DXで切り拓いた出張手配の未来-IACEトラベル西澤社長に聞く、上場の背景とBTM戦略の進化
2025年4月、株式会社IACEトラベルがスタンダード市場への上場を果たした。法人旅行に強みを持つ同社は、コロナ禍という未曽有の危機をきっかけに大胆な事業転換を図り、「Smart BTM」という独自のビジネストラベル管理(BTM)サービスで再成長を実現してきた。今回は代表取締役社長執行役員の西澤重治氏に、コロナ禍での経営判断、上場の背景と狙い、そして今後の展望について伺った。

西澤 重治 氏(以下敬称略) コロナ禍中は本当に厳しい状況でした。人の動きが止まり、出張も完全に止まりました。ただ、そのぶん考える時間が多く取れたのは事実で、従来のような労働集約型のビジネスモデルでは、コロナが収束しても成長が見込めないと判断しました。そこでDX化を決断し、2021年には『Smart BTM』をリリースしました。環境は厳しかったですが、あえてそこに投資を進めた結果、コロナ禍のなかでもDXに一気に舵を切ることができました。
その後、出張需要がレジャー需要に先んじて戻ってきて、2022年4~5月頃には月次で黒字化。2023年3月期には通期でも黒字を達成することができました。今振り返ると、コロナがあったからこそ、大きな経営の転換ができたと感じています。平常時だったらここまでの変化はできなかったかもしれません。
西澤 『Smart BTM』は、出張手配と管理を簡単に行えるクラウドサービスで、24時間365日対応のオンライン予約に加え、チャットや電話、メールなどで専任スタッフが対応するハイブリッド型のサービスです。航空券やホテル、JRの予約までオンラインで完結でき、現在では1,700社以上に導入いただいています。特にチャットサービスは、お客様から高い評価をいただいています。自動と有人の中間的な位置づけで、利便性と安心感のバランスが取れた対応ができるのがポイントです。
今後は、交通や宿泊に加えて、空港送迎などの商材も追加していきたいと考えています。お客様にとっての利便性がさらに高まると期待しています。ただ、『Smart BTM』の完成形にはおそらく一生到達しません。世の中の変化に柔軟に対応し続けていくことが必要だと思っています。
西澤 当社では、オフィスが全国に分散しており、かつては地域ごとの支店制を採用していましたが、コロナ禍を契機に「全国ワンチームオペレーション」へと体制を刷新しました。このような変化に対応するため、Smart BTMの開発では、支店ごとに異なっていた業務フローを見直し、全国共通で運用できるように業務プロセスの標準化を並行して進めました。そのため、現場の声を丁寧に吸い上げ仕様に反映させました。