年間集客20万人、単なるウォーキングツアー?「街道歩き」が人気の理由とは-旅人企画 永島孝志氏

 コロナによる市場の変化や円安物価高の状況が続くなか、業界にとってはアドベンチャーツーリズムなどに見られるような高単価へのシフトが求められる。旅行会社へツアーの企画造成をメインとする旅人企画の永島孝志氏が手掛ける街道歩きは、2年半合計20回以上にも及ぶツアーだが、旅行会社を通し年間20万人の集客を達成した。大手によるダイナミックパッケージ(DP)が主流となる昨今で、パッケージツアー(PKG)や中小の生き残る道はなにか。永島氏にお話しを伺った。

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永島氏が手掛ける街道歩きには多くの参加者が集まる
-自己紹介をお願いします。

永島孝志氏(以下敬称略) 若い時から「旅行業の申し子」と自己紹介するぐらい旅行には縁があって、というのも生まれた1964年は東京オリンピック開催、東海道新幹線開業、海外渡航自由化と、業界にとって大きなニュース、変化があった年です。私自身は16歳で旅行会社に入ることを決意して、19歳で旅行業務取扱管理者を取り、20歳時点で47都道府県を制覇するぐらい学生時代からこの業界を目指す気持ちでそのまま新聞社系の旅行会社に就職しました。

 もともと新しいことをやるのが好きだったので色々な挑戦をしてきましたが、2005年から旅行会社へ旅行商品を提供する事業を開始しました。当初は旅行会社側の立場から商品を企画していましたが、旅行会社主導の場合はどうしても簡素化や合理化、値段の勝負に陥りやすい。そうなると観光地の本当に良いところは出しにくくなります。特別感をしっかりと出しつつ可能な限り旅行会社が販売できるように、そのバランスが良いことが、うまくいった要因かと思います。

 以前は観光ツアーやイベントなども手掛けるなかで、2010年の旅人企画立ち上げ以降は地域と旅行会社の間に入る立場として、旅行会社への商品提供に特化しました。やっていくなかで人気となったのがウォーキングツアーなどのテーマのある旅で、大きな転機は2012年。熊野古道でのウォーキングツアーを手掛けていた当時、読売旅行から創業50周年を記念して東海道五三次の企画相談が入りました。京都~東京を2年半掛かりで歩くもので、似たような商品を展開していた旅行会社は幾つかありましたが歩く以外の楽しみはガイドの方の個人の能力に頼りっきりの状態で、ここの演出や仕掛けに改善の余地があると感じました。読売旅行がテストケースにはなったが結果的に900名ほどのお客さんが集まり、この実績のもと更に改善し商品形態をどんどん作りあげたのが旅人企画の柱になっています。

 また、旅行会社への商品提供の事業から派生して、着地型のコンサルタントも行っていて、行政、観光協会、旅館組合など、受けて側の相談を受けています。

-企画と販売が分かれているということですね。

永島 国内だとあまり見かけないかもしれませんが、海外旅行の場合はほとんどが分かれています。そう考えると国内でもこだわった商品は分かれていても全然不思議はないですし、着地側が企画することでより深い商品の造成ができると感じています。問題は着地側が販売可能な商品の企画のレベルに達しないことが多く、ここをクリアできたのが大きいです。

-街道歩きの商品は他にもあるのでしょうか。

永島 東海道含め五街道と言われる「中山道、甲州街道、奥州街道、日光街道」の街道歩きを取り扱っています。他にも、東北から九州まで、日本全国に街道は存在しますので、発地によって日数は日帰りもあれば、3泊4日など、様々なツアーを手掛けています。

-取引実績について教えてください。

永島 現状取引している旅行会社は30社ほどで、累計で言えば41都道府県100社近くにのぼります。傾向として、大手よりかは地元新聞社系やバス会社などの地域密着型の旅行会社との取り引きが多いです。安価な商品で大量集客よりかは、リピーターを増やしていくというやり方が私どもの趣旨とも合致します。

 また、旅行会社を通した取扱人数は2018年年間で、街道歩きだけで20万人ほどになります。