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ドイツ【サステナブル・ワインツーリズム】視察②若きワインの造り手たちはブドウ造りも食やツーリズムへの取り組みも積極的

  • 2023年8月9日

 ドイツ・ワインインスティトゥートが実施したモーゼル地方とラインヘッセン地方の視察旅行レポートの後編。若きワインの造り手たちのサステナブルな取り組みや食や宿泊にも事業を広げる積極的な姿勢を紹介する。

ツァー・レーマーケルターは、1729年から続く家族経営のワインメイカー

 モーゼルの真ん中にある「Zur Römerkelter(ツァー・レーマーケルター)」は、前編に登場したDr.Frey と同じ1985年に設立されたビオ生産者団体のecovinに属している。1981年生まれの現オーナーのティモ・ディーンハルト氏が案内する畑は父親の代から除草剤の使用をしておらず、野生のハーブや花が咲いていた。この草花の覆いや藁を敷いて、畑の水を保つ。「よい土壌を保つことはよいワイン造りに直結する」と真剣な眼差しで語った。

ワイン畑の土壌を良好に保つためのサステナブルな取り組みについて語るティモ・ディーンハルト氏
生物多様性の象徴であるワイン畑に飛び交うミツバチをデザインしたエチケットも

 モーゼルでもう一軒訪れたワイナリーは、「Karp-Schreiber(カープ・シュライバー)」。モーゼル川での鯉の漁とブドウ栽培は伝統的なもの。1664年に遡るシュライバー家の伝統でもある。13代目のジュリアス・カープ氏は、ワイナリーでの生態系を保存するモーゼルプロジェクトに参画をしており、畑の中にトカゲやミツバチなどのためのベースを建てている。

ワイン畑にあるトカゲのための小屋の前で生態系保護について語るジュリアス・カープ氏
親が建てたワイン畑の中で休みをとるための小屋の壁にはミツバチの巣のためやトカゲのための穴が開けられ、自然と共存の小屋だ。
ワインの大学として知られるガイゼンハイム大学をでて、カリフォルニアやNZなどでワイン修行をしてきたジュリアス氏。

 この後、車で2時間ほどのラインヘッセン地方に移動し、ローマ時代からあるフロンハイムの街へ。ラインヘッセンは、ドイツのビオワイン発祥の地と言われ、ビオ生産者団体のecovin も1985年にこの地から始まっている。宿泊したホテル「Espenhof(エスペンホフ)」は、ワイナリーやレストランも持つエスペンシード家の経営。モダンで快適な棟とレストランを併設するトラディショナルな建物の棟に分かれている。

宿泊したエスペンホフの客室、城壁のような石造りのヘッドボード。ワイナリー経営らしい洒落たメッセージがガラスに。
ニコ・エスペンシード氏は、若いながらワイナリー以外にホテルやレストランも家族で経営している。
ニコ・エスペンシードの自然派スパークリングであるペット・ナット(1次発酵中に瓶詰め、残った糖分で瓶内発酵)。とてもフルーティかつ爽やか。

 17世紀からのワイナリー「Espenhof(エスペンホフ)」を継ぐ10代目当主でワインメーカーであるニコ・エスペンシード氏は、まだ20代の若さだが、ラインヘッセンの土地・土壌に深い愛情をもって、ブドウの個性を生かした洗練された味のワイン造りを行っている。ホテルやレストランもセンスがいい。畑のあるエスペンシードは、ドイツハイキング協会認定のハイキングコースの出発点にもなっている。

ドイツワインプリンセスは、ワインの知識やプレゼンテーションなどの審査を勝ち抜いて選出され、フルタイムで広報活動を行う。
ブドウの収穫車に乗って丘にのぼり、そこでワインを楽しむというアトラクションを楽しむ観光客
トゥルッロの向こうにワイン畑と風力発電も見えるのがサステナブルなこの地らしい

 ドイツワインプリンセスであるジュリアン・シェーファー氏に連れられて、ラインヘッセンの街、ブドウ畑、ハイキングトレイルが見渡せる絶景の丘へ。そこには、オリジナルは1756年に建てられた白いトゥルッロと呼ばれるワイン小屋がある。イタリアのプーリア州でよく見られる建物で、当時イタリアから来た労働者が悪天候の退避小屋として建てたものだそう。小さな窓なのに中はひんやりと過ごしやすい。

ホテルは別棟はモダンだが、こちらは昔からある建物でトラディショナル。夏は中庭のテーブルで。
La Roche(岩)という名のミネラル感あふれるリースリング。カリカリのポテト、スモークのトラウトにぴったり合う。

 夕食は、ニコ氏経営のホテル併設のワインレストランで。香りはふくよか、テイストはドライなリースリングからオレンジワイン、カベルネフランやシラーの赤まで次々にワインをペアリングで出してくれた。エスペンホフのワインは、葉山にあるナチュラルワインの店ami hayama が直に輸入している。そんなローカル同士の繋がりも面白く思った。