旅館・ホテル業界が過去最高売上へ、労働力不足とデジタル化対応に懸念も

 帝国データバンクは、保有する企業信用調査報告書ファイルなどを基に、全国の「旅館・ホテル」業界の市場推移や企業動向について調査を行った。それによると、2024年度の国内旅館・ホテル市場は、事業者売上高ベースで5.5兆円に達し、過去最高を大幅に更新する見込みだ。これは、コロナの影響で落ち込んだ2020年度の1.8倍に相当し、訪日外国人観光客の増加や国内旅行支援策の効果が市場を押し上げた。

 全国約3400社の業績を基にした調査では、全体の約3割の企業が前年より増収となり、大都市圏を中心に宿泊需要の回復が進んだ。円安の影響で訪日外国人観光客の宿泊需要が高まり、ホテルの宿泊料金上昇も追い風となった。地方では国内旅行支援策による温泉地やリゾートホテルの回復が見られた。一方で、人手不足による稼働率低下や人件費・エネルギーコストの上昇が影響し、減収となる企業も増えた。

 都道府県別では、和歌山県が最も高い増収率を記録し、福岡県や長崎県など九州地方でも好調な企業が多かった。訪日外国人観光客の旺盛な宿泊需要に加え、大都市圏からの出張需要が稼働率を押し上げた。

 2025年度も市場は引き続き拡大が見込まれるが、労働力不足がより深刻化すると予想される。フロント業務や清掃スタッフ不足により、宿泊施設が十分な客室を提供できず、機会損失が発生するケースも懸念される。このため、外国人材の登用やデジタル化による業務効率化が今後の事業継続の鍵となりそうだ。