能登で生まれ育った観光事業経営者が考える、能登復興の在り方とは?- リバイタライザーズ 小田 與之彦 氏

  • 2024年2月19日
-北陸応援割についてはどのようにお考えですか。

小田 物理的に被害があったお宿ももちろんあります。しかしながら営業できる状態なのにキャンセルの影響を受けているお宿もたくさんあるので、北陸の需要が全てゼロになってしまうよりは、北陸応援割のような支援策はやっていただいた方がいいと考えます。

 和倉・輪島・能登は復興まで大変な時間がかかるので、どういう風に支援していくかは考える必要があります。例えば、現在は被害が少ないエリアを中心に、将来的には能登エリアを中心に支援するような二段階制にして、今できるところは期間限定であっても需要を喚起するようなことをやっていいと思います。

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石川県和倉温泉 1月3日の様子
-被害が深刻なエリアについて、今後はどのように見通されていますか。

小田 真水での大きな支援が入らないと厳しいというのが現状かと思います。コロナ禍で厳しい時期が続いた中では、PLベースで流動的な収入が消えてしまったため、そこを支える施策が必要でしたが、今はBS上の資産が棄損され、コロナ時の借入だけが残っている状態の会社が多いはずです。今後やり直すにしても二重の負担となり債務超過は避けられません。

 これは経営者の手腕だけで乗り越えられるものでは無く、経営責任に当たらない部分は債務の免除などをしてでも継続できる支援が必要なのではと考えます。現実的にはこのままではかなり厳しいので。

-支援の種類や時期、濃淡をよく見極める必要があるということですね。

小田 語弊はあるかもしれませんが、自身も能登出身なので敢えて言うとすれば、能登の過疎化も進んでおり、効率や日本全体の人口分布を考えても能登に手厚い支援を100%元に戻るまで継続し続けることは厳しいのではと感じています。能登が本当に残すべき価値のあるべき場所であるということを示せるような復興の在り方が求められます。

 例えば、能登半島は「能登の里山里海」として世界農業遺産に認定されています。元に戻すだけではなく、このような状況になったからこそ、本来の価値をどう残す・活かすか考えないといけないはずです。仮に経済合理性が劣ったとしてもなぜ残すべき、支援すべきなのかを発信しないといけないのです。

 しばらくは「可哀そう」という風潮が残るでしょうが、徐々に他の事象やエリアに目が移っていくのは必然です。いつまでも被災者のままではなく生活者そして事業者として立っていく覚悟が必要です。公的な支援やいわゆる「共助」ですが、早いうちに自助の努力をしなければいけなくなります。まだ目の前の景色が瓦礫の山である状態の方に言うのは酷だとはわかっていますが、一方では避けて通れない考え方でもあります。

-読者へメッセージをお願いします。

小田 観光事業者にも危険なエリア以外には積極的に足を運んで消費をしてほしいと考えます。また、能登には酒蔵がたくさんありますが、被害にあってしまった酒蔵も多いです。既に流通している地酒を消費することも立派な支援だと思いますので、ぜひお気に留めていただきたいです。

-ありがとうございました。