オンライントラベル業界の今年のキーワードは?AI、ダイバーシティにサステナビリティ-WiT Japan2023
海外OTAはダイバーシティやサステナビリティに注目
海外OTAのセッションでは、アゴダ、エクスペディア・グループ、ブッキング・ドットコム、旅行アプリ「ホッパー」を提供する米国OTAのホッパーが参加し、アジア市場のトレンドや今後のビジネス展開などを議論した。
エクスペディアグループバイスプレジデントのマイケル・ダイクス氏は「今後は人口動態がカギ」と強調。高齢化により旅行市場の縮小が進むなか「これまでサービスを受けられなかった人たちにサービスを提供する必要がある」と話し、LGBTQ、サステナビリティ、障がい者、高齢者などをキーワードとして挙げた。さらにそうした人々を「働き手としてどうサポートするのか」も重要とした。
ホッパーAPACジェネラルマネジャーのレノ・ワン氏は「モバイルシェア」を注目すべきトレンドとして挙げた。同氏はもともとモバイルが強い中国以外の北アジアについて、コロナ前よりもオンライン予約比率が高まっていることを改めて語り、「2025年までモバイルへのシフトは続き、最終的には52%の予約がモバイルになるのでは」との予測を示した。
ブッキング・ドットコム北アジア地区統括ディレクターの竹村章美氏はグランピングやキャンプなど自然の中でのアクティビティに人気が集まる傾向であることを指摘。さらに56%の日本人旅行者が「今後1年間において、よりサステナブルに旅行したい」と考えているという、同社の調査結果(7月10日発表)を紹介し、サステナブルツーリズムへの期待を語った。
アゴダ代表取締役アソシエイト・バイスプレジデント北アジア地区統括の大尾嘉宏人氏は訪日旅行のさらなる回復に期待を示した。中国からの訪日外国人旅行者についても、団体旅行が解禁すれば戻るとの考え(※編集部注:8月10日に解禁)。また、海外発海外の旅行先として「一番回復しているのは実は日本」とし、旅行先の上位を日本、韓国、台湾、香港の4市場で争っているとした。
訪日旅行が回復するなか、日本発のアウトバウンドについては遅れているところ。これに対しエクスペディア・ダイクス氏は「ホノルルやシンガポール、バンコクなどは回復しつつある。政府がアウトバウンドを奨励しているのは興味深く、期待している」と話した。その上でOTAができることとして「行き先で何がメリットか、得られるのか伝えるのが重要」とコメント。例としてインドを挙げ「日本人にとってはバックパッカーの場所のイメージがあるが、ラグジュアリーホテルも増えてきている。世の中が変わっているということを消費者に教えていく必要がある」と話した。
注目するテクノロジーはやはり「AI」、データの組み合わせに課題も
WiT創設者のイェオ・シュウ・フーン氏の「北アジアのブランドにとって大きく変わるテクノロジーは?」という質問には、ブッキング・ドットコム以外の3社が「AI」を選択。アゴダ・大尾嘉氏は「良いものがあればサービスが提供できる」、ホッパー・レノ氏も「AIの影響力は旅行にとって大きく、これまでできなかった経験が提供できる。旅行全体のビジョンを示すものになるのでは」とそれぞれ期待を示した。エクスペディア・ダイクス氏は「どれだけデータがあるかでAIの質が変わる。ホテルのプロダクトのバリエーションは非常に多く、そうしたデータをどう組み合わせられるかが課題」と話した。
一方、ブッキング・ドットコム・竹村氏は「サステナビリティ」をあげた。同社では2021年11月から「サステナブル・トラベル」プログラムを実施し、サステナブルな宿泊施設をマークで紹介するなどの取り組みを実施している。竹村氏は「自分自身が決断し、行き先を決め、よりよい世界を次世代に残したい、ということがサステナビリティ」と話し、「今後テクノロジーとしてどうなるのか期待がかかる」とコメントした。
フィンテックについては、各社とも旅行業界での参入が増えてきたとの認識を示した。ホッパー・レノ氏は「北米以外にもフィンテックを実施しているところが出てきた」と説明。エクスペディア・ダイクス氏は「支払方法もそうだが、最大限の柔軟性を顧客に提供することが必要」と話し、顧客に多様な選択肢を与える必要があるとした。