取引額4000億円を突破したTrip.comのライブコマース戦略、各事業者によるライブ配信や人材育成も

  • 2025年3月11日
Trip.com Groupサニー・スン副社長

 Trip.com Groupのサニー・スン副社長は6日、同社ホテル事業部が開催したパートナー感謝祭に伴い来日し、コロナ禍に開始したライブコマース事業について取材に応じた。

 同社は2020年3月にライブコマース事業を開始。当時、中国ではアパレルやコスメ分野での活用が一般的だったが、旅行販売に応用し、「旅行業界では当社が先駆けて実施してきた」(スン氏)と語る。同社のライブ配信では、ホテルやレジャー施設、クルーズといった幅広い旅行商品を取り扱い、累計取引額は200億人民元(約4065億円)に達した。現在も週1回のライブ配信を実施し、昨年8月にはバンコクにアジアライブストリーミングセンターを開設するなど、事業規模を拡大している。

 コロナ禍の事業開始当初は観光事業者への支援が目的の一つだったが、現在も認知度の低い地域への需要喚起に取り組んでいる。例えば、香港の知名度が低いエリアのホテルでは、周辺の飲食店とセットにしたクーポンを発行することで販売促進を図った。また、地方部のホテルと都市圏のホテルを同時に購入することでクーポンを提供する施策も実施し、オーバーツーリズム解消への貢献も目指している。

 スン氏はライブコマース事業について「この5年間で非常に成長が早く、ポテンシャルはまだまだある」と評価。同事業においては「パートナー企業の長期的な成長を支援することが重要」とし、各事業者が同社のプラットフォームを活用してライブ配信できる仕組みを整備。配信中の視聴者からのチャットによる質問にはAIが自動で回答するなど、ライブ配信の経験がない事業者でも利用しやすい環境を構築した。

 さらに、同社は中国でライブ配信者の育成にも取り組む。現地の専門学校などと提携し、ライブ配信における商品の宣伝方法を学ぶ講座を開設。あまりライブコマースが浸透していない日本の旅行業界とは対象的に、中国では人材育成を含めた様々な施策が展開されており、さらなる市場拡大を図っている。