのとき、疑問に思ったことを解決してくれるガイドが必要とされる。日本人観光客のモルディブ熱の復活には、こうしたガイドの育成が必要だろう。モルディブ政府外務省の海外事業部部長フセイン・ニヤズ氏は、「我々の国にはまだまだ“発見”がある。他に類をみないユニークな文化がある」と強調、今後は豊かな文化を全面に押し出し、独自の観光プログラムを組んで、アピールしていく考えだ。