「徳島と共に歩む会社」を新たな社是に据え、人流の創造に取り組む―エアトラベル徳島 代表取締役社長 藤田純氏
藤田 双方向チャーターで、徳島から旅行に出かけてもらうと同時に徳島にも来てもらう。そういう発想でも取り組んでいます。コロナ禍中には航空会社も機材繰りに余裕があったこともありチャーターを組みやすい事情もありました。それで青森県の三八五観光さんと連携しJAL機材を使った双方向チャーターにチャレンジしたのが始まりです。
今年も同様にJAL機材の双方向チャーターをはじめ、FDA機材でのチャーター企画に注力しています。5月には双方向ではありませんが初めて富士山遊覧飛行を企画しました。富士山を遊覧するチャーター企画を立て、キャンセル待ちが大量に出るほどでした。7月には岩手と稚内、8月は釧路、11月には富山と五島列島の他に、山形県の山新観光さんと組んで徳島と山形の双方向チャーターを企画しています。
山新観光さんや三八五観光さんのように、同じ地域に根差した旅行会社として力を合わせてそれぞれの地域に送客し合う関係性を大切にしていきたいと思います。山形新聞社の子会社である山新観光さんとは、全国新聞旅行協議会のメンバーとしてもつながりがあります。こうした関係も生かしながら全国の地域で頑張っている旅行会社と手を組みながらお互いの地域の発展に貢献していければと考えています。
藤田 その通りです。ですから22年度に社是を改めました。それまでは「顧客感謝」を社是としてきましたが、その思いを大切にしながら、加えて地域に貢献し地域に必要とされる旅行会社でありたいとの思いを込めて「徳島と共に歩む会社」を新たな社是にしました。そのうえで経営理念として「人流をつくり、徳島への愛着を生む」ことを目標に掲げました。
理想を掲げるだけでなく具体的な取り組みも始めました。22年度には観光庁の「持続可能な観光推進モデル事業」内の取り組みである、持続可能な観光にかかる研修の受講等支援を希望する事業者に応募し、支援対象の全国10事業者のひとつに選ばれ、持続可能性を指標化した国際基準「GSTC」に沿った研修を、旅行部門の全社員で受講しました。
また23年度は徳島県上勝町で地域の伝統的なお茶「阿波晩茶」の歴史と独自製法を守る一般社団法人「上勝阿波晩茶協会」の取り組みにも参加しています。茶摘みから茶干しまで、阿波晩茶の製法を社員が体験し、地元の伝統について学び、感じることに取り組んでいます。こうした体験は、アイトリッパーにおける独自商品作りにもつながってくれると期待しています。
藤田 もう一つ挙げれば、我々もそうですが大手旅行会社を含めコロナ禍により県内の実店舗の閉鎖が増えているので、その代替手段の提供も地域の旅行会社の責任として取り組んでいます。店舗がなくなると、サイトをうまく活用できないお客様へのサポートが弱体化してしまうからです。そこでお客様を待つのではなく、お客様の元へ出掛けて行く移動店舗を用意しました。ワゴン車やトレーラーハウスを購入して始めた移動店舗「エアトラくる」がそれです。23年度はサッカーJ2の徳島ヴォルティスのホームゲームが開催された鳴門市のポカリスエットスタジアムにトレーラーハウスの「エアトラくる号」を派遣し、アウェーツアーの販売や予約申し込みを受け付けました。
藤田 先ほども申し上げましたが、それぞれの地域で頑張っている地場の旅行会社と連携していくことがお互いの会社と地域の利益につながっていくものだと考えています。山形や青森といった遠方の地域だけでなく、たとえば同じ四国の愛媛や高知などの旅行会社とも競争すべきは競争し、協力すべきは協力することで、四国エリアへの誘客をより強化することも可能だと思います。そうした意味でも全国新聞旅行協議会の仲間だけでなく、全国の地場の旅行会社との連携を深めていきたいと考えています。