新春インタビュー:マリオット、セールスとオペレーション現場の連携を重視

 マリオット・インターナショナルは昨年12月、日本グローバルセールス・オフィス(GSO)の人事異動を行った。このGSO人事は特に、運営するホテルの現場、オーナー、そしてGSOの一体的なつながりを重視し、より効率的、かつ顧客対応を迅速化する組織へと変貌する体制作りの一環だ。マリオット・インターナショナル副社長アジア地区グローバルセールスの大隅ヴィクター氏に今回の人事の狙い、マリオットの日本での展開、今年の旅行動向の予測などを聞いた。

−今回の人事異動の狙いは

大隅ヴィクター氏(以下、大隅):マリオット・インターナショナルの本社で、グローバルセールスオフィス(GSO)を統括するのが、本社副社長のデイヴィッド・マリオットです。デイヴィッドはグローバルセールスと同時にフィールドセールスを担当しておりましたが、先ごろ、「フィールドセールス」を外しました。この意味するところは、現場、リージョナルセールス、マーケットと一体的にグローバルセールスという役割で統括するということです。

 マリオットがお客様と接する場面は、現場以外にも、GSO、各地域オフィスとあります。例えば、ある企業がGSOと契約する場合に、GSOを通さないと話しが出来ないといった閉塞的な動きから、三者の関係の連携を図り、縦割り組織で情報を伝達する組織から、横で連携する組織へと変更したのです。縦横に情報伝達する社内のコミュニケーションの向上を全社的に進めております。

 こうした中で、日本では現場のオペレーションとGSOを一体化し、ホテルのオーナーに対してもGSOがどのような活動をしているか、これまで以上に理解を得ていく考えです。これにより、「お客様」の対応力を上げ、組織運営をしていきます。



−マリオット組織から、今回の組織体系の具体的な例を教えていただけますか

大隅:マリオットは現在、約2800軒のホテルを世界各地で展開しております。このうち、アメリカのオーランドにはマリオット傘下の各種ブランドで展開するホテルが35軒あります。このうち、マネジメントホテルでは営業を一つとし、エリアでの競争に力を注ぐのではなく、お客様のニーズに合わせた設備、サービスを提供できるホテルを提案する形となっています。マリオット・インターナショナルでは、オーランドのような体制はまだ出来ておりませんが、お客様へできるだけ早い対応をする、という点では共通しています。


−セールス面でのメリットはどのような点にありますか

大隅:例えば、日本GSOのセールスはA旅行社を担当しております。これは地域毎の担当ではなく、アカウントで担当しております。この良い点は、旅行会社の担当の方が人事異動で、ヨーロッパからアジアへ異動された場合、弊社の担当者が変わることなく旅行会社の方とお話を進めることができます。また、法人ではある企業の窓口に対して、予約等での回答が円滑になります。

 組織改正において、会社の利便性を求める側面もあります。ヨーロッパで成功したモデルを日本に導入する例もこれまでありましたが、今回は本社で地域や文化を考慮しました。私が担当する「アジア地区グローバル・セールス(中国、香港、韓国、日本担当)」とした意図はサービス、価格など社内での決定をスムーズに進め、日本、アジア地域での情報のキャッチボールを円滑にし、各々の仕事の流れを良くする狙いがあります。


−「マリオット」旗艦ブランドの日本進出計画は

大隅:マリオット・インターナショナルは現在、マネジメント契約を増やしたいと考えています。一方、日本ではフランチャイズ方式での展開を望むニーズも多い。さらに、マリオット・リワード会員からの回答では高級志向が多くあること、日本インバウンドを意識したアメリカ市場に強いブランドということで「コートヤード」を望む声もあります。「マリオット」、「JWマリオット」の展開も良いのですが、「コートヤード」の展開も視野に入れていくようです。

 コートヤードは日本企業の出張需要でも利用されており、年々、その(利用価値、満足度など)ポジションは高くなってきています。


−リッツの東京での開業を前に予約センターを統合したが、今後の連携は

大隅:東京でのリッツの展開は、マリオットとしても非常に高い関心と期待があります。現在は3月30日の午前9時の開業を目指して、リッツのセールスオフィスなどを含めて活動しております。

 こうした中で、予約システムについてはマリオットと統合し、予約センターについても統合するプラス効果が大きいという判断から、昨年4月にマリオットとリッツの予約センターが統合しております。

 ただし、お客様への対応を維持する観点から、「リッツ」のスタンダードを満たしていなければいけません。こうした点からリッツへの電話を取るスタッフは既にそのカスタマー・サービスのスタンダードを満たしたスタッフが対応しております。

 これらのシステム上の効率性を追求する動きに加え、セールス面ではマリオット日本GSOとリッツ東京オフィスが連携をしていきます。特に、マリオット側では「マリオット」「JWマリオット」ブランドとは違うものを求めるお客様に対して「リッツ」を提案し、これらをリッツ

 オーランド、ジャカルタではJWマリオットとリッツ、ベルリンではマリオットとリッツが互いに連携し、オペレーションを展開しております。さらに北京では今年、「リッツ・カールトン北京」と「JWマリオット・ホテル北京」が開業しますが、北京ではオーランドなどでの連携も期待されます。


−現在の需要動向、今年の見通しを教えてください

大隅:デスティネーションで需要動向の強弱はあるようです。これは概ね、旅行業界全体の動向と似たところがあります。このうち、レジャー需要では、沖縄のルネッサンス・リゾート・オキナワが好調であるほか、グアムの需要が回復、韓国も同様に客足が戻りつつあります。全体として近場のデスティネーションが好調のようです。

 企業のインセンティブ旅行についても沖縄が好調ですが、バンコク、香港などが同じ机の上で検討されるようになっており、企業側の考えが変わっていることを実感します。同時にこうした変化はマリオットとしてもうれしい変化です。同時に、こうした企業インセンティブ旅行において、日本企業であってもファミリー同伴ができる場合も多くなり、家族が「遊べる」デスティネーションとして、沖縄やグアムが検討されています。日本でもインセンティブ旅行がアメリカのスタイルに近くなっています。

 また、法人、レジャーともに好調なのが、中国です。こちらはお客様にオファーするものが多く、今後も期待できます。アメリカについては法人需要が戻って来ており、コンベンションの引き合いも多くなっています。アメリカについてはレジャーが鍵となるでしょう。今年は松坂選手がレッドソックスでプレーすることから、レジャー需要にも相乗効果が期待できます。


<過去のトップインタビューはこちら>