ヒルトン、日本で13軒の新規開業へ コンバージョンやドミナント展開軸に
(左から)ジョセフ・カイララ氏、藤本博久氏
ヒルトンは11日、メディアラウンドテーブルを開催し、今後の日本市場での開発計画とロイヤルティプログラムの強化方針などを発表した。来年以降全国で13軒の新規ホテルを開業する計画を示すとともに、会員プログラム「ヒルトン・オナーズ」を中心とした顧客基盤拡大が成長戦略の中核となることを強調した。ラグジュアリーやライフスタイル、幅広いブランドを軸に、地方リゾートから主要都市まで多層的な展開を進める方針だ。
今回にラウンドテーブルでは、日本・韓国・ミクロネシア地区代表のジョセフ・カイララ氏と、開発担当副社長の藤本博久氏が登壇。ヒルトンの日本市場における成長戦略が示された。現在ヒルトンは国内33軒・9ブランドを展開しており、加えて13軒の新規ホテル開業を予定している。
開発計画には、「コンラッド名古屋」(2026年)、「ヒルトン高山リゾート」(同年)、「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」(2027年)、「キャノピーbyヒルトン東京赤坂」(2028年)などが含まれる。北海道では「ヒルトン札幌パークホテル(仮称)」や「カサラ・ニセコビレッジ LXRホテルズ&リゾーツ」などリゾート案件も進行中だ。
今後の開発戦略について藤本氏は、特に既存ホテルのリブランド(コンバージョン)案件の拡大を重視すると話した。加えて、「アイコニック案件の獲得」「リゾート拡充」「ドミナント展開」「フランチャイズ」を強化する方針を示した。「ドミナント展開」は、既存拠点の周辺に異なるブランドを集中的に展開することで、営業・販売の効率化とブランド訴求力の強化を図る。
一方で、ブランド戦略に関してカイララ氏は「オーナーの多くはラグジュアリーを好む傾向にあり、新規案件もその方向が中心になっている」と説明した。その理由について「国内のオーナーだけでなく、海外からの旅行者もラグジュアリーブランドを好む傾向がある」と述べ、需要の動向を見極めながら開発を進めていることを明らかにした。
さらに、藤本氏はレベニューマネジメントの中枢を担う上海の分析センターについても触れ、同センターに参加するホテルではRevPAR(客室収益)が平均12.6ポイント向上したと説明。こうしたデータドリブンな運営体制が、オーナーにとっての収益性向上にも直結している。
今回の発表では「ヒルトン・オナーズ」戦略の進化にも重点が置かれた。会員数は世界で2億3500万人を突破し、会員の89%がダイレクトチャンネルで予約を行っている。また、藤本氏によると、同社の世界全体の宿泊者の6割強が会員で占められるという。
会員ランク最上位のダイヤモンドメンバーは、非会員顧客の約29倍の売上を生み出しており、リピーターの獲得がホテル経営に大きく寄与している。2026年には会員制度の刷新も予定されており、利用実績や滞在数に応じた新たなステータス制度が導入される見通しだ。
ヒルトンは今後も、ラグジュアリーからライフスタイル、リゾートまで多様なブランドを展開し、グローバルネットワークと会員基盤を活かして日本市場でのプレゼンスを一層強化していく構えだ。

