英国が見すえるコロナ後の観光振興、業界連携で地方分散-戴冠式も追い風に

  • 2023年2月13日

 コロナ禍も終わろうとするなか、英国政府観光庁(VB)はこのほど「Showcase Britain」と題して日本を含む世界の約20ヶ国から120名超の旅行業とメディアの関係者を招待し現地視察旅行を実施。欧州ツアーオペレーター協会(ETOA)がVB、アイルランド政府観光局と共同で商談会も開催した。リカバリーに向けてVBが現状をどう分析し今後どのようにプロモーションを展開していく方針か。CEOのパトリシア・イェーツ氏へのインタビューを中心に伝える。

23年見通し、消費額は過去最高も

 イェーツ氏によると「今年は非常に強気な見通しを立てている」ところで、2023年の渡航者数はすでに2019年比15%増で推移している米国を筆頭にフランス、ドイツ、イタリアなどが牽引し22年比で18%増、19年比では14%減の3510万人まで戻すと予測。さらに旅行消費額はインフレもあり22年比14%増、19年比も4%増の295億ポンドと増加に転じて過去最高に達すると見ている。(※2023年市場予測レポートはこちら)

商談会会場の様子

 一方、「最も難しい状況」なのは中国で、「VBの中国チームと会えたこと自体も今回のイベントがコロナ禍以降で初めて」であり、航空路線も壊滅的な状況。ロシア上空の飛行禁止も航空会社の判断を難しくしており、大西洋路線が好調であることからアジア路線の回復には時間がかかるとの予想だ。

 日本も同様に、現時点で座席供給量は41%に留まり航空運賃も値上がりしているところ。日本市場では、19年実績が渡航者38.9万人、消費額3.69億ポンドであったが、同水準への回復は現状では消費額が25年、渡航者数は26年と全体の平均よりも時間がかかると予想している。

 ただし、それでも2030年の目標として19年比で渡航者で9%増、消費額は55%増への成長を掲げるなど重要市場の一角としての評価は維持されていることは特筆すべきだろう。

地方分散とオフシーズン対策に全力、サステナビリティも

 今後のプロモーションの基本方針では、ロンドン以外への地方分散とピークである夏以外の需要喚起をメッセージの根幹にすえて、デジタルの積極的な活用と旅行業界などとのパートナシップによる成果の最大化を目指す。

 直近では、「See Things Differently」をテーマに英国の多様な魅力をアピールするキャンペーンを2月末から開始予定。イェーツ氏は詳細はまだ明かせないとしつつ、新たな旅行先や体験を提案するものと説明し「日本でもソーシャルメディアやデジタル上での広告展開をすることになるだろう」とした。

 また、サステナビリティについても調査などでニーズの高まりを確認しており、すでにウェブサイト上でサステナブルなプロダクトを紹介しはじめたほか、中小業者の取り組みの支援も開始。イェーツ氏は「重要なのは環境面だけでなく経済、社会的にもサステナブルであること」であるとし、「業者も住民も旅行者も幸福でなくてはならない」と今後も継続して力を入れていくと意欲を語った。