じゃらんが掲げる「地域消費額増」に必要なものは?人材不足をどう解消する?-じゃらんフォーラムより

  • 2023年7月3日
都内のホテルでじゃらんフォーラムを実施

 リクルートはこのほど、都内で「じゃらんフォーラム2023」を開催した。登壇した旅行Division Division長の宮本賢一郎氏は「観光業界は最も生産性向上の必要が高い業界のひとつ。(じゃらんで)宿泊施設の皆様の根幹となる集客の手伝いをしているからこそ、集客以外の幅広い課題やニーズに対して応えられる」と語り、「観光業界の生産性向上の実現がじゃらんの役割」と改めて強調した。リクルートでは観光業界向けに業務・経営支援サービス「Airビジネスツールズ」を提供しているところ。同サービスは今年10周年で、サービスアカウントの累計は318万アカウントに及ぶという。

 宮本氏は「総地域消費額の増加」を目指すべきゴールとしたうえで、そのためには「魅力ある地域の仕事」と「観光経営の進化」の両輪が必要と指摘。そのための3つのポイントとして、「観光人材の安定確保」「DX化による生産性向上」「データに基づく消費機会の拡大」をあげ、「3本柱の取り組みでこれからの観光業界、日本全体をもっと元気にしていきたい」と意欲を示した。

 観光人材の安定確保については、地域における観光業界の仕事の魅力を高めれば人材が定着するとの考え。宮本氏は事例として三重県鳥羽市の取り組みを挙げた。

 鳥羽市では少子高齢化による人手不足で観光客が十分に受け入れられないことと、フルタイムの働き方を求める会社と短時間で働きたい主婦やシニア層の間のミスマッチが課題だった。そこでじゃらんが鳥羽市で実施したのは「業務の切り分け」。忙しい時間のチェックイン・アウトのみの仕事など短時間勤務を募集するともに「おしごとカタログ」を作成して仕事を紹介。求人を「Air WORK」でDX化し、業務の切り分けから募集まで一貫して取り組んだところ成果に繋がった。例えば土産物店の配達業務は採用活動を停止するほどの募集があったという。

 「DX化による生産性向上」については、人以外でも可能な仕事をデジタル化し、商品造成や接客などに人手を割くことが重要とした。宮本氏は事例として福岡県を中心にホテルを展開する「エフ・ジェイ ホテルズ」での取り組みを説明。レベニューアシスタントの導入と業務プロセス全体の見直しにより、従来の勘や経験に頼った属人的な客室の値付けが適正化し、利益率が高まり生産性の向上につながったという。さらにスタッフが顧客へのおもてなしなど、本来希望していた仕事に集中できるようになったことで従業員の満足度も向上。経営への情報連携もデジタル化されたことでスピーディな意思決定につながったという。

 宮本氏は「レベニューアシスタントの導入により、誰でも簡単に需要に合わせた売り方ができる。機能の提供開始以降申込施設は増えており、順次機能も拡充している」とアピール。今年の3月にはじゃらんnetのアクセス状況から需要の急増を検知し、価格設定に反映する機能も導入しており「じゃらんが提供しているからこそできる進化を続け、業界の進化に貢献していきたい」と話した。

 「データに基づく消費機会の拡大」については、神奈川県箱根町の「箱根DMO」の事例を紹介。箱根DMOではもともとデータを活用した意思決定をおこない、オーバーツーリズムによる交通渋滞に着目し、混雑・空き状況の可視化を実施してきた。今回は先々の観光需要の可視化による消費機会の拡大に取り組むため「過去のデータにじゃらんのオンハンドデータを掛け合わせ、未来の人流データを予測し、地域事業者に情報配信」したところ、データに基づき適切な人員配置が可能になるなどメリットがあったという。今後はじゃらんが包括連携協定を結んだ地域を中心に、地域で活用できるようなデータを収集・取りまとめることで「じゃらん版観光DX」を促進していく方針だ。

予約取扱額は好調、23年4月は過去最高の月間予約数に

リクルート旅行Division Division長の宮本賢一郎氏

 また、宮本氏はじゃらんnetの直近のデータについても公開した。同氏によれば2022年10月の全国旅行支援開始以降、「予約取扱額は2019年比で100%を大きく超える」状態で推移。2023年4月は月間予約数として、5月5日はデイリー実行取扱額として過去最高をそれぞれ記録している。同氏によれば、好調の理由は「じゃらんスペシャルWeek」をはじめとしたセールや、テレビCMなどによる認知度の向上という。

 さらに同社では会員制度のステージプログラムの特典を強化。これにより22年の予約回数は前年比20%増となり、23年5月の上位ステージ会員数は過去最高になった。今後は会員専用コンテンツのリリースや、会員個人の嗜好に合わせた提案などにより、さらなる旅行頻度増につなげたい考え。

 このほか「じゃらんパック」は全国旅行支援や長距離旅行の復活により、22年度はコロナ前の取扱額を超える結果に。「じゃらんコーポレートサービス」は、主張管理に意欲的な法人が増えたことなどで23年3月に導入企業数が2万3000社を突破し、月額人泊数は過去最高を記録した。出張管理強化の傾向は今後も続く予想だ。

 「じゃらんあそび体験」では、22年度には新たに3600施設が加わったほか、23年3月には月間予約数が過去最高を記録。今後は大型施設のさらなる掲載数増に注力するという。このほか、じゃらんレンタカーでは22年度年間取扱額が過去最高になり、グローバルでの集客サービスでは訪日市場が好調の中4月は人泊数が過去最高を記録したという。