ハワイ市場、前年比8.6%増でもコロナ前遠く 観光地経営は地域還元型へ
©North Shore Huaka’i
「マラマハワイから考える、観光の未来」がまとめた「2026年上半期 ハワイ観光レポート」によると、日本市場からハワイへの渡航は回復基調を維持している一方、燃油サーチャージ上昇による旅行代金の高価格化が販売現場の課題となっている。こうしたなか、ハワイ側では観光客数を追う従来型の誘客から、地域・文化・自然に価値を残す観光地経営への転換が進んでいる。
日本市場は前年比増、ただしコロナ前回復にはなお距離
2026年1〜5月の日本からハワイへの渡航者数は28万4686人となり、前年同期比8.6%増となった。日本から米国全体への渡航者数は75万2685人で同5.4%増であり、ハワイは米国渡航全体を上回る伸びを示している。日本人の米国旅行先としてのハワイの存在感は依然として大きく、日本から米国を訪れた旅行者の約37.8%、およそ4割がハワイを訪問した計算である。日本は米国の訪問市場としても英国、ブラジル、インドに次ぐ第4位を維持している。
一方で、回復を楽観視するには早い。2026年5月単月の日本からハワイへの渡航者数は5万3051人で前年同月比15.6%増だったものの、2019年比では55.5%減にとどまる。ハワイ全体の5月渡航者数が2019年比5.7%減まで戻しているのに対し、日本市場の戻りはなお限定的である。日本人旅行者の71.0%がリピーターで、初訪問は29.0%であることからも、現在の需要はハワイへの親和性が高い層に支えられている面が強い。
燃油サーチャージ上昇、ハワイは「量」から「価値」へ
販売現場で最も重い課題となるのが、燃油サーチャージの上昇。JALのハワイ路線では、2026年1月の片道1万6000円から、7・8月には4万400円へ上昇した。年初比で約2.5倍の水準であり、ANA、JAL、デルタ航空(DL)、ハワイアン航空(HA)の4社は7・8月に片道4万400円で横並びとなった。往復では燃油サーチャージだけで8万円を超えるケースとなり、旅行代金全体に与える影響は小さくない。
そんななか、ハワイ側の観光政策は、観光客数の回復を追うだけの段階から、地域に残る価値を重視する方向へ明確に動いている。象徴的なのが2026年1月に施行されたGreen Fee。宿泊税を0.75%引き上げ、税率は11%となった。年間約1億ドル規模の財源を見込み、海岸浸食対策、サンゴ礁や海洋生態系の保全、森林保護、山火事対策、気候変動への適応インフラ、持続可能な観光施策に充てる方針だ。
DMAP(観光地経営アクションプラン)も同じ流れにある。2026〜2028年版の策定に向け、30回以上の住民対話を踏まえ、オーバーツーリズム対策、文化資源保護、自然環境保全、地域住民との共生を島別戦略として整理している。これは単なる観光振興計画ではなく、地域が望む観光のあり方を定義する計画となる。
コミュニティ主導型観光への投資拡大も注目される。ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)は2026年5月、マウイ島のNPO、地域団体、小規模事業者を対象にしたCommunity Tourism Collaborativesを開始し、ボランツーリズム、自然保全活動、地域体験商品の開発を支援している。さらに、自然保全と観光を結ぶKahu ʻĀinaプロジェクトでは約49万ドルを投じ、ワイピオ渓谷の伝統農業復元、乾燥林保全、海洋保護区管理、ハワイアンモンクシール保護など11の地域自然保全プロジェクトを支援する。観光予算がプロモーションだけでなく、観光資源そのものの維持管理へ向かっている点が注目だ。
オアフ島ノースショアでは、豪雨被害を受けた地域経済の復興支援として、2026年6月29日にNorth Shore Huakaʻiのシャトル運行が始まった。ワイキキやコオリナとハレイワ、ワイアルアを結ぶ90日間の実証事業で、往復5ドルの参加費に加え、対象店舗のレシート提示を復路乗車の条件とすることで、観光消費を地域に還元する仕組みとしている。
「マラマハワイから考える、観光の未来」は、ハワイが今後も選ばれ続けるためには、「なぜ今ハワイへ行くのか」という渡航動機を生み出す新たな価値の創出が重要だと指摘している。旅行コストが上昇するなか、再生型観光を基盤とした体験や地域ならではのプロダクトをどう旅行者に伝えるかは、商品造成や販売現場にとっても重要な課題となる。