専門家と行く、スリランカ/ジェフリー・バワの旅に1人で参加して-MATCH 松宮英範氏

 MATCHの松宮英範です。旅行会社に26年勤めた後、脱サラ・起業し、旅行業3種と宿泊施設のプロデュースをやっております。今年もあと1ヶ月余りとなりました。

 今年はインバウンドが活況を呈し、日本人の国内旅行熱も深く、宿泊事業に関しては好況が続いています。先日発表された最新データである9月の宿泊統計も、単月で5407万人泊、 2019年同月比でプラス10.9%(前年同月比+3.6%)と、残暑厳しい中でも需要は伸び続けています。10月以降もどこの宿泊施設も賑わい絶好調だと聞こえてきてますし、当社運営施設も、11月12月も高稼働が続いています。

 一方、アウトバウンドは好調・不調のデスティネーションが分かれ、いまだ厳しい状況なのは読者の皆様が毎日感じられている通りです。

 当社も宿泊事業の活況のお陰もあり、海外旅行の取扱には力を入れにくい環境ですが、完全にマーケットから置いていかれないように、研修や勉強でキャッチアップに努めてはいます。そんな中で今年はスリランカ、韓国、台湾、モンゴル、クルーズと現地へ赴き、韓国やモンゴルの紀行文は、既にこちらの誌面でも掲載してきましたが、実は今年最も心に深く残った旅行先は、2月に訪れたスリランカです。

 こちらはかなり特殊な内容で、韓国やモンゴルでの体験とは異なる、いわゆる専門家の同行ツアーです。名著『アマン伝説』の著者で、箱根の富士屋ホテルの創業家一族としても有名な山口由美氏が企画・同行する旅行商品「熱帯建築家 ジェフリー・バワの美学にふれるスリランカの旅」、既に過去4回開催され、私は5回目に参加しました。そして先月、早くも6回目が催行されたという人気シリーズの旅です。

 世界中でお馴染みになったインフィニティプールは、もともとジェフリー・バワの発明で、今ではスリランカの旅行では必ずと言っていいほど「バワのホテルに泊まる」コンテンツが採用され、すっかりスリランカ観光のメジャー要素となっています。そのジェフリー・バワが注目されるきっかけとなったのは、山口先生の「熱帯建築家 ジェフリー・バワの冒険」(隈研吾・山口由美共著)であり、今年は発売9年目で増刷となるロングセラー本でもあります。

 バワ人気が高まる中、専門家ばかりの参加メンバーであろうSITツアーに参加したつもりですが、10名の参加メンバーの半分は私含めホテル関係やライターさんであったものの、残りの参加者の半分は専門家でも何でもない一般の人々で、ホテルや建築の勉強しにきた訳でもなく、通常の観光旅行と同じく純粋に旅を楽しみに来た方々であったことは、私には少なからず驚きでありました。

 今は、安価なツアーでも「バワのホテルに泊まる」として1~2泊するパッケージツアーもありますが、今回は全6泊バワのホテルに宿泊する上に、毎日2~3か所バワのホテルをインスペクションし、さらにバワの生家やレストランやショップまでバワ関連という徹底した内容で、私には参考になることばかりでしたが、一般の参加者の皆様も実に楽しそうに過ごされていました。ホテルの視察も疲れる様子もみせず、嬉々として部屋やパブリック・レストランなどをご覧になっていて、旅行会社以外の方でも楽しめる要素があるのか...という新鮮な発見でした。コロナ禍を経て、旅の楽しみ方が変わってきたひとつの現れだと思います。