DXで切り拓いた出張手配の未来-IACEトラベル西澤社長に聞く、上場の背景とBTM戦略の進化

西澤 得られる資本のうち、半分以上はシステム投資に充てる予定です。私たちは『VISION 2030』という中長期ビジョンを掲げており、『Smart BTM』を国内で最も利用されるBTMサービスに成長させることを目指しています。これまでBTM手配は内製していたり、手配システムを導入していなかった企業も多く存在します。しかし、一般企業でも人手不足が深刻化しており、そうした企業に向けてサービスを展開していくことが、我々の成長戦略です。旅行会社同士の顧客の奪い合いではなく、新規市場の開拓が鍵だと考えています。
導入時のコストが不要なため、企業にとってはまず使ってみようというハードルが低いのも強みです。ただ、せっかく導入しても利用されなければ意味がありません。そのため、私たちは営業スタッフによるフォロー体制を強化し、特にイレギュラー対応時にこそ、ハイブリッド型の価値を実感していただけると考えています。
導入企業の傾向としては中堅企業が多く、以前は製造業が中心でしたが、最近では業種も多様化しており、リスクヘッジの観点からも引き続き多様化を進めていきたいです。
西澤 今我々は企業様を主な顧客にしたBtoBビジネスを展開しているので、社会的な信頼性を得ることは非常に大きな意味を持ちます。今回、グロース市場ではなくスタンダード市場での上場を選択したのも、安定した企業として評価されたいという想いからです。
IPOの目的としては、社会的信頼性の獲得、システム投資資金の確保、そして社員が安心して働ける環境づくりの3つを掲げて準備を進めてきました。実際に社員からの評価も高まり、離職率もコロナ後は4%台にまで低下しています。
また、将来的にはM&Aの可能性も考えています。もし双方にとって有益なパートナーシップがあれば、前向きに検討していきたいと思っています。
西澤 海外拠点では現地に進出している日系企業との取引が中心です。一時的に関税問題などはありますが、今後も企業のグローバル化は進展するものと考えています。SmartBTMにおいて、現在は日本発の手配が中心ですが、将来的には海外発日本への出張需要も取り込みたいと考えており、今まで以上に連携しながら進めていければと考えています。
西澤 日本発の海外旅行が復活するには、まだ時間がかかると感じています。また、「旅行会社不要論」も各所で聞かれるようになってきました。私たちはリアルエージェントとして、今回の上場を通じてその存在意義を再認識していただけるような存在になりたいと思っています。実際、リアルエージェントという業態は株式市場でも評価されにくく、当社の説明にも苦労しました。ですが、それが逆に、我々が世の中に対して「旅行会社の価値」を示していく好機だと考えています。
『Smart BTM』のようなシステムを推進していることと、リアルエージェントの意義が矛盾して見えるかもしれませんが、人が担うべき部分は必ず残ると考えています。そこを効率化し、差別化するのが我々の戦略です。OTAとの差別化を図り、ヒューマンタッチな価値を大切にしていきたい。デジタル化が進み、いざというとき各種サプライヤーとの連絡が取りづらいといった状況の中で、私たちのようなハイブリッド型サービスが、お客様の不安を解消できる存在として評価されることを目指しています。これからもリアルエージェントの価値を証明し続けていきたいと思います。