観光で地域を活性化するための道筋vol.2~観光地域マーケティングを成功に導くための糸口-デイアライブ 川口政樹氏

■マイケル・ポーターの競争戦略

 戦略論の大家であるマイケル・ポーターは、どのようにして競争優位を築くのか、という観点で、4つの基本戦略を提唱しています。

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 地域全体のマーケティング戦略を立案する際には、「差別化集中戦略」を採用することが理にかなっています。他地域との差別化を図り、特定のターゲット層に集中することで比較優位性を確保するアプローチで、「高付加価値化」の流れにも合致していますね。

 一方、事業者レベルで考えると、個々の経営資源やブランド力が限定的であり、差別化が難しい場合が多いため、同地域内での相対優位性を確保するために「コスト集中戦略」をとりがちになります。

■3C分析

 同様に、環境分析のフレームワークである3C分析で、地域レベルと事業者レベルを比較してみましょう。

3C分析地域レベル事業者レベル
顧客:Customerエリア選択者(どこへ行くか)施設選択者(どこに泊まるか)
競合:Competitor他地域観光地(例:箱根vs熱海)同地域内競合(例:旅館Avs旅館B)
自社:Company地域資源全体(自然・文化・インフラ)自社リソース(施設・サービス・立地)

 地域レベルでは、地域間競争を勝ち抜くため、地域全体で付加価値を高めていく取組をしたいところですが、事業者レベルでは、地域内の同業他社が「競合」となるため、地域内のコスト競争が激化して価格が下落する、という矛盾が生じやすくなります。

 つまり、「観光地域マーケティング」においては、地域レベルと事業者レベルでマーケティングの視点が異なるため、構造的に合意形成が難しい状況にある、ということですね。