【Founder’s Eye】別府観光の可能性と課題②
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これまでトラベルビジョンでも2回インタビューをさせて頂いた、べっぷ野上本館やKLASSO Tokyo Sumiyoshiなどを経営する元別府市議の野上泰⽣さんが、Facebookで興味深い提案を投稿されていましたので、ご本⼈の許可を得て、ここにご紹介します。
年間通して⽇本各地に出張し、地域によって様々な課題を⽬の当たりにします。外国⼈がこぞって訪れる有名観光地では地元住⺠の⽇々の⽣活への悪影響、地⽅においては⼈⼝減による空き家の増加や地域⾃体の衰退等々。
これらの課題の解決には様々な取組が必要で、効果が期待出来そうであれば、試してみる事が重要なのですが、そのトライを実情に即さない、過度に保守的な規制や法令が阻んでしまうと、いずれの課題解決も難しいと筆者は考えます。
広義での観光に関わる課題解決への提⾔をお持ちの読者の⽅は、是⾮編集部までご連絡下さい。
中⻑期滞在限定の住宅宿泊事業法の提案
- 世界には約3500万⼈のデジタルノマドが存在し、今後も増加が⾒込まれる。
- 現在、中⻑期の宿泊者は都市部に集中し、地⽅ではほとんど受け⼊れられていない。
- ⼀⽅、地⽅では空き家問題が深刻化しており、デジタルノマドを含む中⻑期滞在者を誘致することは地域活性化につながる。
- しかし、現⾏の住宅宿泊事業法(⺠泊新法)には、年間営業⽇数の制限や設備・管理の要件があり、地⽅では事業として成り⽴ちにくい。
- 中⻑期滞在者は、AirbnbやBooking.comなどの⼤⼿プラットフォームを利⽤するが、⽇本の独⾃サービスは市場規模が⼩さすぎるため競争⼒がない。
- これらのプラットフォームで集客するには旅館業法や住宅宿泊事業法の登録が必要だが、規制が厳しく地⽅の物件は市場に出にくい。
- また、⼤⼿プラットフォームに登録されている宿泊施設の多くは短期滞在向けで、⻑期滞在に適した広さや設備を備えた物件が少ない。
現状、特に地⽅では4の規制がボトルネックとなっている。⺠泊には安全⾯の理由もあり規制がかかっているが、実際には既存のホテル・旅館との競争を避けるための側⾯が強い。
【解決策】⻑期滞在限定の免許制度の導⼊
もし、⺠泊の営業を「5泊以上の⻑期滞在限定」とする免許制度を導⼊すれば、既存のホテル・旅館との市場競争を避けつつ、地⽅の宿泊市場を拡⼤できる。
地⽅には短期滞在者向けの宿泊施設は少なく、そもそも競争が発⽣しにくい(観光庁の宿泊旅⾏統計調査によると2024年10⽉の別府市における平均泊数は1.097泊、外国⼈旅⾏者に限定しても1.159泊)。最短宿泊⽇数の制限はシステムで管理可能であり、違反者には免許取り消しなどの罰則を設ければ対応できる。
この免許制度を導⼊し、管理要件や年間泊数制限を緩和すれば、地⽅の空き家所有者がAirbnbなどの国際的なマーケットに参⼊しやすくなり、世界3500万⼈のデジタルノマド市場にもアクセスできる。
【試算】別府での可能性
例えば、デジタルノマド3500万⼈の0.1%(3万5000⼈)が1か⽉間別府に滞在すると、
- 105万泊の需要が発⽣
- ⻑期滞在型の宿泊施設が年間200⽇稼働すると、
- 必要な物件数は5250軒(別府の空き家約1万軒の半数)
この規模には⾄らないにしても、戦略的に進めれば1000部屋程度の整備は現実的であり、常時1000⼈の新規滞在者がいる状態を⽣み出せる。これは地⽅⾃治体にとっても⼤きなメリットになる。
提⾔︓地域ごとの規制緩和を
この提案は別府市に限らず、他の地域でも応⽤可能だ。
「観光客ではなく、定住者に近い⻑期滞在者を誘致する」ことは、地域にとって持続可能で賢い施策となる。各⾃治体が独⾃の規制緩和を進め、デジタルノマド市場の取り込みに積極的に取り組むべきではないだろうか。
㈱エフネスを1990年に創業、2023年に一部の事業を上場会社へ譲渡、現在は同社の創業者・オーナーとして後方支援の傍ら企業・団体の役員、顧問を務める。
㈱アイユーアール・コーポレーション代表取締役/インターナショナルホスピタリティコネクションズ㈱取締役会長/一般社団法人 新観光創造連合会 (TIFS)代表理事・会長
その他複数の企業・団体に顧問として関与