ユナイテッド航空 執行副社長兼最高顧客責任者 グラハム・アトキンソン氏
競争力強化の鍵はサービス−アッパークラスで米系NO1を目指す
ビジネスクラス以上の顧客が航空会社の収益基盤を支えている−。このような話は旅行業界の人であれば、頻繁に聞く話だ。航空各社がフリークエント・フライヤー・プログラム(FFP)を導入し、利用頻度の高い顧客向けにサービスを高めているが、ユナイテッド航空(UA)はビジネスクラス、ファーストクラスで新シートを導入し、ハード面でのサービス改善に着手した。UAがこのほど開催した顧客サービスに関する記者会見から、来日したChief Customer Officer(CCO)のグラハム・アトキンソン氏のことばをまとめた。
<ファースト、ビジネスクラスに新シートを導入する。その狙いについて>
チャプター11の脱却後、財政状況は堅調だ。私の役職である最高顧客責任者(CCO)は、UAで初めてのポジションだ。このところ、アメリカ系航空会社はアジア系とのサービス競争で弱いと感じる面が多い。特に、ビジネスで旅行をする人たちの多くの期待にどのように対応していくか、これは喫緊の課題だ。特に、アジア系航空会社はスターアライアンスに加盟するシンガポール航空(SQ)や全日空(NH)など、サービスでの高い評価を受けており、早々にも追いつきたいが、まずは「アメリカでNO1」を目指す。
ファーストクラスやビジネスクラスのサービスを重視するのは、この市場は大きくはないが、特に太平洋路線、南米路線はファーストクラスの需要が手堅くあり、興味深い市場だ。他社がファーストクラスのサービスを止めていることもあり、こうした需要をつかんでいくことも重要になる。
<収益性の高い顧客に対し、サービスを手厚くしていくのか>
収益構造からすると、アメリカ国内線において、8%のファーストクラス、ビジネスクラス、などプレミア以上の優良顧客が、全収益の36%を創出している。これはアジア太平洋路線においても、ほぼ同様のデータとなるだろう。
このため、プレミア以上の顧客に対し、地上にいるときから機内においてまで、一体的なサービス向上を図っている。例えば、全日空(NH)に協力した成田空港でのスターアライアンス・ターミナルはUAとしては最先端を行く、アライアンス共同のターミナルだ。ロビーには126台の自動チェックイン・カウンターがあり、サポートスタッフを配置している。日本発の旅客だけでなく、乗継客に対してもMCTが半分になるなど、機能の改善が進んだ。
UA独自のサービスとしては、プレミア以上の顧客に対して、優先搭乗サービスの方法を変更した。顧客からのアンケートで、初めに優先搭乗する時間以外について、エコノミークラスの乗客と共に列に並ぶことを改善して欲しいなどの要望が寄せられていたからだ。搭乗ゲートに赤じゅうたんを敷き、常に優先的に搭乗するだけでなく、気兼ねなく優先搭乗が出来るようにサービスを変えた。既にアメリカの主要ハブ空港で実施しており、好評を得ている。5月14日から成田空港でも同様のサービスを開始した。
<新シート導入のスケジュールについて>
今年10月には1号機へ導入する予定だ。その後は、ボーイング767型機、B777型機、B747型機のワイドボディ全97機に2年間をかけて導入していく。日本路線への投入時期は決定しておらず、各路線の重要性と機材繰りで決定していく。ただし、日本路線は重要度の高い路線にあるということは言えるだろう。
<新たなビジネス、ファーストクラスで提供するサービスについて>
新シートは機内で仕事、あるいは休息をとる際に、「快適性」が重要となる。出来る限り、顧客の声を取り入れて開発を進めた。また、機内体験を変えていくためには機内食も変えていく。アメリカでは有名シェフとのタイアップによるメニューを楽しんでいただいているが、日本線を含む太平洋線でも間もなく発表する予定だ。
機内食をサービスするスタッフに対しても、再トレーニングを実施した。食事そのものだけでなく、サービスのスタイルを含めた全体の雰囲気を向上させる狙いだ。もちろん、客室乗務員の接客態度を引き上げるだけでなく、顧客と接する職務に当たる全世界の地上スタッフや予約担当者を含む、全ての従業員のサービストレーニングを改めて実施した。
こうしたサービス向上は、今後も常に続けていかなければならない。4月から、顧客からのフィードバックをオンライン調査へと切り替えた。利用頻度の高いビジネス旅行者に、今後も利用をしていただけることが大きな狙いだ。
<サービス提供に関するオンライン調査について>
これまで紙で1日約750件の回答を集めていたが、オンライン調査に変更したことで、1日3500件と4倍から5倍の顧客の声を聴くことが出来ている。現在は搭乗券にURLを記載し、対象の顧客にアンケートに答えてもらう仕組みだ。
オンライン調査は2段階ある。まず、1分から2分程度で終わる6問の質問を用意している。これに加えて、細かい項目、さらにサービスに対する意見については7分から10分程度の質問を用意している。
UAからの質問だけでなく、顧客と双方向でのやり取りも重視する。顧客200名を選び、サービス、商品についてのコミュニケーションを図っている。特定の顧客を招待し、小グループで「チャット」することで、機内だけでなく、ラウンジをはじめとする地上のサービスなど、定型の質問以外にも意見を交換できる。
ビジネスクラス以上の顧客が航空会社の収益基盤を支えている−。このような話は旅行業界の人であれば、頻繁に聞く話だ。航空各社がフリークエント・フライヤー・プログラム(FFP)を導入し、利用頻度の高い顧客向けにサービスを高めているが、ユナイテッド航空(UA)はビジネスクラス、ファーストクラスで新シートを導入し、ハード面でのサービス改善に着手した。UAがこのほど開催した顧客サービスに関する記者会見から、来日したChief Customer Officer(CCO)のグラハム・アトキンソン氏のことばをまとめた。
<ファースト、ビジネスクラスに新シートを導入する。その狙いについて>
チャプター11の脱却後、財政状況は堅調だ。私の役職である最高顧客責任者(CCO)は、UAで初めてのポジションだ。このところ、アメリカ系航空会社はアジア系とのサービス競争で弱いと感じる面が多い。特に、ビジネスで旅行をする人たちの多くの期待にどのように対応していくか、これは喫緊の課題だ。特に、アジア系航空会社はスターアライアンスに加盟するシンガポール航空(SQ)や全日空(NH)など、サービスでの高い評価を受けており、早々にも追いつきたいが、まずは「アメリカでNO1」を目指す。
ファーストクラスやビジネスクラスのサービスを重視するのは、この市場は大きくはないが、特に太平洋路線、南米路線はファーストクラスの需要が手堅くあり、興味深い市場だ。他社がファーストクラスのサービスを止めていることもあり、こうした需要をつかんでいくことも重要になる。
<収益性の高い顧客に対し、サービスを手厚くしていくのか>
収益構造からすると、アメリカ国内線において、8%のファーストクラス、ビジネスクラス、などプレミア以上の優良顧客が、全収益の36%を創出している。これはアジア太平洋路線においても、ほぼ同様のデータとなるだろう。
このため、プレミア以上の顧客に対し、地上にいるときから機内においてまで、一体的なサービス向上を図っている。例えば、全日空(NH)に協力した成田空港でのスターアライアンス・ターミナルはUAとしては最先端を行く、アライアンス共同のターミナルだ。ロビーには126台の自動チェックイン・カウンターがあり、サポートスタッフを配置している。日本発の旅客だけでなく、乗継客に対してもMCTが半分になるなど、機能の改善が進んだ。
UA独自のサービスとしては、プレミア以上の顧客に対して、優先搭乗サービスの方法を変更した。顧客からのアンケートで、初めに優先搭乗する時間以外について、エコノミークラスの乗客と共に列に並ぶことを改善して欲しいなどの要望が寄せられていたからだ。搭乗ゲートに赤じゅうたんを敷き、常に優先的に搭乗するだけでなく、気兼ねなく優先搭乗が出来るようにサービスを変えた。既にアメリカの主要ハブ空港で実施しており、好評を得ている。5月14日から成田空港でも同様のサービスを開始した。
<新シート導入のスケジュールについて>
今年10月には1号機へ導入する予定だ。その後は、ボーイング767型機、B777型機、B747型機のワイドボディ全97機に2年間をかけて導入していく。日本路線への投入時期は決定しておらず、各路線の重要性と機材繰りで決定していく。ただし、日本路線は重要度の高い路線にあるということは言えるだろう。
<新たなビジネス、ファーストクラスで提供するサービスについて>
新シートは機内で仕事、あるいは休息をとる際に、「快適性」が重要となる。出来る限り、顧客の声を取り入れて開発を進めた。また、機内体験を変えていくためには機内食も変えていく。アメリカでは有名シェフとのタイアップによるメニューを楽しんでいただいているが、日本線を含む太平洋線でも間もなく発表する予定だ。
機内食をサービスするスタッフに対しても、再トレーニングを実施した。食事そのものだけでなく、サービスのスタイルを含めた全体の雰囲気を向上させる狙いだ。もちろん、客室乗務員の接客態度を引き上げるだけでなく、顧客と接する職務に当たる全世界の地上スタッフや予約担当者を含む、全ての従業員のサービストレーニングを改めて実施した。
こうしたサービス向上は、今後も常に続けていかなければならない。4月から、顧客からのフィードバックをオンライン調査へと切り替えた。利用頻度の高いビジネス旅行者に、今後も利用をしていただけることが大きな狙いだ。
<サービス提供に関するオンライン調査について>
これまで紙で1日約750件の回答を集めていたが、オンライン調査に変更したことで、1日3500件と4倍から5倍の顧客の声を聴くことが出来ている。現在は搭乗券にURLを記載し、対象の顧客にアンケートに答えてもらう仕組みだ。
オンライン調査は2段階ある。まず、1分から2分程度で終わる6問の質問を用意している。これに加えて、細かい項目、さらにサービスに対する意見については7分から10分程度の質問を用意している。
UAからの質問だけでなく、顧客と双方向でのやり取りも重視する。顧客200名を選び、サービス、商品についてのコミュニケーションを図っている。特定の顧客を招待し、小グループで「チャット」することで、機内だけでなく、ラウンジをはじめとする地上のサービスなど、定型の質問以外にも意見を交換できる。
<記者の感想>
全世界のマイレージプラス会員4000万人を抱えるユナイテッド航空。このうち、エリート
会員はアトキンソン氏がアメリカ路線の旅客と言及した概ね8%程度だろうか。高額を払う
人たちは、その要求するサービス水準も当然、高い。これに応えるサービスを常に追及し続
ける手段として、オンラインを使い、情報を得るスピードを高め、調査する個体数を増やす
手法は、今後のサービス向上にどのように反映されるか興味深い点だ。
ただし、残り92%のいわゆる「マス」の人たちはキャスティング・ボードを握っている。
この人たちがどう思うか、感じるか、は新しいサービスの評価を決める「口コミ」効果があ
る。「マス」にそっぽを向かれるサービスでは、将来のエリート会員は育たない。92%の人
たちに「憧れ」られるサービスであり、かつ体験していない間にも評判を高めるサービスと
なるか。今後、米系NO1のサービスを標榜できるか否か、分かれ道のひとつだ。(鈴木)
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