海外&国内OTAの注目ポイントは?生成AIの活用はどうなった?-WiT Japan & North Asia 2024
5月13日・14日に開催された旅行テクノロジー業界の国際会議「WiT Japan & North Asia 2024」では、毎年恒例の海外・国内OTAのセッションがそれぞれ開催された。今回は2つのセッションから、各OTAの代表者が語ったトレンドについてまとめて紹介する。
インバウンドの地方訪問が増加傾向に、メタサーチ離れも
パネルディスカッションではまず、Lighthouse(旧OTA Insight)APACヴァイスプレジデント・セールス担当のクリスティン・タン氏が旅行市場の動向をフライトの検索データをもとに説明した。
同氏によると、コロナ禍の反動で2023年のフライト検索数はグローバルで30%増、アジア太平洋地域に限ると94%増加。2024年もグローバルで20%増、アジア太平洋地域で24%増で、なかでも日本は円安の影響もあり検索先のTOPとなっている。特にここ1年のフライト検索数を見ると長崎、福岡、広島などの主要都市以外の空港の検索が大幅に増えているという。
海外OTA3社についても、羽田や成田、関空以外の空港への検索が増えるとともに、地方の宿泊予約が増加傾向にあることを説明。加えてTrip.com Group APAC インターナショナルマーケット アシスタント・ヴァイスプレジデントのルー・イー氏は、旅行者の動きとして「メタサーチを経由せずプラットフォームでの直予約が増えてきている」と説明した。Booking.com北アジアリージョナルディレクターの竹村章美氏も「40%の消費者はエアーとホテルを同時に予約しており、重要なトレンド。1つのプラットフォームで(全てに)接続できるようにすることは大切なこと」と指摘した。
加えて、イー氏はAIアシスタントの利用が増えていることにも言及。「知名度が高まりお客さまからも受け入れられてきた。AIアシスタントがいろいろな質問を受け取れるようになったこともあり、旅行を計画するユーザも増えてきている」と語った。
ホテル需要の多様化、民泊をはじめとする「ホテル以外」に注目集まる
インバウンドのホテル需要については、Booking.comの竹村氏は大分や飛騨などの地方が検索の伸び率で上位にあがってきたことを説明し、「需要が変化してきており、『多様な体験をしたい』というニーズに我々は注目すべきではないか」とコメント。需要の多様化を受け、旅行者のアイデンティティに注目してサービスすべきとした。
同氏は例としてLGBTQ+をあげ、Booking.comとして宿泊施設向けにオンライン研修プログラム「Travel Proud」を提供していることを紹介した。Booking.comでは2021年から英語等の言語でプログラムを提供しており、今年4月には日本語版の提供を開始している。
一方、Agoda 北アジア統括 アソシエイトヴァイスプレジデントの大尾嘉宏人氏は温泉に注目していることを説明。「温泉のような、大都市に近くないところが韓国や台湾、タイ、ベトナムからの訪日旅行者でかなり伸びている」と話した。
Trip.comのイー氏も旅行者はホテルだけではなく旅先の経験を重視する傾向にあるとし、Trip.comでも特徴のある宿泊施設を集め、施設内のスパやアフタヌーンティなどの体験をセットにして販売する「ホテルプラスX」を販売したところ好調であることを説明した。
また、セッションではLighthouseのタン氏が、ホテルに加え、民泊やヴィラ、アパートメント、別荘にホステルにB&B、古民家などの多様な「代替宿泊施設」(Alternative Accommodation)の予約が好調に推移しており、稼働率の伸びホテルを上回っていることを指摘。デジタルノマドやリモートワーカーの増加により、短期レンタル(Short term rental)が増えていることを説明した。
これに対し、Agodaの大尾嘉氏もインバウンドの滞在日数の増加について言及。明確ではないとしながらも、インバウンドの間で民泊等による短期レンタルが増え、1つの潮流になりつつあることを指摘した。
Booking.comの竹村氏は同社が長期滞在の需要に応え予約可能な宿泊日数を最大90日まで拡大したことについて、「働き方やライフスタイルの多様化したのでチャンスが出てきた」と話した。日本では代替宿泊施設が増加傾向にあり、特に民泊では「インバウンドの長期滞在のイメージがあったが、国内旅行者の需要も高まってきた。ホテルの価格高騰も理由で、旅行者は代替的な解決策を求めている」と説明した。
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