【発行人コラム】足りないのは人手なのか、経営判断なのか

  • 2023年6月16日

 人手不足に関するニュースを見ない日は無く、あたかも観光産業(或いは他の産業においても)の最大課題と捉えられているように見えます。

 また、その解消方法に関しては、給与を含む待遇の改善を推す声が最も大きいようです。

 そもそもの違和感として、コロナ前あたりからメディアはAI失業を喧伝し、人々は仕事が無くなることに不安を感じていた一方、企業はDX等による「人手不要」の方向に向かっていたと認識しており、それがここまで変わるかとの思いが有ります。

 そもそも本当に人手不足なのでしょうか?

 これまでと同じ採用ターゲット、働かせ方を前提に採用活動をしても、競合と比べ給与を2倍にでもしない限り、多くの応募は期待できないのは、その通りでしょう。

 日本人で、若くて、XX在住で、賢くかつコミュニケーション能力が高くて、出来れば英語も喋れるとなお良し、そんな求職者は殆どいないし、まれにいても、4桁以下の年俸で採用出来るとは思いません。

 しかし、一方で諸外国には日本の観光産業で働きたいと思っている方は潜在的には沢山居られ、日本人でも65歳以上の方で働く意欲がある方も多く居られるはずです。

 企業が払える報酬の範囲で、意欲を持って働いて頂ける人に、どうすれば活躍して貰えるのか、そのために概念やルール、働き方を変える方がよっぽど現実的だと思えます。

 ホテル・旅館を例にとれば、お客様の6割以上が訪日外国人であるなら、その施設における日本語話者と英語話者の価値は逆転して然るべきでは無いでしょうか?

 また、一部の本当に質の良い滞在を提供する宿においては、稼働率6割でも利益が出る価格とし、稼働率6割を逆に売りに出来るのでは無いでしょうか?私なら、満室の宿に泊まりたいとは思いません。

 また、若い人の中にも色々な方がいるのと同じく、60~70代でも心身共にお元気で職能も意欲も高い人は居ます。更にはテレワークが浸透したことにより必ずしも出社が必須では無い職種、会社もあります。

 国籍や年齢、居住地等の制限を外し、外国人やベテラン、遠隔居住者の採用、気持ちよく働ける環境整備を経営者主導で組織を挙げて積極的に取り組むことによって、人手不足の一部でも解決できるなら、試してみない手は無いと思います。

 少々大げさかもしれませんが、日本で働いて下さる外国人が増えれば国家間の紛争の抑止力になり、65歳を越えて働いて下さるベテランが増えれば年金等における若年層の将来の負担も減らせる。まさに一石で何鳥にもなるのでは無いでしょうか。

岡田直樹

㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、33周年にあたる今年に至る。
観光産業を構成する中小及び個人事業主連合会(TIFS)会長​、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、㈱ハンディネットワーク インターナショナル顧問、㈱ティ・エス・ディ顧問