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観光で地域を活性化するための道筋vol.2~観光地域マーケティングを成功に導くための糸口-デイアライブ 川口政樹氏

 観光を通じた地域活性化の取組を進めるうえで、「マーケティング」は避けて通れない課題です。ただ、自治体やDMOの現場からは、「観光地域マーケティングに取り組む必要性は理解しているものの、具体的に何からどう手をつけてよいか分からない…」という声がよく聞かれます。そこで今回は、観光地域マーケティングが難しい背景と、成功に導くための糸口を探ってみたいと思います。

観光地域マーケティングが難しい背景

 観光庁が公表している「観光地域づくり法人(DMO)による観光地域マーケティングガイドブック」において、「一般的なマーケティングと観光地域マーケティングとの違い」が5つの観点で整理されています。

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出典:観光庁「観光地域づくり法人(DMO)による観光地域マーケティングガイドブック

 このうち、「マーケティング活動の範囲」、「対象へのコントロールの難易度」、「ステークホルダーとの合意形成」、「マーケティング活動の流れ」において共通しているのは、「関係者が多く合意形成が難しいので、一般的なマーケティングよりもハードルが高い」という点です。

 「関係者との合意形成」は観光地域づくりでは重要なポイントとなるので、「DMO」形成・確立に係る手引きでは、DMOの5つの登録要件のうちの一つに、「観光地域づくり法人を中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意形成」を掲げており、次の①又は②のいずれかに該当すること、としています。

①取締役、理事など観光地域づくり法人の意思決定に関与できる立場で行政、文化、スポーツ、農林漁業、交通等の幅広い分野の関係団体の代表者が参画すること

②観光地域づくり法人が主導して行政や関係団体をメンバーとするワーキンググループなどの委員会等を設置すること

 つまり、DMOの意思決定プロセスにおいて、多様な関係者が参画している必要がある、ということですね。

 既に登録されているDMOは、理事会等で要件を満たす体制を整えており、形式的には合意形成をとる仕組みがつくられています。しかしながら、「国内DMOの課題把握調査(2023年)」では、「多様な関係者との調整に取り組むうえで抱えている課題」として「時間・労がかかる」、「合意形成が困難」との回答が多く寄せられ、その要因として「関係者が多すぎる」、「各関係者間で意が異なる・温度差がある」といった内容が挙げられていました。

 形式的な仕組みを整えるだけでは実際の合意形成が難しいメカニズムについて、マーケティングのフレームワークに当てはめて考えてみましょう。