タスマニアの視察旅行で思う国の成り立ち、国名「オーストラリア」の由来って?
世界遺産の大自然を気軽に体感できるリバークルーズ
ここからは視察を中心に。今回のハイライトは、ホバートから小型飛行機で1時間弱のストラーンから運航されるゴードン・リバー・クルーズだった。タスマニア原生地域として世界遺産登録されるエリアの一部、フランクリン=ゴードン・ワイルドリバー国立公園のゴードン川を、河口湾であるマッコーリー・ハーバーから半日かけて巡る。
ツアーは、まず湾と外海を隔てる湾口「地獄の門」へ。恐ろしげな名前は複雑な海流や浅瀬、幅の狭さによって船の航行が危険にさらされること、それと同時に地獄のような流刑地への入口でもあるというダブルミーニングで、ここにも受刑者たちの面影が。その後も州初の収監施設が作られたサラ島にガイド付きで上陸。レンガ積みが崩れた施設跡や、手入れされた芝生とその一歩奥で自然に還りつつある疎林という対比が「天空の城ラピュタ」の世界のような独特の雰囲気を醸し出し、不適切な気もするが楽しい。
続いて船は一路ゴードン川の上流へ。鬱蒼とした森林を左右に見ながら群青色の水面をすべるようにして向かうのは、多雨林の中に作られた遊歩道。タスマニアは世界一空気がきれいな場所と言われるが、商業船が立ち入れる川の最深部ということもあってかたしかに空気が驚異的な透明感。2.5メートルという年間降水量と冷温帯の気候がもたらす植生も独特で、歩いて深呼吸するだけで「タスマニアに来たぞ!」という興奮や達成感が湧き上がってくる。
「口福度」、ますます上昇中
最後に、冒頭で予告した美食体験を。それはシロッコ・サウスによる「Gourmet Foraging Tour and Feast」で、空港近くの松林できのこ狩りをしながら歩いた後、林のなかに立てられたテントでイタリア移民の子孫であるオーナーたちが手ずから6コースのランチを調理してくれ、ペアリングワインとともに出来立てにありつけるというもの。これがもう、本当に悶絶級の美味だった。
実のところ、タイミングが悪かったかきのこ狩りは不発で何も見つけられず。松の落葉に松ぼっくりがぽこぽこ落ちているばかりの林を歩いていた時は少々不安だったが、いざ食事が始まってみれば1皿目から文字通りの瞠目。
なにがすごいって、すべてタスマニア産の食材はあらかじめ揃えてくれているのだが、きのこ類を乾燥させたり乳酸発酵させたり、あるいは「自家製きのこのXO醤」なんて魅惑的な響きのものもあったりと保存性を高めながら旨味も増す工夫が満載。そして料理は派手さはないが真っ当なイタリアン、使用しているのは昔ながらの調味料のみ。そんなの美味しくないわけがないでしょう!
これまでのオーストラリアでのマイベスト美食体験は昨年のATEで参加したメルボルンのムール貝ツアーで、それも本当に素晴らしかったのにあっという間に更新されてしまった。

自分が発酵マニアの端くれなので過大評価している可能性も少しはあるけれど、欧米アジア各国から集まった参加者全員が我を忘れて頬張っていたのも確か。昨年も感じたが、人間は本当に美味しいものを目の前にした時には一様に興奮を隠せないものだと思う。
オーストラリアの食事に関してはコロナ禍でオージーが外に出られなくなって国内の料理のレベルが上がったという話をよく聞いてきたが、ここしばらくの実感としてたぶん誇張なくその通りな気がする。2014年に「美食大陸」のキャンペーンがあったけれど、今こそ第2弾の好機。そう思える体験だった。