成田・黒野氏、需要見通しを語る、旅行会社は09年の首都圏の需要約400万人増に向け中期的視野必要か

  • 2006年5月22日
 成田国際空港(NAA)代表取締役社長の黒野匡彦氏は2006年3月期連結決算の会見席上において、今後の需要見通し、国際線の動向について語った。2005年度の成田空港の発着枠の利用は年18.8万回、旅客数は年3033万7267人、このうち日本人は1904万5443人と、発着枠の伸びがないことには上限の20万回にほぼ近づいており、旅客面でもこれ以上の大きな伸びは期待できない。暫定平行滑走路については、国土交通省から北側に延伸することで2500メートル化を2009年ごろの完成を目途として動いており、NAAでは地元との協議で年22万回にまで伸ばしたい考え。
 また、成田の滑走路が完成する時期には羽田空港の国際化も予定されている。これについては定期便として年3万回程度の国際旅客便の発着回数となり、便数では1日あたり約41便の就航が可能となる。この便が現在のジャンボ機300人程度の場合、旅客需要としては1日約1万2000人、年間で最大438万人の需要が創出できる計算となる。

 旅行業界から見ても、05年度比で、成田の旅客数が450万人増の予測、羽田が最大でも400万人程度と、首都圏合計で850万人程度の旅客受け入れ機会が創出されることは魅力的だ。このうち、インバウンド施策が計画通りに進むとしても、概ね400万人から500万人程度のアウトバウンド需要獲得の機会が生まれ、中長期的な取組みに本腰を入れる時期が早々にきそうだ。

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 NAAの中期経営計画の需要予測では、2010年ごろに羽田国際化の影響を考慮し、成田空港では19.3万回、航空旅客数で3480万人を予測、旅客数では現在の10%増程度の旅客数の伸びを描いている。
 ただ、空港としての戦略について黒野氏は「上海、北京、仁川がライバル」と語るように、空港の国際的な競争の中で年22万回の上限となれば、世界のエアラインから魅力的な空港として捉えられないとの考えもある。これについて国に対しては、羽田、成田が国際線を「合理的にすみわけ」、成田が国際空港間の競争に生き残ると共に、航空各社の就航要望に対応する体制について示して欲しいとの要望がある。航空会社側でもヨーロッパ系の複数社をはじめ、日中航空交渉でも成田の発着枠が焦点となるなど、日本への就航の要望が高く、こうした要望にどのように対処するかの国の施策も大いなる焦点となる。