JATA髙橋会長、海外旅行足踏みに「忸怩たる思い」、官民で復活実現へ-総会で重点施策など説明
日本旅行業協会(JATA)は6月18日に第69回定時総会を開催し、冒頭挨拶に立った会長の髙橋広行氏が現在のJATAの取り組みについて説明、海外旅行の回復へ意欲を語った。
髙橋氏は、「昨今の旅行業界は、一言で言うと活況という声が聞こえるようになってきた」とし、24年の外客数が過去最高となるなど絶好調の訪日に加え国内も消費額が従来の21兆円台から25兆円台へと大きく伸長し「極めて好調」と説明。その上で、足踏み状態が続く海外旅行について「毎年この場で今年こそは海外旅行の完全復活をと申し上げてきたが、実現には至らず忸怩たる思い」であるとし、業界側の自助努力とともに国や自治体への働きかけを通して復活をめざすと語った。
自助努力としては、2国間・地域間の交流活動促進や政府観光局などとの連携に力を入れ、台湾や韓国、香港、豪州などでJATA会員共同のオリジナルイベントも開催しているほか、今年3月に開始した「もっと!海外へ」のキャンペーンに合わせてJATAの海外旅行アンバサダーとして三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの岩田剛典さんも起用した。
岩田さんについて髙橋氏は、来場者を前に「誰かと思っている人もいるかも知れないが」と笑いを交えつつ「Instagramのフォロワー300万人超で男女問わず幅広い年齢層から大きな支持を集めている国民的タレント。元SMAPの木村拓哉さんと同水準のフォロワー数を誇る」と紹介。岩田さんとハワイで撮影した広告動画をJATAの公式YOUTUBEチャンネルで5月末に公開したところ、すでに50万回再生を突破。この動画素材も一定の条件付きながら会員各社が無償で利用可能としており、「店頭や商品説明会などで積極的に活用してほしい」と呼びかけた。
一方、髙橋氏が海外旅行復活に不可欠と語る「政治家や関係省庁、地方自治体などいわゆる公の力」を借りる取り組みでは、政府が策定を進めている2026年度から2030年度までの観光立国推進基本計画に対して提言書を作成。パスポート申請手数料の抜本的な見直しや、海外修学旅行や語学研修、国内での交流体験など国際交流の必修化をめざす。ここでは、旅行業のみの視点ではなく「社会的意義を伴った制度改正や支援策」であることを重視し、2030年訪日外客数6000万人の目標に向けて出国者数との均衡の取れた双方向交流が不可欠であること、また例えば国際交流の必修化では「未来の国際人を育て日本の競争力を底上げする」効果を訴えていく。
また、国内旅行でも長年の課題である平日旅行の促進では「ラーケーション」をJATAの各支部と全国旅行業協会(ANTA)、日観振が共同で47都道府県の知事宛に要請文を送付。愛知、茨城、熊本、山口、徳島、沖縄と少しずつ導入の動きが広がってきているところで、9月のツーリズムEXPOジャパン愛知・中部・北陸でも休み方改革をテーマに全国知事会とともにシンポジウムを開催予定という。
一方、訪日では白バス、白タク、宿泊の転売、空売りなどの不正行為の撲滅や不公正な競争環境の健全化を進めていく。また、高付加価値化の鍵を握るアドベンチャーツーリズムを中心としたガイドの育成や、JATA会員各社が訪日市場に参入しやすくなるような支援の獲得にも取り組む。
さらに、人材の獲得・育成では訪日消費額が輸出産業と比較すれば自動車に次ぐ第2位の規模となっていることなど、観光産業の果たす役割や経済効果、観光の価値を学校教育の段階から伝えていくことも提言に盛り込んだ。またJATAとしても、マイナビと提携した学生企画のオンラインコンテストを主催しているほか、合同インターンシップの受け入れ枠拡大や経験者採用サポートの充実もはかっていく。
このほか、コンプライアンス徹底の活動も継続。髙橋氏は「我々の事業活動の前提はコンプライアンス。日々のコンプライアンスの積み重ねが社会から信頼され応援される企業と業界を作り上げる」とし、集まった各社の幹部らに「先頭に立ってコンプライアンスを徹底してもらいたい」と呼びかけた。25年度の事業計画でも、各社担当者間の意見交換会や各社の取り組みの個別サポートなどを新規事業として加えている。
なお、提言について同じく挨拶に立った観光庁長官の秡川直也氏は、「素晴らしい内容が盛り沢山」「こういうものも盛り込んでいきながら次の計画をしっかり作って課題に取り組んでいきたい」と語った。