星野リゾートが「自然観光」に注力、谷川岳で「山の再生」-JALと共同CPも

  • 2024年10月20日
星野氏

 星野リゾートが10月17日に開催した秋のオンラインプレス発表会で、同社代表の星野佳路氏はアドベンチャーツーリズムやエコツーリズムなどの「自然観光」への取り組みを強化する方針を示した。同氏は「(訪日観光客を)一部の都市から地方にいかに振るかは日本観光のテーマ。日本は文化観光は得意だが、苦手な自然観光を克服するのは重要な取り組み」と強調した。

 星野氏は、東京・京都・大阪・北海道・福岡に訪日客の約75%が集中している現状をあらためて説明。「日本はオーバーツーリズムというよりオーバーコンセントレーション(集中)が起きてしまっている」と語り、集中の一因としては文化観光が強い日本の特性を指摘した。そのうえで「カナダやスイスのように自然観光コンテンツを強くすると差別化になり、地方が自立できる観光の形になる」と持論を展開。「一企業が解決できる問題ではないが、各企業が始めることが大事」と話した。

 具体的には同社が2022年3月から実施する谷川岳での取り組みにおいて、登山以外の楽しみ方を新たな魅力として訴求する。星野氏は「谷川岳はこれまで中・上級者向けの山のイメージだったが、いかにマーケットを拾いターゲットを獲得するかが重要」と話し、登山以外のコンテンツを開発することで「山頂に向かわない、ハイキングからちょっとした山歩きをする人までターゲットを広げる」方針を説明した。

新しくロゴマークも作成した

 同社では12月から、谷川岳で運営する「⾕川岳ロープウェイ by 星野リゾート」と「谷川岳天神平スキー場 by 星野リゾート」について、「谷川岳ヨッホ by 星野リゾート」と「Mt.T(マウントティー)by 星野リゾート」に名称を変更する。「谷川岳ヨッホ」の「ヨッホ」はドイツ語で、山と山の間にあるくぼんだ地形「鞍部(あんぶ)」のこと。ロープウェイを上がった先の「天神平」エリアが谷川岳中腹の鞍部にあたることや、谷川岳に親しみを持ってほしいという考えから名付けた。星野氏は「鞍部で楽しめるコンテンツを目的にしてほしい、という概念の変化」と解説した。

 谷川岳ヨッホではロープウェイを登った景観のよい場所に展望台やカフェを設置。スニーカーで気軽に山歩きが楽しめる「虹さんぽロード」や、一ノ倉沢での電動アシスト付き自転車でのサイクリングなどのアクティビティを用意した。加えてレストランではオーダー後に焼き上げる山グルメ「谷川岳パングラタン」を提供する。

虹さんぽロード

 星野氏は「滞在するコンテンツをそろえるのが谷川岳ヨッホ。ロープウェイに乗るのが目的でなく、難しい山岳技術が必要な山頂に向かう方が行かないところを天神平に作った」と説明。首都圏から約2時間というアクセスのよさから訪日客の取り込みも見込んでおり、「訪日観光客の集中分散に大きな貢献ができるのでは」と期待を示した。

 一方で「Mt.T(マウントティー)by 星野リゾート」については、「パウダーゲレンデの聖地」として打ち出す方針。名称のわかりにくさから、訪日外国人に伝わりやすい「MT.T」という愛称のような簡易な名称にしたという。

Mt.Tのゲレンデ全景

 星野氏は四季があり多様な自然が楽しめる日本の自然観光のポテンシャルの高さを指摘したうえで、「訪日6000万人を目指すなら、(訪日客が集中する)東京・京都・大阪を増やすのは現実的でない。自然観光、特に山々での取組は重要」と強調。「上質な泊まる場所があり、日本の素晴らしい自然を体験できるということで、世界のネイチャリストが日本をめざしてもらえるようになれば」と話した。

 なお、星野リゾートは日本航空(JL)とのコラボレーションで、訪日観光客に向けた「王道vs穴場キャンペーン」を実施しているところ。「桜」「祭り」「紅葉」「雪」「自然・アクティビティ」のコンテンツを切り口に、「王道」観光地と、海外では認知度が低いものの素晴らしい観光コンテンツを有する、かつ星野リゾートの施設がある「穴場」を特設サイトや各社のオウンドメディアで紹介。インスタグラム等を活用したキャンペーンや情報発信を行っており、こうした取り組みでも自然観光をアピールする考えだ。