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旅行会社として格好悪いなと思うこと-RT Collection 柴田真人氏

  • 2023年3月8日

 第27回目のコラムは「旅行会社として格好悪いなと思うこと」について書いていきます。

 桜シーズン直前となりました。訪日外国人観光客の取扱数も大幅に増え、都内の観光スポットにもたくさんの外国人観光客を目にするようになりました。肌感覚的にはお客さんが戻ってきたなという感じがしています。数が増えるに伴い、少ない人員で耐え凌いできたオペレーションにもミスが出始めたり、突発的なトラブルも発生するようになりました。旅行業の余裕のないピーク時期はこんなんだったなと懐かしくも感じています。

 先日、浅草の宿泊施設に泊まった際に女将さんと話をしたところ、旅行者が戻ってきたことはうれしい反面、客室清掃がマイナス人員で稼働率を100%にはできず、空室を残しておかないと万が一客室清掃のスタッフが欠勤したら客室が足りなくなるという不安や悩みが未だにあるとのことでした。またコロナ禍を経て街中のお店の様子もガラッと変わり、お土産屋が少なくなり、食べ歩きができるお店が増えたことで街中のゴミ問題や旅行者が食べ歩きの後の油の付いた手で他のお店の商品を触ってしまうという問題があるそうです。

 先月広島に出張に行った際も客室数が約500室ある大型ホテルのチェックインを担当するスタッフが2名しかおらず、チェックインに長蛇の列ができていました。どこもかしこも悩みの種は尽きないなという印象です。

 さて本題です。最近、旅行会社として格好悪いなと思うことがよくあります。

 訪日旅行の地上手配を請け負っていると、特にヨーロッパ方面から来日する旅行者は日本での滞在日数がとても長いです。2週間から3週間はもちろん、長いもので40日間くらいの滞在のものもあります。滞在中は日本国内を移動し、多いもので10~12都市ほど周遊する旅行者もいるほどです。会社勤めをしている私たち日本人にとっては1か月の休暇なんて夢のまた夢だなと思いながら、旅程の内容をうらやましく見ています。

 そんな滞在日数の長い旅程は、私たち旅行会社側にとっては手配するパーツが非常に多く、1件に掛ける時間も相当な時間になります。様々な運送や宿泊サービス、そして旅行関連サービスを手配することになりますが、未だにエクセルに参加者情報を入力して送らないといけないものやFAXで予約をしないといけないものが多々あります。先日、海外旅行専門店で働いていた人が転職で私たちの訪日旅行のオペレーションチームに入りましたが、「訪日旅行の手配は予想以上にアナログが多いね」とボソッと言ったほどです。そういったアナログの手配も早くオンライン化してくれればいいのにと思いつつ、それでも時間はかかりますが、旅行者が喜ぶ様子を想像しながら、日々訪日旅行の手配やオペレーションを行っています。

 滞在期間の長い訪日旅行の地上手配をしていると、手配の依頼を受けたものの中には、旅行者が来日するまでに手配の完了ができない旅行サービスが意外とあります。例えば、バスの乗車チケットやフェリーの乗船券、テーマパークや観光スポットの入場券などなど。例えば、40日間の長期滞在の場合、予約解禁日が利用日の30日前のものでも来日前に手配ができない可能性があります。来日するまでに手配ができないものはそもそも受けない方がよいという声があるかもしれませんが、単純な運送サービスや旅行関連サービスを旅行者が来日するまでに旅行会社が手配できないというのは格好悪いなと思うわけです。そして、単純な旅行関連サービスの依頼を受けたものを断るなんていうのはもっと格好悪いなと思うわけです。

 どうしても諸条件により手配ができないものやオペレーション上どうしても手配ができないもの、そもそも日本人の国内旅行者で潤っているから先々の日程は今販売する必要がないなど、事業者により事情はあるかもしれません。最終的には手配はできますが、やっぱり何か考えさせられるものがありますね。

 旅行関連サービスが多様化し、旅行会社の手配するものも多様化している一方で、旅行関連サービス自体が直販を重視していることが多くなり、旅行会社が手配し辛くなったものが徐々に増えてきているというのも同時に感じています。

 旅行者が旅行会社に手配を依頼した、旅行会社は手配ができないと回答、結果、旅行者は自分で手配した(手配ができた)、このようなループは旅行者心理として「旅行会社が手配できないってどういうこと・・・」というように旅行会社にとってはマイナスでしかないです。

 コロナ禍では旅行会社に手配をお願いしたら「安心」ということが再度注目を浴びているように、旅行の手配なら旅行会社にお願いしたらとにかく何でも手配できるから「安心」というのが、旅行会社の本来の格好良さだなと思う今日この頃です。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。