【新企画】社長×若手社員座談会、第1弾は東武トップツアーズ【前編】
コロナ後の今こそ、経営者と現場社員が語り合う
途切れず採用を続けた理由とは
旅行市場に甚大な打撃を与え、また社会的にも働き方や価値観を大きく変えたコロナ禍が終わり、ようやく旅行観光産業も未来へ目を向けられるようになった。いつもであれば各社の社長にインタビューして経営戦略を聞いてまわるところで、それはそれで重要なのだがそもそも企業の未来は経営者と現場の従業員の力が合わさってこそ明るくなるもの。
そこで今回は新たな試みとして、自社や自分自身、そして業界の現在とこれからについて社長と若手社員から本音を聞き出す企画を立ててみた。第1回に協力してくれたのは東武トップツアーズで、代表取締役社長の百木田康二氏と入社3年目の若手5名が参集。コロナ禍でも途切れることなく新卒採用を続けた理由や旅行業の地位向上への取り組み、それぞれの立場から見た自社の強みや魅力などについて話を聞いた。
田中晴菜氏 東京法人西事業部(法人旅行営業)
石川珠里氏 横浜支店(法人旅行営業)
小松聖弥氏 さいたま支店(法人旅行営業)
山崎航史氏* 京都支店(教育旅行営業)
三井崇志氏* 高松支店(教育旅行営業)
*オンライン参加
TV編集部 皆さんは入社3年目ということですが百木田社長とこうして話すのは初めて?
若手一同 初めてではないですね。採用の時にも。
百木田 最終面接の時に出席するようにしているからね。副社長が出ている場合もあるので、この場の全員とは会っていないかもしれないけど、研修もあるし初めてではないね。
TV編集部 ということは社員の皆さんは緊張はしていない?
若手一同 緊張はしています(笑)
百木田 確かにいつもより全然硬い(笑)
社長の若手時代に興味津々
TV編集部 はじめに百木田社長の若手時代についてお聞きできますか?
百木田 商学部を出て簿記の資格を持っていたこともあって、本社経理部に配属されて最初は会社の支払いを本社からまとめて振り込む作業を担当した。3年目からは外国為替といって、海外への支払いについてドルやフランスフランなど色々な通貨で送金する仕事に携わった。
為替予約もしていて、例えば1ドル135円で100万ドルを予約すると、1億3500万円を特定日に支払わなければならない。一度押さえたら後戻りできない。今考えればそれを3年目にやらせるというのは恐ろしいことだよね。それに7年目からは子会社も含めたグループの連結決算を1人で担当していた。年末年始になると大きな電卓と紙の決算資料を抱えて、1週間以上缶詰になって作業していたよ。今では考えられないよね(笑)
若手時代の心構え
石川 若手社員だった頃はどのようなことを考えて仕事をされていましたか?今後ずっと続けていくのかとか、この仕事が向いているのかとか、色々あると思うのですが。
百木田 いい質問だね。若手のみんなに「入社後3年間はただがむしゃらにやってくれ」とよく言うけど、3年目で自分の仕事の本当に深いところまでは多分まだ分からない。私の場合は、まず3年間はとにかく与えられたものをやろうと思っていた。1年ごとに任される仕事が全く変わって、やったことのないことをどんどんやらされていた状況だったが、それでも無駄な仕事は無いと信じてやるようにしていた。結果としては一見無駄に見えた仕事であってもすべて何かしら後々の糧になっている。
一番辛かった経験は
TV編集部 一番大変だった経験とそれを乗り越えられた理由を教えてください。
百木田 入社10年目で経理部の次に赴任したハワイ駐在時代が一番辛かった。まず当時は英語が全然できないのに採用や人事評価、仕入れ交渉、日本へのタリフ発表も担当して、さらにお客様対応も。例えば冬だと4時には空港でお客様をお迎えしてから出社するような毎日。土日も無く勤務していた。
長時間労働でもやりがいはあったけど、大変だったのは9.11の発生後。現地から帰れなくなったお客様が多数いた。朝空港に行って日本のどこでもいいから帰れる便に乗せてもらえるよう航空会社に交渉するんだけど、それをすべての旅行会社が行う。他社よりは短かったが全員のご帰国に5日間もかかった。
また、9.11発生後は日本からお客様が来なくなり大赤字になった。65人いたスタッフを14人にまでレイオフすることになり、あれが一番堪えた。会社存続のためにはやるしかない状況ではあったけれど初めての経験だし、重い気持ちで臨んだ。どんなに嫌なことがあっても寝られる人間なのに、前日は寝られなかった。最後は残ったスタッフと一緒に会社を立て直して、ボーナスも出せるようになったけれども。
現場社員への注文
山崎 3年目に限らずに、今の社員に足りていないとお考えのことがあれば教えてください。
百木田 私は、昔の人のように背中を見て覚えろという時代ではまったくないと思っていて、デジタルスキルやソーシャルメディアの扱いなど、若い皆さんだからこそ持ちうる特性を活かしてもらいたいと思う。
一方、成功体験を求める人は多いが、失敗から学ぶというところは経験が薄い印象。失敗を恐れずチャレンジして、失敗して大きくなってほしい。自分の弱さを分かる人が一番強い。失敗しないほうがいいけど(笑)、そんな人はいない。