訪日旅行、人材不足が大きな課題、質と量のバランス重視を-JATA経営フォーラム
水際対策緩和で急増する訪日需要への対策急務
サステイナブル・アドベンチャーツーリズムで質の拡大を
アドベンチャートラベルに期待感、富裕層旅行も
パネルディスカッションでは、アドベンチャートラベルについても議論がなされた。平野氏は今年9月には国際組織・ATTA(Adventure Travel Trade Association)のサミットが北海道でリアルイベントとして初開催される予定であることに触れ、「日本をアドベンチャートラベルのデスティネーションとして認知してもらう絶好の機会」と期待を示した。
また、アドベンチャートラベルのポイントは参加者の消費単価の高さ。黒澤氏は「今後質的な面を高めるうえでしっかり取り組むことがとても重要。未成熟分野なので、今後広める上で何が必要なのか」問題を提起した。これに対し平野氏は「ラフティングのようなものであれば、旅行者の参加する力量、アクティビティにどれだけコミットできるか、楽しめるかを誰かが見極めないといけない。ガイドの質がツアーの質を決める」と語り、ガイドの育成が今後の課題であるとした。さらに、海外でアクティビティに参加する場合、アトラクションに参加しない家族などの同行者がゆっくりする場所があれば便利との声があるとし、「アドベンチャートラベルとすそ野の広い観光の提供の仕方、組み合わせが重要」と話した。
磯氏はバックカントリーでスキー楽しむことに人気が集まる一方、遭難事故が発生していることを指摘。「アドベンチャートラベルは危険と隣り合わせの部分もある。そこに精通し、知見を持ったガイドがいるのが最重要課題」と話した。これに対し中山氏が、観光庁が2021年にアドベンチャーツーリズム支援事業として助成金を設定していたことにふれ、「もう一度金銭面の負担をし、ネイチャーガイド育成でやっていただきたい」と要望。啓蒙のために、受入施設なども利用できる統一ロゴマークの設定も提案した。
このほか、JNTOがアドベンチャートラベルと並んで掲げる重点施策「高付加価値旅行」については、平野氏がバラエティのある観光素材の必要性を指摘。中山氏は顧客から国際空港での優先レーンの利用の要望が来ている旨を語り、「どんなに高くても使いたいという声がある。有料のハイエンド向け専用レーンを検討し始めていい時期では」と主張した。
オーバーツーリズムに懸念、質量のバランス重視で市場拡大へ
ディスカッションでは最後に、今後の訪日市場の量的・質的拡大について意見交換がなされた。磯氏はオーバーツーリズムの懸念があることから「質の高いお客様にたくさん来てもらうことが重要。戦略的に質と量のハイブリッドでバランスをとってプロモーションしていかなければならない」と語った。緒方氏は訪問先の地域を分散する必要があるとし、そのためには地域のコンテンツの磨き上げが重要とした。そのうえで「お客様が来ないと事業として成り立たなくなる。量と質を一緒に拡大することで地域の隠れた素材に人が来て分散できる」と話した。
最後に黒澤氏は取りまとめを実施。岸田総理大臣が昨年10月、旅行消費額の目標について「すみやかに5兆円達成をめざしてほしい」と語ったことに触れ、10月から12月の消費額をもとに計算すると、年に2360万人訪日すれば目標が達成できることを解説。中国の水際対策解禁のタイミングによるが、「ひょとしたら23、24年に達成する可能性もある」と話した。加えて「今後望まれるのは、2023年6000万人・15兆円の目標達成に向けてどう質と量のバランスをとって訪日拡大をするのか、どう計画を作るのか、ロードマップを作成しながら演繹的に考えていく必要がある。今回のディスカッションが始まりの一歩となれば」とまとめた。