Black Tomatoが語る、日本ラグジュアリー市場の現在地──地方志向、富裕層ニーズ、そして日本の強みと課題
お客様が旅に何を求めているかを丁寧に紐解き、そこからひとりひとりのための旅程を仕立てる—そのアプローチでラグジュアリー旅行の世界に新しい潮流を作ってきたパイオニア、英国のBlack Tomato社。同社でシニア・プロダクト・マネージャーを務めるジェシカ・ウェルズ(Jessica Wells)氏に、日本という市場への向き合い方を聞いた。
ジェシカ・ウェルズ 氏(以下敬称略) 日本に関わるようになって9年になります。もともと幼少期をアジアで過ごした経験がベースにあり、そこに何度もの訪日を重ねて専門性を培ってきました。初めて日本を訪れたのは2007年、直近では2026年にも訪れています。日本にいないときも、現地のDMCやDMO、ホテルの方々と定期的に会話を重ね、日本に特化した業界イベントにも参加することで知識をアップデートし続けています。
ウェルズ 平均して年間およそ100件の旅程を日本向けに手掛けており、これは弊社が扱う全デスティネーションの中で2番目に多い数字です。典型的なお客様は米国の富裕層ファミリーで、全体の5割以上を占めます。日本旅程の平均予算はおよそ6万ポンドです。
ウェルズ すべての旅は、お客様との初回のご相談から始まります。まずはお電話でお話しする機会をいただき、旅の雰囲気をつかむようにしています。期間や時期、同行者といった基本的な情報だけでなく、そのお客様が本当に求めている体験は何か、何に興味をお持ちで、何がこの旅の動機になっているのかを深く理解することを大切にしています。そうして描いたお客様像をもとに、日本の現地パートナーとともにオーダーメイドの旅程を組み立て、お客様にご満足いただけるまで練り直していきます。ご予約が確定した後も、スパやレストランの予約といった追加の手配をできるだけ早い段階で進め、出発前には最終書類をお渡しし、旅程の内容を一緒に確認する『プレトリップコール』も実施しています。
ウェルズ 初回のご相談が終わり次第、できるだけ早いタイミングでパートナーに関わってもらい、旅程づくりに協力してもらいます。空き状況や現地事情について助言をもらうほか、彼らが把握している新しいアイデアを提案してもらうこともあります。日本については単独のDMC1社と組んでおり、それによってそのDMCが弊社のこともお客様のことも深く理解してくれるようになり、よりパーソナルなサービスにつながっていると感じています。旅程づくりはまさにパートナーシップで、お客様と目的地についての社内の知見と、パートナーの現地の知見とを丁寧にバランスさせながら組み立てています。
ウェルズ いくつもありますが、その中からいくつかご紹介します。あるお客様は冬に野沢温泉を訪れ、山伏文化を体験したいとおっしゃいました。通常は夏に地元の僧侶とともに行う瞑想的なハイキング体験があるのですが、雪が積もっていたため、かんじきを履いての体験に組み替えました。『あれは本当に魔法のような時間でした』とお客様も仰っていました。また、春に複数の世代が一堂に会して来日されたご家族には、そのうち何人かの誕生日をお祝いする機会として、鴨川沿いの静かな一角でサプライズの『桜ピクニック』を企画したこともあります。さらに、忍者文化に関心をお持ちの成人された兄弟には、瞑想や滝行、乗馬、剣術といったスキルを習得する5日間の本格的な忍者修行プログラムを組み、最後には認定式まで行いました。


