INFINIセミナー2025、創立35周年の節目にAI×GDSの構想明かす "NDC"に関するディスカッションも

  • 2025年10月5日

 セミナー後半では、「NDCの将来〜次世代流通規格〜」をテーマに、業界の主要プレーヤーによるパネルディスカッションが行われた。冒頭でインフィニは、今年6月までのNDC流通実績が前年年間実績の20倍に拡大していることを発表。そのうえで今回のパネルディスカッションは、同社が設定した設問に対し、登壇者が「晴れ」「曇り」「晴れと曇り両方」の札を挙げた後、それぞれの立場から見解を述べ合う形式で進行した。

【パネリスト】
• エヌオーイー(NOE)業務本部業務部部長 三井伸介氏
• エイチ・アイ・エス(HIS)海外旅行事業部航空管理グループグループリーダー 滝口朝洋氏
• エールフランス航空/KLMオランダ航空(AF/KL)日本・韓国・ニューカレドニア シニアフィールドプライサー 川中英二氏
• 全日本空輸(NH)CX推進室グローバルセールス部流通政策チームマネージャー 木村威啓氏
• インフィニトラベルインフォメーション 執行役員営業部長 井上浩二氏

日本マーケットにNDCは浸透する?

 まず「5年後に日本マーケットの流通の50パーセント以上がNDCになる」との問いでは滝口氏(HIS)のみが「曇り」を掲げた。その理由については「日本マーケット特有の商習慣は5年後も残る」と述べた上で、「社内システムの改修にも多くの時間とコストが必要になる」と指摘。ただし、同社としてはNDCの利用を進めており、「従来では表現できなかったNDC独特のプラスαが提供できることで、顧客体験価値を高められる」と期待感を示した。

 三井氏(NOE)は「50%に達するのは十分に可能」と発信。複数の外資系航空会社がすでにNDCを導入していることに加え、日系航空会社が本格的に動き出せば「レジャーマーケット以外でもどんどん浸透していくのでは」と前向きな見解を示した。

 一方、航空会社の立場から川中氏(AF/KL)は「既存のチャネルからの転換においては、多くの時間が求められる」としたうえで、NDCは単に価格競争力を向上させる手段ではなく、「より柔軟かつ付加価値の高い商品・サービスの提供を可能にして、航空業界の流通基盤そのものを次世代の形へと革新させる技術」として、NDC移行の意義を強調した。

 木村氏(NH)も「NDC拡大のための一丁目一番地は専用運賃」との認識を示し、同社でも準備を進めているとのこと。加えて、NDCの導入方法については慎重な議論が必要としたものの、サービスや顧客価値を的確に届けるためにも、「低空に留まるNDCの比率を今後一気に拡大していきたい」と発信した。

パネルディスカッションの様子

環境対応プログラムがNDC浸透の鍵に

 パネルディスカッション開催にあたりインフィニが事前に行ったアンケートによると、NDC導入の懸念点として、旅行会社からは「社内システムとの連携」、航空会社からは「手配の煩雑さ」が多数指摘された。社内システムとの連携の部分については、滝口氏(HIS)も同様に課題と感じていることを明かした上で、「社内システムと連携されていなくても、RPAなどを駆使して、なるべく人の手を介さず手配できる環境の構築を目指している」と述べた。

 導入における課題については承知した上で、「NDCを利用推進するにあたりアイディアがある」との問いには全員が「晴れ」を掲げた。一例として、三井氏(NOE)はビジネストラベルの観点から環境対応に関する特典を挙げた。

 これに対し木村氏(NH)は、他社によるNDC向けのSAFプログラムなどを例にあげながら、同社による環境対応プラグラムについては「現在検討中」とのこと。一方、川中氏(AF/KL)は「従来の流通システムでは、SAFはTAXの一部として課金され消費者が貢献意識を持つことが難しい」と述べ、「環境対応を組み合わせた商品設定および企業のサステナビリティ目標と連携させることで、ビジネストラベルにおいては強力な推進になるのでは」との見解を示した。

 また、木村氏(NH)はNDC推進においては"ユーザーフレンドリー"で使いやすいものであることが重要と指摘。川中氏(AF/KL)も「具体的なメリットを明確に提示していくことが今後必要不可欠」と賛同しており、「日系GDSのインフィニは顧客サービスの面で日本市場の特殊性を熟知している」として期待感を示した。

 井上氏(INFINI)も「旅行会社をどう介在して提供するかとの観点で私たちGDSの役目が出てくる」と語り、"導入障壁を下げる"ことに注力しているとの考え示した。また、NDCは非常にチャレンジングなものとしつつも、「和製GDSとしてシステムの導入やサービスを含め、旅行会社の運用を円滑に動かして、航空会社の様々なコンテンツを皆様にお届けしていきたい」とディスカッションを締めくくった。