法律豆知識(102)、バゲージの紛失・盗難の責任範囲 〜IFTTA学会報告(3)
航空機に関するケースは、日本では多くないので、今回も参考までにハンガリーの先生が発表したケースを紹介しよう。今回は旅客の荷物の紛失・盗難のケースである。
<何が起きたか>
ヨーロッパでは、ダイバーに人気のあるエジプトのハルガダから、旅行者Aがブタペストへ帰国する時、空港でスーツケースが壊され、中の荷物が盗まれていることが判明した。盗まれた物の中には、新品のダイビング器具が含まれており、その金額は購入時のインボイスでは、約1800ユーロであった。
<処理経過>
航空会社は賠償をしたが、その額は380ユーロだけであった。その理由は航空券、および社内規則で賠償できる対象が限られており、対象となる物品で計算すると、この金額になるとのことであった。
しかし、依頼を受けたハンガリーの先生が調査をしたところ、リストではスポーツ製品なども対象になっており、Aの損害がリストから外れることがないことが確認できた。
また、The Schedule of EU Regulation 2027/97/EC(EU Regulation 889/2002/ECで修正)によれば、預けた荷物(Checked Baggage)については、航空会社は無過失でも、バッゲージに欠陥がない限り、最大1000SDR(IMFの特別引出権)の補償をしなければならないことになっている。ただ、本件は搭乗後預けた荷物なので、Checked baggage と言えるかが問題になったが、ハンガリーの先生は乗客の支配を離れた以上は、航空会社が責任を持つべきだと主張した。
そして、本件はハンガリーの先生の努力で、裁判所外の交渉で航空会社にAの請求額満額を支払わせて解決したとのことである。
<何が問題か>
パッケージが壊れ、中味が盗まれるというケ−スは、海外旅行ではよく起こることである。しかしこの解決は結構難しい。本件も問題になったが、航空会社との旅客運送契約で、航空会社が一定の範囲で免責される特約がある場合、それが有効か否かどこまで有効かという問題がある。
共同運航や他の会社への乗り継ぎの場合などでは、責任関係が分散し、モントリオール協定26条ないし27条では明確な解答が得られない。また、ワルソー条約により、原告が裁判管轄として、運送人の住所地、運送人の主たる営業所の所在地、運送人が契約を締結した営業所の所在地、または到達地のいずれかを選択できることになっている。
しかし、航空会社が他社に運航を委託している場合や、他社便への乗継の場合などは、どこか管轄か判断が難しい。また、パッケ−ジの損壊や中味の盗難は、航空機外の空港敷地で発生することが多く、本来の責任者が不明のことも多い。旅行者にとっては、ことに外国の航空会社を利用した時には、管轄が外国となることが多く、この場合は当地の法律がまちまちであり、さらに対応が難しくなる。
これらの問題点については、私としても今後に備え解決方法をよく調査検討し、整理しておきたいと考えている。
=====< 法律豆知識 バックナンバー>=====
第101回 フライト・キャンセルからの紛争(2)
第100回 フライト・キャンセルから発展した紛争(1)
第99回 スキューバダイビング事故、旅行会社の責任を問う
第98回 スキューバダイビングでの溺死事故、ダイビングそのものに注意を
第97回 外国の弁護士事務所から訴状が送られてきた!!
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※本コーナーへのご意見等は編集部にお寄せ下さい。
編集部: editor@travel-vision-jp.com
執筆:金子博人弁護士[国際旅行法学会(IFTTA)理事、東京弁護士会所属]
ホームページ: http://www.kaneko-law-office.jp/
IFTTAサイト: http://www.ifta.org/
<何が起きたか>
ヨーロッパでは、ダイバーに人気のあるエジプトのハルガダから、旅行者Aがブタペストへ帰国する時、空港でスーツケースが壊され、中の荷物が盗まれていることが判明した。盗まれた物の中には、新品のダイビング器具が含まれており、その金額は購入時のインボイスでは、約1800ユーロであった。
<処理経過>
航空会社は賠償をしたが、その額は380ユーロだけであった。その理由は航空券、および社内規則で賠償できる対象が限られており、対象となる物品で計算すると、この金額になるとのことであった。
しかし、依頼を受けたハンガリーの先生が調査をしたところ、リストではスポーツ製品なども対象になっており、Aの損害がリストから外れることがないことが確認できた。
また、The Schedule of EU Regulation 2027/97/EC(EU Regulation 889/2002/ECで修正)によれば、預けた荷物(Checked Baggage)については、航空会社は無過失でも、バッゲージに欠陥がない限り、最大1000SDR(IMFの特別引出権)の補償をしなければならないことになっている。ただ、本件は搭乗後預けた荷物なので、Checked baggage と言えるかが問題になったが、ハンガリーの先生は乗客の支配を離れた以上は、航空会社が責任を持つべきだと主張した。
そして、本件はハンガリーの先生の努力で、裁判所外の交渉で航空会社にAの請求額満額を支払わせて解決したとのことである。
<何が問題か>
パッケージが壊れ、中味が盗まれるというケ−スは、海外旅行ではよく起こることである。しかしこの解決は結構難しい。本件も問題になったが、航空会社との旅客運送契約で、航空会社が一定の範囲で免責される特約がある場合、それが有効か否かどこまで有効かという問題がある。
共同運航や他の会社への乗り継ぎの場合などでは、責任関係が分散し、モントリオール協定26条ないし27条では明確な解答が得られない。また、ワルソー条約により、原告が裁判管轄として、運送人の住所地、運送人の主たる営業所の所在地、運送人が契約を締結した営業所の所在地、または到達地のいずれかを選択できることになっている。
しかし、航空会社が他社に運航を委託している場合や、他社便への乗継の場合などは、どこか管轄か判断が難しい。また、パッケ−ジの損壊や中味の盗難は、航空機外の空港敷地で発生することが多く、本来の責任者が不明のことも多い。旅行者にとっては、ことに外国の航空会社を利用した時には、管轄が外国となることが多く、この場合は当地の法律がまちまちであり、さらに対応が難しくなる。
これらの問題点については、私としても今後に備え解決方法をよく調査検討し、整理しておきたいと考えている。
=====< 法律豆知識 バックナンバー>=====
第101回 フライト・キャンセルからの紛争(2)
第100回 フライト・キャンセルから発展した紛争(1)
第99回 スキューバダイビング事故、旅行会社の責任を問う
第98回 スキューバダイビングでの溺死事故、ダイビングそのものに注意を
第97回 外国の弁護士事務所から訴状が送られてきた!!
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