訪日旅行者数は最速で1000万人突破、米政権動向「今後も注視」 観光庁秡川長官

観光庁の秡川直也長官

 観光庁の秡川直也長官は16日の定例会見で、3月の訪日外国人数が同月として過去最高を記録したことを明らかにするとともに、米国の政治動向による観光需要への影響などについて見解を示した。

 発表によると、3月の訪日外国人数は349万7600人(前年同月比113.5%)、出国日本人数は142万3400人(同116.7%)を記録。訪日外国人数の1〜3月累計では1053万人を突破し、過去最速のペースで1000万人を達成した。春の桜シーズンによる需要の高まりに加え、イスラム教の断食明け休暇にあたる地域からの旅行需要が加わったことが影響した。地域別では中国やインドネシア、中東地域などが前年同月から大きく数字を伸ばした。

2025年訪日外国人数・出国日本人数(前年比)
訪日外国人数出国日本人数
2024年2025年前年比2024年2025年前年比
1月2,688,4783,781,629140.7%838,581912,298108.8%
2月2,788,2243,258,100116.9%978,8841,181,062120.7%
3月3,081,7813,497,600113.5%1,219,7891,423,400116.7%
4月3,043,003888,767
5月3,040,294941,709
6月3,140,642930,229
7月3,292,6021,048,823
8月2,933,3811,437,126
9月2,872,4871,212,545
10月3,312,1931,148,502
11月3,187,1751,175,117
12月3,489,8001,187,207
1~3月8,558,48310,537,300123.1%3,037,2543,516,800115.8%
1~12月36,870,14813,007,282

出典:日本政府観光局(JNTO)

 インバウンドを巡っては、日本旅行業協会(JATA)が「訪日旅行の持続的発展にむけて」と題した提言を3月18日に行った。これに対し秡川長官は、「現場視点から非常にありがたい重要なご提案をいただいた。観光庁内で精査し実現可能なものから対応していく」と前向きな姿勢を示した。

 また、訪日旅行の拡大に伴い懸念されるオーバーツーリズムに関して。先月には、長崎県対馬市の神社が一部観光客による迷惑行為から、崇敬者以外の境内への立ち入りを禁止するといった動きも見られた。秡川長官は「今起きてる目の前の問題への対策と、中期的な取り組みの両方が重要」とした上で、中期的には特定の場所・時期への旅行需要の集中を分散するべく取り組みを進めるとした。

 今月8日にインドで開催された第4回日印観光協議会では、両国政府と観光業界関係者約50名が参加。コロナ禍を経て6年ぶりの開催となり、観光交流拡大に向けた方策について意見が交わされた。インド市場はインバウンド・アウトバウンドともにまだ規模は小さいものの、近年増加傾向にあることから「重要な市場の一つとして捉えたい」と強調した。

 加えて、米国におけるトランプ政権の動向に関連し、関税政策などが旅行市場に与える影響についても問われた秡川長官は、「現時点で旅行需要に影響が出ているという情報はない」とした上で、「今後も注視していく」との姿勢を示した。また、為替変動の影響についても同様で、「円安が消費額を押し上げている面はあるが、訪日旅行者数への影響は少ないのでは」との見方を示した。