AI時代の人材と人財-ベルトラ創業者 荒木篤実氏
日本の若い社会人世代、特に20代から30代の若手層で、ここ数年ヘッドハンターや転職エージェントに関わっている人が多くなったと感じている。一昔前は、これらの業界では、だいたい40代から50代のベテラン勢が、自らの社会人としての豊富な経験とネットワーク力を活かして、転職サポートをする例が多かったように記憶している。
それが、なぜ若者が転職業界そのものをリードするような業態に様変わりしたのか。そして、これからのAI時代には、どのような新しい変化があり得るのか、以下に考察してみたい。
まず、採用する企業側が、第二新卒と呼ばれる、ある程度のビジネス教育を前職で受けた世代(つまり20代後半から30代前半)の採用を定着させてきたという大前提がある。
一方で、これに対する新しい傾向として、若い世代の気持ちをわかるのは同じ世代層だという企業側の見立てから、若手中心のエージェントが幅を効かせるようになってきた、と私は見ている。実際、特に転職活動などしていなくても、Linkedin等を経由して、転職エージェントからのコンタクトを受けることは、さほど珍しいことでもない。そう感じる方も多いことだろう。これらデジタルツールの多様化は、それを使いこなせる若手層が活躍できる環境を増加させることにつながっている感もある。
タイムパフォーマンス、つまりタイパを考えれば、1件成約で30%以上の手数料が入るわけだから、年収1000万円クラスのベテラン人材のヘッドハントに成功すれば一発で300万円の獲得である。それは美味しい仕事ということになるのだろう。
ここで課題になるのが、AI時代の転職についてである。単純作業は、ほぼ人の手がいらない時代がもうほぼ目視でみえるレベルにまで来ている。プログラミング、画像・映像制作、経理作業等々、あらゆるジャンルで、これまで専門職といわれた領域でも、次第にある意味厳しい環境になってくるであろうことは、さほど想像に難くない。
その一方で、複合的、つまりマルチタレントな経験や能力を持つ人材が、これからはより脚光を浴びてくるような気がしている。この複合能力を、AIつまり機械が代替するには、機能を分解した上で、高次元でAIエージェントを設計・構築しなければならない。かなり難易度が高いタスクだ。ゆえに実現には、かなり高度な設計エンジニアの能力が必須となる。私の言葉でいえば、システム化の前に、その設計コンセプトそのものを、さらに一段階高いハイレベルで創造的に設計(デザイン)する力が要求される。なんとなく動くシステムは、より簡単に誰でも作れてしまうAI時代だからこそ、上流工程でのクリエイティビティの差が真の勝負の分かれ目となる、と考えられるのだ。
AI時代における事業展開の成否は、如何にして質の高い商品・サービスを、より少ない人数で、より早く実現できるか、にかかってくる。そのため転職業界にも同様のニーズが求められることになるだろう。
つまり、これまでのような、「人材」つまり人を機能別の能力で分類し、そのファンクションにおいて働いてもらうというよりも、AIが自律的にできない複合的な「マルチタスク」をAIよりも高い知的レベルで「価値創造」できる人に対して、圧倒的な企業側の需要がでてくると予想できる。つまり、「人材」ではなく「人財」の奪い合いというトレンドが、加速度的に進むことになるだろう。そうなった時には、いまの転職業界は、おそらくかなり大きく様変わりをする。以前のようなベテランの経験や真の人財を見抜く「眼力」が頼りにされる時代がくるように思う。
パクサヴィア創業パートナー。日産自動車勤務を経て、アラン(現ベルトラ)創業。18年1月から現職。ベンチャー経営とITマーケティングが専門。ITを道具に企業成長の本質を追求する投資家兼実業家。

