ドイツ【サステナブル・ワインツーリズム】視察②若きワインの造り手たちはブドウ造りも食やツーリズムへの取り組みも積極的

  • 2023年8月9日
干し草の敷かれたワイナリーにて、オーナーであるクリスチャン&ダイアナ・ザイツ氏。
ワイナリーにてリースリングのゼクトほか3種を試飲。300万年前は海だった土地のミネラルを感じる。
テイスティングルームの方は、モダンでこんなにお洒落。

 翌日、畑の間がハイキングコースにもなっているSTEIZ(ザイツ)のワイナリーへ。9割は自然保護区内にあって農薬散布が禁止されており、自然由来な石灰溶液を用い、ぶどうの房を手でほぐして病気を防ぐなど環境に優しいワイン栽培を行っている。ブドウ畑にはいろんな野草が育て、干し草を敷いて乾燥を防ぐ。

ずらりと並ぶステンレス樽の前で、土壌のミネラル感を重視したワイン造りをしているとヨハネス・ランドグラフ氏。
日本にも輸出されているJ²のピノ・ノワールの赤。果実味がしっかりしている。
石灰岩の石造りの家が並ぶダルスハイムの街を城壁が囲む。
フレッケンマウアーを背に9カ国から集まったジャーナリストとガイドの方と。




歴史を感じる新旧のワインプリンセス。ワインへの愛情は変わらない。



 次に訪れたのは、年間18万本を生産するBecker Landgraf(ベッカー・ランドグラフ)。醸造は、ステンレス樽がメインでGG(ドイツの高品質ワイン格付け)のワインのみオーク樽を使用。醸造所内は自然換気のみで17〜18℃。グリーンエコノミーの認証を受けている。

 午後は、フロースハイム・ダルスハイムに向かい中世の地方要塞であるフレッケンマウアーを訪れた。ご高齢のボランティアガイドの方が、一生懸命に英語でいろいろと解説してくださり、15世紀に石灰岩で建てられ、今も修復されて残る城壁や塔に登った。このガイドの方も若き日にはワインプリンセスを務め、ワイン造りをする人々が住まうこの街に住んでいる。中世の街並みと歴史の重みを感じるツアーだった。

テイスティングルームは来春オープンと、ワイン畑を前にダニエル・シュミット氏
日本にも輸出しているシュミットのすっきりしたリースリング。エチケットがアート感もある。
ディナーのメインは子羊のグリル。重たすぎずちょうどいいピノ・ノワール。

 最後に訪れたはオーガニックのShimitt (シュミット)ワイナリー。20haの畑でオーガニックとビオディナミでのナチュラルなワイン造りを行っている。オーナーであるダニエル・シュミット氏が来年に完成する増設の醸造所やテイスティングルームを見せてくれ、ダイアナ・シュミット氏がシェフを務めるレストランで夕食をとった。モダンな郷土料理・ジビエ料理が有名でこの日も満席。果実感のあるワインと料理はぴったりだった。

 今回のワイナリー視察では、醸造家たちは自然、土壌に愛情込めて取り組み、私たちへの英語でのプレゼンテーションやおもてなしが完璧だった。ドイツ・ワインインスティテュートからエスコートも来られていたが、一度も通訳してもらったことがなく、すべて英語だったのも印象的だ。「緑豊かな自然の中でサイクリングやカヌーでのんびり過ごし、ワイナリーでおいしいワインを楽しむ」そんなゆったりしたドイツ流のバカンスが魅力的だった。

取材協力/ドイツ・ワインインスティトゥート(DWI)
取材・文/小野アムスデン道子