"感性"は育てられるのか?人を思いやる力が、職場を変えていく-縁多 日比野元哉氏
感性を育てる3つの職場づくりの工夫
感性は、マニュアルや業務指示だけでは育ちません。
以下の3つの工夫を取り入れることで、自然と「人の気持ちに目を向ける」空気が生まれます。
①「感じる機会」を習慣化する
朝礼で「昨日うれしかったことを1つ話す」、終礼で「お客様の表情から気づいたことを共有する」など、小さな対話の場が感性を磨く機会になります。
②「安心して話せる空気」をつくる
感情を話すには安心感が必要です。上司や先輩の「うん、そう感じたんだね」といった相づちが、信頼関係の土台を築きます。
③「観察する姿勢」を育成者が持つ
育てる側ほど「教えなければ」と気負いがちですが、本当に必要なのは、"評価"よりも"共に気づく"視点です。共に育つ関係こそ、感性が育つ最大の土壌です。
感性が育つと、現場はどう変わるのか?
ある温泉宿では、毎朝の打ち合わせで「ありがとう日報」という取り組みを行っています。その日、仲間に感じた「感謝」を一言伝えるだけのシンプルな習慣ですが、これがスタッフ同士の感受性を高め、相互理解を深めるきっかけになっています。
このような小さな工夫が、やがて現場全体の空気を変えていくのです。
- ●お客様への声かけのトーンがやわらかくなる
- ●仲間の小さな変化に気づけるようになる
- ●困っている人に自然と手を差し伸べられるようになる
数字には表れにくいけれど、「人の心に残る宿」には、こうした"空気"が流れています。
感性は、組織の文化をつくる
感性は、特別な才能ではありません。
それは「誰かを大切にしたい」という気持ちを出発点に、環境の中で静かに育まれていく"力"です。
宿泊業のように、「人と人との間に生まれる体験価値」を提供する現場だからこそ、私たちはもっと「心の受信力」を育てる人づくり・職場づくりに取り組んでいくべきなのではないでしょうか。
こうした"人を育てる土壌"の視点は、いま宿泊業界が直面している「人手不足」や「採用難」といった課題とも、深くつながっています。
次回はさらに踏み込んで、「なぜ宿泊業は人を惹きつけられなくなったのか?」というテーマで考えてみたいと思います。