DMO、二重価格どう考える?観光庁観光地域振興部長に聞く地域観光の課題とこれから【対談】
篠原 実際に、同じ自治体が言葉を変えながら複数の事業に応募しているため、全体としての評価が相当複雑化している。
プレーヤーに関しては、DMOも順調に全国で数が伸びてきている。一方で、人材不足など機能不全の面もありテコ入れも必要な状況かと思われるが、どうお考えか。
長﨑 DMOに関しては、地域DMO、地域連携DMO、広域連携DMOで、それぞれの役割分担、位置付けが整理されており、形としては既に整ってきているものと理解している。
今後は、DMOに関しても数を追うのではなく、個々のDMOの機能が最大限発揮されているのかを見ていく段階に来ている。そういった中で、それぞれの役割に応じた適切な人材支援を行う必要がある。特定の地域の成功体験を参考にしながらアプローチを行うことも当然重要だが、その地域の実情に応じた人材の育成をどのように行うのかが非常に難しいところだ。
篠原 私も様々な地域からご相談をいただくが、やはり地域ごとに実情は異なる。ただ、特に感じるのは、観光産業全体として低い賃金水準の問題。これは先ほどお話しが出たように「稼ぐ力」の中で、 高単価でも消費に繋がるものを全体として増やしていかないと地域人材の給与は上がらない。
地域では、約300万円程の年収で皆さん頑張っておられる訳だが、これもやはり限界があるということはよく耳にしている。人材育成のためにはこちらの課題も今後対応の必要があるでしょう。
長﨑 仰る通りで、今後は「高付加価値化」と「高価格化」を同時に対応していく必要がある。高付加価値化には当然コストも手間も掛かるが、これまではその努力に対しお客様からの感謝のみで満足していたところがあるように思う。今後はしっかりと価格に反映していくことが重要だ。
そのための旗振り役がDMO。高付加価値化への取り組みとしては第1次産業や第2次産業含めたあらゆる地域の関係者を巻き込むことがポイントになるが、巻き込むためには関係者にとって当然プラスがなくてはならない。その取り組みを進めるためにDMOが非常に有効な存在となる。
篠原 DMOの財源としては宿泊税導入の議論も活発化しているが。
長﨑 宿泊税などの導入については、地域毎で議論を重ね判断をすべき問題だが、これは非常に健全なプロセスだ。宿泊税に限らず、オーバーツーリズムなど観光に関する諸問題については、それぞれで意見があろうかと思うが、議論の中で改めて地域において"観光"をどう活かすか考える良いキッカケ。是非議論を行い地域での観光の位置づけを明確にしていただきたい。
篠原 昨今では、訪日向けの二重価格の議論も出ているが見解は。
長﨑 私自身海外にいた経験で言うと、二重価格は必ずしも異質な取り組みではない。一方で、ポイントはそこに付加価値が存在するかどうか。
実際に二重価格を設定している海外の観光地では、外国人向けにガイドを配置するなどプラスαの価値があり、二重価格に対し違和感が生まれにくい。この議論においては価格に対して何をするのかをセットで考えていく必要がある。