クルーズ=高い?広がらないクルーズ旅に「業界でインフルエンサーマーケティングの活用を」-CRUISE Ism代表 久野健吾氏

-立ち上げの経緯についてお聞かせください。

久野 以前からクルーズ旅は誤解されているという思いがあって、グローバル的にはクルーズは最もコスパの良い旅行と言われていて当たり前に旅行の選択肢に入ってくるのに対し、日本では「高い」という印象が先行してクルーズ人口は圧倒的に少ないのが現状です。

 クルーズは大きく分けると「カジュアル」「プレミアム」「ラグジュアリー」というカテゴリー分けがされているのですが、世間的にはラグジュアリー船のイメージがどうしても強くなっていると思います。実際にはラグジュアリー船は5%しかなくて、残りのプレミアムが10%、カジュアルが85%で、プレミアムとカジュアルは一般のお客様も充分旅行の選択肢に入れられるものだと思います。

 そういった「高い」というイメージを払拭しようと2年前に紹介制SNSのClubhouse(クラブハウス)やInstagramで情報発信を行うようになり、その中でホテルやエアライン、観光局などで積極的に行われているインフルエンサーマーケティングをクルーズでもやってみれば面白いのではないかと感じたのがきっかけです。

 クルーズ旅でインフルエンサーマーケティングを開始するにあたり最初は2021年2月にフッティルーテン社としてオーロラクルーズのアンバサダーを3名募集しました。募集はInstagram上から行ったのですが思ったより反響があって、熱いメールを何通もいただきました。応募者とやりとりをする中で「これは自分の会社だけでやるべきものではない」と感じまして、構想を立てて2021年4月にクルーズイズムとしてのアンバサダーを募集し始めました。

-フッティルーテンとしての立場がありながら、クルーズイズムを運営することは色々と難しくはないですか。

久野 当然立ち上げに際しフッティルーテン社に話しは通しました。クルーズイズムとしては他のクルーズ会社をPRすることになりますので。ただ、フッティルーテンは通常のクルーズ旅以外にもノルウェー政府との契約で人や物資を運ぶインフラとしての役割も果たしていて、半民半官とまでは言いませんがノルウェー政府からのバックアップもある少し特殊な会社で、完全に競合するクルーズ会社がいないという点で許可を取ることは比較的簡単でした。それにクルーズイズムの活動を通してクルーズ人口を増やしていくことは、中長期的にはフッティルーテンにも益になることです。

 もちろんクルーズイズムとしては各社平等にメリットが残るように中立的に活動していて、3月3日のキックオフイベントではあくまでも主催者として、イベント内で行われた商談会ではフッティルーテンとしてのブースは出しませんでした。一般社団法人化したのもあくまでも中立的に活動していくという意思として行った面があります。利益の使い方が変わってきますし、株式会社とするよりも響きとして各社へ与える印象は変わってくると思っています。

キックオフイベントでは業界関係者、旅インフルエンサーなど総勢74名が参加した。

 立ち上げ前には、あくまでも中立的な立場で活動し日本のクルーズ業界を応援したい、恩返しがしたいという思いで各クルーズ会社へもお話しをしました。ラグジュアリーカテゴリークルーズの富裕層に対しての訴求としてはインフルエンサーマーケティングは効果があまり見込めないのではないか、と言ったご意見もいただきましたが、活動としては多くの応援をいただき、個人的に出資すると仰っていただいたこともありました。また、富裕層の方から我々の活動を通して実際にクルーズ旅に興味をいただいたこともあり、インフルエンサーが発信する情報が富裕層の旅の選択肢にもクルーズ旅を提案することに貢献できていると実感しています。

-アンバサダー(インフルエンサー)の方々を集めるのは難しくなかったのでしょうか。

久野 登録アンバサダーはいただいた応募メールでの選考、その後面接選考などを経て任命し、利用規約を結ぶという流れなのですが、登録されたインフルエンサーの方がそのことをご自身のSNSで拡散していただけることが多いのでそこから自然と応募いただく方は増えていきました。

 そういった意味では選考する方が難しくて、単純にフォロワー数など数値だけでは測れないこともありますし、フォロワー数にしても登録段階でフォロワー数2000名程だった方が1年後には2万人を超えたということもありました。基本的には間口は広くという意識で選考は行っています。

 実際に登録されているインフルエンサーは様々な方が在籍していて、クルーズ会社は女子旅向けやファミリー向けなどそれぞれカラーも違いますので、そのカラーに合うような方をマッチングできるように努めています。

-案件自体はクルーズ会社かクルーズイズム、どちらが発端になるのでしょうか。

クルーズイズム ロゴ

久野 両方あります。第一弾の案件はロイヤル・カリビアン・インターナショナル総代理店のミキ・ツーリストさんからの依頼でした。昨年9月のシンガポール発着のクルーズだったのですが、当時は客室のキャパシティを抑えている関係で必ず25%の空きがありまして、その空室を活用してフリーキャビンを提供いただきました。フリーキャビンをいただいた後は登録アンバサダーに募集を掛けて、応募のあった方の中から選考を行ったという流れです。

 クルーズイズム側からスタートしたケースとしては、まだ実現までは至っていないのですが登録されているアンバサダーの中に女性誌のライターをやっている方がいて、その女性誌の方でクルーズ旅に関する記事を掲載したいということで、クルーズイズム側から協力いただけるクルーズ会社を探したということがありました。

 今後もクルーズ会社さんの方から依頼いただくのは嬉しいですが、クルーズイズムとしては積極的にクルーズ旅の情報発信を行っていきたいですので双方から進めていければと思っています。