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ANAの国際線新会社「AirJapan」、来年2月から成田/バンコク線、豪州にも前向き

  • 2023年8月2日

 ANAグループでFSCとLCCの「いいとこ取り」のサービスで中距離国際線を中心とした事業展開を計画しているAirJapan(NQ)は8月2日に記者会見を開催し、初めての路線として来年2月9日に成田/バンコク線に就航することを発表した。

 使用機材は全席エコノミークラスで324席仕様のB787-8。日本発の火曜日、現地発の水曜日を除く週6便での就航で、機材の導入を待って2024年度中にデイリー化する計画。成田ではピーチアビエーション(MM)との接続の利便性も高い第1ターミナルを利用する。

 バンコクを最初の就航地としたことについてエアージャパン代表取締役社長の峯口秀喜氏は、旅客の7割をインバウンドと想定する事業計画に対してタイが親日国で経済成長も期待でき、2019年は国別で6位となる130万人超が訪れたことなどを理由として説明。また、日本からタイへの旅行需要が見込めることも挙げた。

 運賃は、7kgまでの機内持ち込みが可能な「SIMPLE」、座席指定と23kgまでの預け入れ荷物1個が付いて1500円割安になる「STANDARD」、さらにソフトドリンクが飲み放題になる前方座席を利用でき、預け入れ荷物が2個になって機内食も組み込んで3700円割安な「SELECTED」の3タイプを設定。バンコク線では、燃油サーチャージ込みでそれぞれ1万5500円から、1万9200円から、2万3800円からとした。運賃の水準としては、競合の動向を見ながらとなるものの「FSCとLCCの中間よりは下になるかもしれない」(峯口氏)という。

 すでに予約ページを開設して販売も開始。アンシラリーの料金は、例えば座席指定は最大6000円、手荷物は23kgまでの通常のものを航空券購入時に申し込めば3700円、購入後の追加は4200円、空港で申し込む場合は9200円などとしている。WiFiによるインターネット接続は有料で30分が6.95ドル、3時間が16.95ドル、最大24時間のフルフライトプランが21.95ドル。

 バンコク発についてはタイ当局の承認を得られ次第販売を始める計画で、今月末には現地で発表会を実施予定。マーケティングでは現地に進出している日本企業やタイ企業とのタイアップによる認知度向上や販売促進を積極的に進めていきたい考えで、これも月末には詳細を発表できる見通し。

 一方、販路については日本でも現地でも今のところはデジタル優先でウェブサイトでの直販を前提とし、旅行会社経由での流通は考慮していない。ただしメタサーチとの接続は年内を目標に取り組むほか、OTAでの販売は将来的な可能性として検討しているという。

機内食は13種類、「FSCのビジネスクラスにも引けを取らない」味に自信

 発表会では有料機内食のメニューも発表。客室乗務員8名を中心に企画・開発したもので、定番の日本食や地方の名物を取り上げる「日本を味わう」、SNS映えも意識した「日本のお弁当文化」、そして洋食やヴィーガンメニュー、ハラルなどの宗教対応食、軽食など多様なニーズに応える「Selectable」の3つのカテゴリーに分けて13種類を用意しており、事前購入時の料金は1400円から1600円を中心とした価格帯とした。

サステナビリティの観点から容器は紙製を採用

 峯口氏は、親子丼と寿司が個人的なお勧めとしたうえで特に寿司は「FSCのビジネスクラスにも引けを取らない」と自信を表明。そのうえで「食べた時に、日本の味なんだ、こんなに素晴らしいものが機内で提供できるんだ(と思っていただける)、そんなお食事をご提供する」とし、サービスや客室乗務員のユニフォームも含めて「乗った瞬間から日本を感じていただける」ことを競争上のポイントとして位置づけていると語った。

 このほか、機内で購入できる軽食や飲み物も「空の物産館」のコンセプトのもとで選んでおり、発表会では新潟県津南町で生産される雪下にんじんのジュースや千葉県香取市の焼き芋を紹介した。

「いいとこ取り」の真意は

 3月の発表時の記事では疑問視するコメントも複数あったFSCとLCCの「いいとこ取り」だが、峯口氏は改めて32インチのシートピッチと6インチのリクライニングをアピールしたほか、全日空(NH)の整備や運航の品質、さらにNH便も担当する客室乗務員によるサービスもポイントと説明。一方、燃油サーチャージを含めた運賃や運航スケジュールの設定などLCCの特徴も兼ね備えるとした。

運賃体系を説明する峯口氏

オーストラリアも選択肢、早ければ25年にも?

 今後については、「2024年に6機体制」と「2024年5月ごろに2号機を受納」が決まっているところで、路線展開については「色々な想定をしている」が決定した事柄はない段階。ただし、訪日旅客のニーズを考慮すれば関空からの路線開設も有力な選択肢との考え。

 このほかNQは可能性のある路線としてオセアニアを挙げていたが、峯口氏は具体的にはオーストラリアであると明言。実現するとすれば2026年、早ければ2025年の可能性もあるとのこと。広報担当によると具体的な路線まで検討している段階ではないが、B787-8で就航できてエコノミーのみ324席の仕様でも快適に過ごせる範囲の距離であること、そして十分なインバウンド需要が見込めることが条件という。

 なお、事業拡大に向けては、中途採用の開始も発表している。